- Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
- / ISBN・EAN: 9784796675499
感想・レビュー・書評
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彼の描いた地獄・煉獄・天国が、後の芸術家たちに与えた影響はとても大きいらしい。こんなに具体的に書ききったのは、ダンテが初めてなんやって!
その500年後、ドレが挿絵を描ききったー!全部版画。星って全部でいくつあるのかわからないけど、その星の数より多いんじゃないか、というくらいの無数の線が、凹凸明暗を織りなして、ダンテの世界観を形にした。版画だから、多くの人の目に触れられたのがとってもすごいよね。
亡者も悪魔も怖いし、ベアトリーチェは眩しすぎる(絵が)。あの世を旅するダンテは、ちょこちょこ人間っぽい愚かなところを出して、ヴェルギリウス(あのめっちゃ有名な詩人の。世界史で出てくるやつね)に怒られている。キリスト教の世界観なんだけど、ギリシャ神話の神様も出てきて華やか。亡者が語るエピソードには、その時代の実話も含まれているらしい。現代と古典と神と人間が紡ぎあげた神曲。まさにルネサンスや!
愛と希望と信じる心で、ただ見たままを感じること。そうは言われても、やっぱり余計なこと考えちゃうよなー。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ダンテの「神曲」。歴史の教科書にルネッサンスの頃の有名な作品として一行くらいで紹介されている記憶しかない、あの古典作品。意訳が読みやすく、ギュスターヴ ドレの挿し絵が一ページごとに入っており、まるで絵本のようだ。この本を読んで初めて知ったのは、天国と地獄と、もうひとつ煉獄(れんごく)があるということ。ここにいる人たちは天国を目指して煩悩的なものを取り除く修行をするのだけど、ダンテの時代でもギリシャ時代の詩人がいたり、徳の高そうなローマ法王がいたり、天国までは相当長い道のりらしい。そうかと思えば、現世に残された人が故人を思って祈り続けてくれると修行が劇的に短縮されることもあるらしい。ダンブラウンの「インフェルノ(地獄)」は実は煉獄とも多いに関係があることが分かった。インフェルノを読むまでは、ダンテの「神曲」を手に取ろうとも思わなかったけど、良いきっかけになった。
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ドラマティック。ただ亡者なのにどの肉体も端正で頑健に見えるんだよなぁ。
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筑摩の版のこの本の背表紙を本屋で見かけるたび、手を伸ばしかけ、いやいや、と首を横に振ること度々。
いつか読むとおもいつつ、内心そのいつかは訪れないだろうと思っていたのが本心だ。
興味はなくはないが、読みたい!って熱狂的な何かを私に呼びさます著書ではない。
この年になって改めて聖書を読めるかっていったら、出来れば避けたい。それと同じ。
それがどういう風の吹き回しか。
魔法使いが魔法をかけた。いや化学変化が起きたなんて言うといいのかしら。
驚くべきはその化学変化の一人が宝島社だってところ。
宝島社ってこういった古典とまったく繋がらない気がするのだが、だからこその裏技か。
ちなみに人生で初めて買った宝島社の書籍だと思う。
地獄や天国という概念を作ったのは宗教だとおもう。それは本著の場合では当然に聖書にその起源はあるのだろうが、それをもっとわかりやすい形にして根付かせたのが本著『神曲』なのだろう。
当時の知識階級の主流であったラテン語ではなく、地域に根付いているイタリアの方言で書き記したという所からダンテの心意気が伺える。
とはいえその作りはソネット。つまり詩で書かれている。書き方としては当然驚かされる手の込みようだが、古くから詩が生活に根付いている西洋ではむしろその方がわかりやすかったのだろう。日本の平曲とかと同じかな。
だが、翻訳にあってしまえば韻は消滅する。おまけに詩で物語を追うなんて鍛錬は日本人のほとんどは受けていないので、余計な修飾を持たない詩は難易度が高い。
結局このあたりが私が手を付けなかった一番の理由だと思う。
詩に想像力を膨らまして物語を読み解くには薹がたち過ぎた。
しかし本著はその点のカバーがされている。
翻訳者の意向で、ほぼ口語体で書かれているのだ。それに加えてドレの挿絵が挟まれる。
まぁこれがまた繊細かつ美麗。視覚的な効果があるとやはり、難解さって幾分和らぐ。想像がたうのだろうな。
こういった二つの補足が壮大なテーマを上手く調理している。
まぁ豪華な競演である。
てなわけで、本来ならこんな楽ちんに超えてはならない山なのだろうが、超えさせてもらった。
今更内容を事細かに記述することはあるまい。
ようはダンテその人の冥界見聞録だ。
地獄、煉獄、天国と巡るのだが、階層を上がってゆくにつれて内容が抽象的というか幻想的かつ精神的な雰囲気になってゆく。
しかし、メッセージは一貫しているように思えた。
印象的な文を引用しよう。
【「何が大事かを”知る”ことだ。理屈を越えて”見る”ことだ。 何故と思う事は良いが、その時下手に理屈を探さぬことだ。人が理詰めで行ける道には限りがある。全てをあるがままに、景色のように見るがいい。全ては不思議、全ては自然。映る心を知ることだ。」】
そしてもう1文。
【「浮世は目に見えない”煙”で一杯だ。目は開いていても、見てはいても、結局、視てはいないのだ。それに君たちはいつでも、どうして?とすぐに理由を求めようとする。訳が判ったら、それでどうだというのだ。わかってもわからなくても、結局全てを運や天のせいにする。世を動かす力が神意とすれば、『ならば、』と君たちは言う。それも定めだと。なすも正義、なさぬも正義。それでは君たちの生くべき道はどこに在る。大事なのはそんなことではないのだ。万事が定められてあるのなら、生まれる意味がどこにある。天は君たちの原動を呼び起こす。だがそれを”知”り、”光”とし、そしてそれを自らの力と君たちがしていくならば、そのことで全てに、天の動きにすら打ち勝てるはずだ。それが自由というものだ。乱れは君たちの中にある。(以下略)」】
『神曲』とうたうが、完全に聖書をなぞるだけの内容でなかったのが意外だった。
結局韻文の方を読み込んだのではないので経験として読んだと言う1冊になるな。
個人的には地獄の内容の方が興味深かった。