動物哲学物語 確かなリスの不確かさ

  • 集英社インターナショナル
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784797674378

作品紹介・あらすじ

動物の生態に哲学のひとさじ。映画化された世界的ベストセラー『あん』のドリアン助川、構想50年の渾身作!動物の叫びが心を揺さぶり、涙が止まらない21の物語。哲学の入門書よりやさしく、感動的なストーリー。どんぐりの落下と発芽から「ここに在る」ことを問うリスの青年。衰弱した弟との「間柄」から、ニワトリを襲うキツネのお姉さん。洞窟から光の世界へ飛び出し、「存在の本質」を探すコウモリの男子。土を掘ってミミズを食べる毎日で、「限界状況」に陥ったモグラのおじさん。日本や南米の生き物が見た「世界」とは?ベストセラー『あん』の作家が描いたのは、動物の生態に哲学のひとさじを加えた物語21篇。その中で動物のつぶやき、ため息、嘆き、叫びに出遭ったとき、私たち人間の心は揺れ動き、涙があふれ、明日を「生きる」意味や理由が見えてくる!●私たちの心に突き刺さる動物たちのつぶやきサル「ボスになんかなるものじゃない。なんでこんなに苦しいんだ」アリクイ「心は進化しないのですか?」ナマケモノ「彼女と僕は同じ世界を見ているのだろうか」ジャガー「私たちを苦しめるのは、思い出だよ」バク「ママ、なんで僕のここはこんなに大きくなるの?」ペンギン「天よ、いったいどうして、僕らにこんな苦しみを与えるのですか?」●巻頭スペシャル口絵多和田葉子の小説の装画・挿画で知られる溝上幾久子による、動物たちの銅版画作品をカラー掲載。【目次】第1話 クマ少年と眼差し第2話 キツネのお姉さん第3話 確かなリスの不確かさ第4話 ボスも木から落ちる第5話 一本角の選択第6話 コウモリの倒置君第7話 クジラのお母さん第8話 モグラの限界状況第9話 ウリ坊の恥第10話 絶滅危惧種第11話 スローな微笑み第12話 最後の思い出第13話 バクの茫漠たる夢第14話 転がる小さな禅僧第15話 ペロリン君の進化第16話 おじさんにできること第17話 ピクーニャとコンドル第18話 イグアナ会議第19話 ゾウガメの時間第20話 飛べない理由第21話 対話する鳥(あとがきに代えて)【著者略歴】ドリアン助川(どりあん・すけがわ)作家、歌手。明治学院大学国際学部教授。1962年、東京生まれ。早稲田大学第一文学部哲学科を卒業後、1990年にバンド「叫ぶ詩人の会」を結成。解散後、執筆活動を開始。2013年出版の小説『あん』(ポプラ社)は映画化に加え、22言語に翻訳され、フランスの「DOMITYS文学賞」「読者による文庫本大賞」の二冠に。『線量計と奥の細道』(集英社、日本エッセイスト・クラブ賞受賞)、『新宿の猫』(ポプラ社)、『水辺のブッダ』(小学館)など著書多数。

感想・レビュー・書評

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  • 大好きなドリアン助川さんの本。色々な種類の動物たちの目線で、哲学的な考えを盛り込んだ21話からなる。とても面白い試みで、作者の意欲を感じた。

     ドリアン助川さんが、動物と哲学に夢中になった理由として、本文中に、「子供の頃から、人間社会が苦手だったので、動物たちに語りかけようとした。哲学に惹きつけられたのも、目の前の事だけで忙しくしている人間社会への反発だ。」とある。この本が、著者にとって念願の1冊だったことが伺い知れる。

     溝上幾久子さんの版画も、物語への想像を掻き立て、深みをもたらしてくれ、素晴らしかった。

     最初の数話は、とても心動かされ、あっという間に読んだ。また、ナマケモノを描いた『スローな微笑み』では暫く唖然として動けなかった。ただ、途中から少しずつ趣が変わっていき、読む気力も落ちてきた。それでも大好きなドリアン助川さんの本なので、伝えようとしていることを少しでも正確にキャッチしたいなという思いで読み進めた。

    たくさんの動物の種類を扱うことで、その生態が分かり、興味深く思える一方で、それと哲学が合わさることで、生物学的にも、哲学的にも、そして物語としても、少しずつ中途半端になってしまっている感は否めないかもしれない。
    以前、『カラスのジョンソン』を読んであまりに気に入り、その感動を忘れられないので、系統が似ているこの本に物足りなさを感じてしまったんだと思う。

