プルトニウムファイル: いま明かされる放射能人体実験の全貌

  • 翔泳社
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  • Amazon.co.jp ・本 (600ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784798130880

作品紹介・あらすじ

「プルトニウムの人体投与」-アメリカの名だたる医師や科学者が犯した国家ぐるみの人体実験。半世紀を経て明かされた、当事者たちの全記録。忘れてはならない歴史の真実。ピューリツァー賞受賞ジャーナリストの衝撃のノンフィクション、新装版で登場。

感想・レビュー・書評

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  • 以前見た テレビのドキュメンタリー。
    気になっていた内容の本です。

    放射能実験は長い間 アメリカで行われていたけれど
    ずっと隠されていたのです。
    それを 調べた ドキュメントです。

    最初は マンハッタン計画から始まります。
    戦時下において 核を使う場合の放射能の影響を調べるために
    大量のお金をかけて 優秀な科学者たちを集めていった。

    広島長崎の被爆者の様子は 勿論調べた。
    さらに アメリカ国内で
    入院、通院してきた 症状の重い人
    末期のがん患者などに プルトニウムやウランを 注射していった。
    勿論 患者たちには 何を打ったのかなどの説明は一切なかった。
    しかし 時として 誤診で まだ長生きする人にも打ってしまった。

    長生きした人達は 長く病気に苦しめられた。
    けがなどで入院した人は 今まで元気だったのにと
    家族が不思議に思った。

    これらの 患者のファイルは 名前ではなく
    アルファベットと数字で表されていた。

    これらの ファイルは 人目につかないように
    隠されていった。

    戦争が終了しても ロシアとの にらみ合いで
    核兵器の開発はすすめられた。
    (ロシアのスパイがいたので 核兵器はすぐに追いつかれてしまった)
    そうした中 人体実験は続けられてしまった。
    巨額の研究費が当てがわれた医師たちは 
    人体実験を エスカレートさせていった。

    妊婦たちには 飲み物に混ぜて 栄養補給のためのように伝えて飲ませたりした。
    その後 胎児に悪影響が出たし 母体も痛めつけられた。

    そして 障碍者や 心身疾患などで 入院している人たちも実験対象にされていった。

    爆弾の実験場も 海上だと 遠いので
    国内で 行うようにして 被爆を調べる為に
    兵士たちを 各場所に 配置させて 様子をみた。

    核実験場の近くは危ないと思われたが
    住民を避難させると 悪い噂が立つことがまずいので
    避難させなかった。

    実際に空気中に飛散している放射能が
    肺に入り込んで 内部被ばくを予見できたにも関わらず
    軽く見積もって 注意喚起しなかった。

    これらの実験などは 対ソ連の為だったので
    かなり強引に行う事ができた。

    被爆についての危険度は わかっていたが
    軍の高官は 兵士など危険にさらしてもかまわないと 考えていた。

    そして 閃光失明実験も 行われた。兵士だけではなく
    兎も使われた。閃光で網膜が焼けた兵士や兎がいた。

    兵器製造の現場でも事故が起こり 被曝し 35時間で亡くなった。
    その遺体を 科学者たちが こぞって持っていった。

    10回以上行った 大気中核実験では
    毎回人体実験が行われていた。

    放射線投射実験では囚人をという意見も出たが
    戦後ナチの行った事を 裁いていたので
    同じような事をやるのは いけないという事になり
    ボランティアを募る方法を模索していた。

    研究者にとっては 広島・長崎は20万人以上の実験だったと語ってる。

    最終的には健常人ではなく 
    ガン患者を実験に使うという事になった。
    ガンを改善するために放射線を当てるということで
    多くに人が放射線を浴びせさせられた。

    刑務所では 一応希望を聞いた。
    中性子を当てて 睾丸がどうなるか調べた。
    囚人はこの実験でお金ももらえるし 喜んでいたものの
    のちに苦しめられることになった。

    他にも 食物連鎖を調べる為に
    草、牛、ミルク、人という 流れの実験も行った。

    そして 過去の実験について
    当時の医師などに問い合わすと 記憶にないとか
    今更掘り起こしてどうするのだという ような 回答で まともに答えてくれなかった。

    多くの軍人たちが 放射能人体実験について声をあげていった。
    1993年 ヘイゼル・オリアリーが長官となった。
    彼女は今までの政府の隠し事を 暴露していった。
    その中にこの人体実験もあった。
    世論も興味を示しはじめていった。

    クリントン大統領がこの件について文書を公開せよという事になり調査委員会もできた。

    多くの人たちが証言をしたが
    証言した人たちへの脅迫などもあったりした。
    残念ながら 時間がなくなり 委員会がまとめられずに終わってしまった。
    多くの人が 謝罪と補償から外れてしまった。

