亜宗教 オカルト、スピリチュアル、疑似科学から陰謀論まで (インターナショナル新書)

著者 :
  • 集英社インターナショナル
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784797681215

作品紹介・あらすじ

コックリさんからQアノンまで! 宗教研究者とたどる、人間の“妄想力”をめぐる旅路。
「亜宗教」とは、「近現代に生まれた非科学的で宗教めいた信念や言説」を指す造語。
本書では、宗教研究者が「オカルト・スピリチュアル・疑似科学・陰謀論」といった亜宗教を、宗教学の知見から分析する。
扱うのは、妖精写真、コックリさん、動物磁気、千里眼、念写、モンキー裁判、UFO、ニューエイジ、エスパー、臨死体験、シンクロニシティ、爬虫類人、Qアノン、反ワクチンなどなど……。
信仰と科学の狭間で蠢く人間の“妄想力”の歴史をたどり、「人間にとって信仰とはなにか」を暴き出す。

【目次】
・序章 宗教と科学の混ざりもの
▼第1部 西洋と日本の心霊ブーム 19→20世紀
・第1章 19~20世紀初頭の心霊主義
・第2章 コックリさんと井上円了の『妖怪学講義』
・第3章 動物磁気、骨相学、催眠術――19世紀の(疑似)科学
・第4章 明治末の千里眼ブームと新宗教の動向
・補章 伝統宗教のマジカル思考
▼第2部 アメリカ発の覚醒ブーム 20→21世紀
・第5章 ファンダメンタリストとモンキー裁判
・第6章 UFOの時代――空飛ぶ円盤から異星人による誘拐まで
・第7章 ニューエイジ、カスタネダ、オウム真理教事件
・第8章 科学か疑似科学か?――ESP、共時性から臨死体験まで
・終章 陰謀論か無神論か? 宗教と亜宗教のゆくえ

■著者略歴
中村圭志(なかむら けいし)
宗教研究者。翻訳家。1958年、北海道生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程満期退学(宗教学・宗教史学)。昭和女子大学非常勤講師。単著に『信じない人のための〈宗教〉講義』(みすず書房)、『教養としての宗教入門』『聖書、コーラン、仏典』『宗教図像学入門』(いずれも中公新書)、『教養として学んでおきたい5大宗教』『教養として学んでおきたい聖書』(ともにマイナビ新書)ほか多数。

感想・レビュー・書評

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  • 「亜宗教」は著者の造語で、「オカルト、スピリチュアル、疑似科学から陰謀論まで」(副題)の、幅広い“宗教もどき”の総称である。
    著者は「近現代に生まれた非科学的で宗教めいた信念や言説」と定義している。

    本書はその亜宗教の歴史を19世紀から現在まで辿り、概説している。読み物としてとても面白いし、深みもある。

    19世紀の心霊主義(Spiritualism)の黎明から説き起こし、コックリさん、UFO、オウム真理教、ニューエイジ、Qアノンまで、広範な事象が俎上に載る。

    そして、著者の宗教研究者としての深い素養に基づいて、それらが一つの大きな流れとして見事に整理されていく。カタログ的ではないのだ。

    著者は亜宗教に対して批判的スタンスだが、さりとて、伝統宗教をやみくもに是としているわけでもない。伝統宗教にも亜宗教と地続きの部分は少なからずある、と冷静に分析しているのだ。

    また、かつての『トンデモ本の世界』のような、亜宗教を笑い飛ばすスタンスとも一線を画し、真摯に考察している。その点にも好感が持てる。

  • 怪しげな風説がSNSにより拡散されがちな昨今、パッと見では判断が付きにくいオカルトも、系譜を追って読むことで陰謀論か否かの判断がしやすくなると思う。
    こういった本は他にも幾つかあるが、こちらは自称の羅列というより、歴史とそれに付随する考察が入ったもので、読み応えがあり面白かった。
    自己啓発本や針、按摩などのオカルトと言い難い分野まで抑えた上で、それらがなぜ大々的にオカルトと言えないか、オカルトと言ってしまうことの問題も(軽くだが)触れられていたのは良いと思う。
    またスピリチュアルや陰謀論のみでなく、ソーカル事件などの根本の知性、科学を疑うものまで触れているのが嬉しい。

    人によってはこの本のせいで、鍼治療の効果がなくなってしまうかもしれないが、まぁそれはそれでご愛嬌と言えるだろう。

    亜宗教という造語を産んだのがこの本の1番の功績だと思うが、それを差し引いてもしっかりとした考察や対策などが書かれており、人文的な分野を好む人間は特に読んでおくべきものだろう。

  • 人間の意味世界を対象とする文系のガクモンは常にどこか疑似科学的?亜宗教?的なレベルに足をつっこんいる。という著者の指摘に対し、「相対的に有益な学問の在り方」とは何なのか?を模索していく必要性について、文系のガクモン関係者はあらためて真剣に考えていくべきであることを思い知らされる。

  • この本は、オカルトでもなくスピリチュアルでもなく「亜宗教」というネーミングとカテゴライズの時点で勝ちが決まったのではないか、と思う。この中で取り上げられた様々な亜宗教の中には一緒にされて腹立たしく思う派閥・人物も少なくないだろうことは予想できるのだがが、私としてはこれらを亜宗教として扱える立ち位置に居たいと思っている。もちろん宗教と亜宗教の境界線は決してきっちりと引けるものではなく、グラデーションのかかった曖昧なものであることも忘れずにおきたい。

  • 結局のところ、事実かウソかという基準ではなく人は信じたいものしか信じようとしないんでしょうね。

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著者プロフィール

1958年生まれ。北海道大学工学部建築工学科卒業、東京大学大学院人文科学研究科修了(宗教学専攻)。
著書に『信じない人のための〈宗教〉講義』(みすず書房)『信じない人のための〈法華経〉講座』(文藝春秋)『人はなぜ「神」を拝むのか?』(角川書店)『初めて学ぶ宗教――自分で考えたい人のために』(共著、有斐閣)『超訳 法華経』(中央公論新社)『宗教のレトリック』(トランスビュー)ほか。
訳書に『宗教の系譜――キリスト教とイスラムにおける権力の根拠と訓練』(T・アサド、岩波書店)『世俗の形成』(T・アサド、みすず書房)『心の習慣――アメリカ個人主義のゆくえ』(R・N・ベラー他、共訳、みすず書房)『ファンダメンタリズム』(M・リズン、岩波書店)
『科学と宗教』(T・ディクソン、丸善出版)ほか。

「2014年 『宗教で読み解く ファンタジーの秘密 Ⅱ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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