    それでも、ドリアン助川さんが作家として、ぜひともやりたいことならば、ぜひ続けてもらって、次のシリーズも読んでみたいと思う。
    それくらい、ドリアン助川さんは、私にとって大切で、尊敬する作家さんです。

    (本文より)
    ○もちろん、リスに農作物を荒らされた皆さんは、許しがたい気持ちになるでしょう。(略)しかし、それぞれのリスにとって、この世に生まれた事は確かな出来事であり、1匹ずつのリスがムクロジの種のような目で森や空や雲を捉え、すべての中心として、この世を認識していることも明確な、替えのきかない事実なのです。

  • 最初の3話くらいは宮沢賢治っぽいなと思ったが、読み進めればやはり哲学の本だった。
    それぞれの動物の生態にあわせて紡ぎ出す哲学の物語。
    そしてそれは、今我々が生きている人間の世界を投影している。

  • 溝上幾久子さんの動物たちの銅版画が
    美しく素晴らしい
    だから切なかった
    愛らしくて胸を抉られて苦しかった
    動物たちは命の限り一生懸命生きている
    地球で生まれ生きている

    苦しみにも意味があるんだよ、
    僕らが生き抜いたことを実感するためだ

  • 私にとってはハードルが高い「哲学」(;_;)
    難しいことはさておき…
    動物目線で描かれてとても読みやすかったです♡
    弱肉強食、人社会での事故、戦争、生や死…考え深い物語ばかり(;_;)
    生きる喜びや悲しみ、愚かさや無念いろんな感情を持ってこの地球上で生きていく。その中でどうすれば「幸せ」と感じる人生を送れるのか…それを哲学的に紐解いていくと、考え方も開け、人生最後の最後まで前向きな心で過ごしていけるのかも…と思えた作品でした★ 初めてドリアン先生の著書を読みましたが他の作品も読んでみようと思います♡

  • 2024年1冊目。

    動物たちの哲学ストーリー。
    ドリアン助川氏の言葉選びが好き。

  • 短いお話の集まりだったので、どれから読んでも良いとは思ったけど、何となく初めから読んでしまった。
    初めの何話かは、読み終えるたび心の奥底が痛んだ。中頃からは「これはオスの発想で記されたモノ」と感じて「なるほど、やはり」と思いながら読み終えた。
    読み終えて、心が穏やかな気持ちになった。
    多分、長く生きて、何時かは分からないけど、まもなく私の命が終わるのを私自身が感じているからだろう。

  • 様々な野生動物を主人公とした、大人向けの童話仕立てのような文体・構成で20編の小編集。相互に繋がりは無い。スキマ時間で読み進められる。初めのうちは馴染めなかったが、徐々に面白く感じられて来た。童話はコミカルな表現が少なからずだと思うが、大人向け童話としてのスタイルが、この面でも楽しめた。

  • 動物目線で話が進み、一つ一つが短いから哲学という読みづらいジャンルだけど読みやすかった。猿とコウモリとウリ坊の話が人間の話として共感できて面白かった。

  • 哲学あまり読み慣れておらず難しかったが、動物を例にしていて、まだ読めたかな。

  • 自然や動物に対するまなざしや描写、動物に哲学を語らせる手法など、宮沢賢治を彷彿とさせる。

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著者プロフィール

ドリアン助川 訳
1962年東京生まれ。
明治学院大学国際学部教授。作家・歌手。
早稲田大学第一文学部東洋哲学科卒。
放送作家・海外取材記者を経て、1990年バンド「叫ぶ詩人の会」を結成。ラジオ深夜放送のパーソナリティとしても活躍。担当したニッポン放送系列『正義のラジオ・ジャンベルジャン』が放送文化基金賞を受賞。同バンド解散後、2000年からニューヨークに3年間滞在し、日米混成バンドでライブを繰り広げる。帰国後は明川哲也の第二筆名も交え、本格的に執筆を開始。著書多数。小説『あん』は河瀬直美監督により映画化され、2015年カンヌ国際映画祭のオープニングフィルムとなる。また小説そのものもフランス、イギリス、ドイツ、イタリアなど22言語に翻訳されている。2017年、小説『あん』がフランスの「DOMITYS文学賞」と「読者による文庫本大賞(Le Prix des Lecteurs du Livre du Poche)の二冠を得る。2019年、『線量計と奥の細道』が「日本エッセイスト・クラブ賞」を受賞。翻訳絵本に『みんなに やさしく』、『きみが いないと』(いずれもイマジネイション・プラス刊)がある。

「2023年 『こえていける』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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