自動車ビジネスに未来はあるか?エコカーと新興国で勝ち残る企業の条件 (宝島社新書)

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  • 宝島社
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  • Amazon.co.jp ・本 (204ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784796670708

作品紹介・あらすじ

自動車文明論の第一人者が説く中国・インド・環境市場。ビッグスリーの崩壊、世界のトヨタの赤字転落。危機のゆくえは?再生の道は?独り勝ちに勝ち目はない、共生型ビジネスの近未来像。自動車産業大変貌の時代。

感想・レビュー・書評

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  • アメリカや新興国の自動車ビジネスと対比しながら、日本の自動車ビジネスの将来について展望を述べる。リーマンショック以降に書かれた本であるため、ここまで消費が落ちてしまったら、あのトヨタでさえも巨額の赤字に陥ることを事実として踏まえ、今後についての日本自動車ビジネスの戦略について考察する。特にすぐれた視点もなく、…。

  • 自動車所有に反対という立場をとりながらも、なぜか自動車手続きに係わる仕事をしている私。苦笑

    大量生産時代からの転換、
    日本のメーカーでの非正規雇用依存、
    ディーラーとのフランチャイズシステム、
    新興国での自動車需要などなど。

  • 今年もあと残すところ2ヶ月余りとなりましたが、2009年という年は自動車業界にとって衝撃的な年だったと思います。世界最大の自動車会社であったGMと、かつてのビックスリーであったクライスラーが破産申請をして、新しく生まれ変わったことです。

    政府の資本が入ったこともあり、今後のアメリカの自動車業界は政府の方針が反映されていくことになることでしょう。あるルールの中で最適化をめざすことが得意な日本企業(日本人)は、冬季オリンピックの複合競技におけるルール変更によってメダルが取れなくなったように、ルール変更(枠組み変更)に対応する力は弱いと思われます。

    自動車業界はとても裾野が広く、多くの人がそれによる恩恵を受けているのは事実であり、この年の事件が日本を不幸にさせることの無いように思いたいです。

    以下は気になったポイントです。

    ・アメリカでは1950年代後半にはビックスリーによる寡占体制が決定的になり、それ以外の自動車メーカはアメリカンモーターズ以外(1987年にクライスラーに買収)は統合された(p14)

    ・90年代に入るとライトトラック(ピックアップ、ミニバン、SUV)のシェアが乗用車を追い越した、ガソリン価格が1ガロン20ドル台と安定的だったことが要因、ビックスリーが乗用車生産から撤退したことも要因(p17)

    ・日本の自動車メーカはアメリカ自動車メーカと異なり、すぐに配当で社外流出させる前に、利益を現地工場の建設や新車開発費(エンジン、エンジン工場)に投資した(p31)

    ・1985年を境に、日本メーカが小型トラックとして輸出していたものに、関税率を5→30%に上げたため、日本メーカはそれまで多くの割合を占めていたピックアップトラックを輸出できなくなった(p33)

    ・米国自動車市場において、60年間で自動車の販売台数が500万台未満から1700万台に伸びた背景として、ローンによる借金を恐れない米国民のマインド及びマネーサプライにある(p41)

    ・トヨタの金融収益はGM、フォードよりもはるかに大きかった、新車販売以外にも割賦ローンでもかなり稼いでいた(p52)

    ・日本の自動車メーカの収益が急激に悪くなったのは、北米での需要減退、生産減少のタイミングを逃した、自動車ローンによる儲けがなくなったこと(p53)

    ・ビックスリーが没落した原因として、製造業としての原点を忘れて、短期的利益志向・金融投機での利益追求、にある(p56)

    ・環境技術は100年に数回しか起きないイノベーションであり、ベンチャー企業にやらせて出資するか、技術を買えば良いと考えていた(p63)

    ・現在北米では膨大な量の中古車がだぶついている、1億台はある(p66)

    ・アメリカの自動車産業の平均給与は高く、工場作業者の時間給は70~80ドル台(年収8万ドル)で、日系の40~50と比較して大きい、それよりも高いのが石油精製業で10万ドルに迫る(p73)

    ・トヨタの生産方式であるジャストインタイムは、同期化及び無駄な在庫を減らすことであるが、ホンダでは1週間ごと中ロット見込み生産をやりつつ生産台数や車種変更を行う、顧客注文を守ろうとする見込生産の軌道修正を行う方式がある(p82)

    ・韓国自動車メーカは、1997年の金融危機で、現代以外の主要3社(起亜、大宇、三星)は倒産して、起亜は現代と合併、大宇はGM,三星はルノー日産、大宇トラックはタタと合併した(p114)

    ・中国の自動車産業は、中央政府直結で、長春の第一汽車、武漢の第二汽車(東風汽車)、上海汽車に加えて、地方政府主導で外国メーカと技術提携している合弁企業(北京汽車、天津汽車、広州汽車)を中心に発展してきた、乗用車生産が商用車生産を上回るのは2005年(p127)

    ・タタ財閥の特徴は、総帥の高い志と明確な理念によって導かれている、貧困をなくしカースト制度に典型的な社会差別を無くす理念、持ち株の多くを慈善事業に投資している(p154)

    ・インドにおける現代自動車は、A2,A3クラスに絞って、1998年からインドで生産開始、今ではマルチスズキ、タタに続く国内3位(p157)

    ・アメリカは京都議定書を連邦政府は批准しないのに、37の州と219都市が独自に批准している(p169)

    ・アメリカ自動車業界は、マスキー法を廃案にして、コストのかかる排ガス対策を延ばし、日本・ドイツメーカが実用化した三元触媒や燃料噴射技術(EFI)を安く調達できるようになって初めて採用した(p178)

    ・日本での国内生産は年間1000万台は維持不可能で、円高による輸出減で800~900万台程度、国内販売は2割減の450~500万台程度(p200)

  • 宇沢弘文の「自動車の社会的費用」に着目した点は評価できる。

    自動車ビジネスは、7つの道を模索している。

    1 他のビジネスへの展開 トヨタホームにみられる家庭関連事業への展開
    2 金融系への展開
    3 情報系への展開
    4 エコカー、ハイブリッドカー、電気自動車への展開
    5 航空機、飛行機への展開
    6 ロボットへの展開
    7 上記のような自動車と関連した事業以外への展開

    どれも、まだ著者や、宇沢の想定する領域には達成していないと思われる。
    自動車業界の方々が、両著を読んで、ヒントを得ていただけることを願います。

  • 自動車産業の今までの流れを外観するには適当な本。
    失敗を繰り返さないという観点では読む価値あるけど、未来を切り開くチャンスを見つけるのはちょっと難しい

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著者プロフィール

法政大学名誉教授

「2011年 『日産プロダクションウェイ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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