    95年に やっと クリントン大統領が謝罪をした。
    しかし もうこの時は当事者が 両方とも少なくなっていて被害者の名前など 細かい事がわからず。
    研究者たちは 反省などなかった。
    むしろ 当時は必要だったと思い続けていた。

    この人体実験の時
    国などが 安全だと言っていたし
    被験者に対しては 問題ないとか 治療に役立つとか 嘘を言ったりしていた。
    いつの時代も 国が 「安全」という事は
    あやしむのが よさそうに思えました。
    日本の原発について 安全だと 主張しているけど
    本当のデータなどについては 未公開の部分が多い。
    だから あやしむのが いいのでしょう。

    ヘビーな内容でしたが 
    こういう事は どこの国でもありうると 思えた本でした。
    粘り強く調べてくれた 著者に感謝です。















  • 読み終わるまで3ヶ月、長い本だった。内容は45年から47年まで行われたプルトニウム注射の人体実験の話から、次々に明るみにでた放射性同位体を使った各種人体実験、そして核実験での兵士や住民を使ったさまざまな実験の模様を描き出したもの。病気で病院に行ったらプルトニウム注射、妊婦が大病院の産科にいったら放射性鉄のジュースでトレイサー実験、孤児院では褒美をあげる代わりに食事に混ぜて放射性物質を食べさせ、刑務所ではわずかな金と引き換えに睾丸の放射線照射、ガン治療の一環と言って全身に放射線照射。仕舞には死体を切り刻みアメリカ全土の研究所に送ったり、死体を墓場から掘り起こして解剖したり。軍事産業の一環として始まり医学が参入し、人体実験がやりたい放題だった戦後30年。実験台になった人々はもちろん詳しい内容は知らされておらず、知る権利とか基本的人権とか、そういう概念などどこにも存在しないかのような扱い。あげくは罪は裁けど人は裁かず、で、誰も断罪されずに倫理に反する人体実験だけは反省された。
    失望しか残らないような内容である。権力と金と破壊力が同時に手に入ったら,倫理なんてもうどうでもよくなるってことの象徴である。原爆が爆発したとき、世界の運命は決まってたのかもしれない。プルトニウムはこれからも増え続けて、指導者や研究者や企業人たちがその力を占有するのかと思うと、暗澹たる気分になる。だってそういう人々に限って倫理は横においておいて、目先の利益と力のみに囚われるのだから。もう世界は67年前に破滅の運命に定められてたのかもしれない。それくらい深刻な問題だとあらためて認識。

  • 2018/05/28 初観測 友人が読んで、熱く語っていたので積ん読リストに入れることを決定。

  • 「広島・長崎への原爆投下で多くの被害が出たのは、日本人があらかじめ
    準備をしていなかったのが悪い」

    マンハッタン計画に関わった、ある研究者は言ったそうだ。準備ってさぁ、
    「原爆落としますよ。放射能の雨が降りますよ。危険ですよ」って教えて
    くれてないよね。どうやって準備しろと?

    日本が核爆弾の悲惨な実験場となったマンハッタン計画だが、この計画に
    付随してアメリカ国内では放射性物質の人体許容量を調べると称して、
    自国民を実験台とした、人体への放射性物質注入実験が行われていた。

    それだけではない。第二次世界大戦後の冷戦期、核開発競争の狂乱の
    時代、恐るべき人体実験は手法を変えて何度も繰り返された。

    数え切れぬほど行われた原水爆実験で、多くの兵士が危険性も告知
    されずに放射能を浴びたのは『アトミック・ソルジャー』をはじめとした
    作品で描かれている。100歩…いや、100万歩譲って、兵士は致し方
    ないとしよう。だが、以下はどうだ。

    ヴァンダーヴィルド大学では放射性の鉄を含んだ飲み物を妊婦に摂取
    させ、マサチューセッツ工科大学は施設の子供に放射性物質を投与、
    オレゴン州とワシントン州の刑務所では囚人の睾丸に放射線を照射し、
    シンシナチ大学ではがん患者の全身に放射線を当てた。

    被験者には何も伝えられていない。治療の為と言われながら、実は彼ら・
    彼女らはモルモットにされただけなのだ。そうして、死後は遺体を掘り返さ
    れ、遺族の了承もなく臓器や骨が研究機関に保存される。

    アメリカ国内でも長年隠され続けてきた人体実験だったが、1993年の
    クリントン政権の際にエネルギー省長官となった女性閣僚の会見で
    ことは公になり、調査委員会が設置される。結局、莫大な賠償金が
    発生することを懸念して尻すぼみに終わるのだが。

    本書はエネルギー省の発表前から放射能人体実験をコツコツと追って
    来たアメリカの地方紙の女性記者による秀逸なレポートである。

    わずかに公開された文書を手がかりに、プルトニウム注射を受けた
    被験者が誰なのかを解き明かし、おぞましい実験の内実を抉り出して
    いる。

    翻訳が少々硬いので読みにくい部分はあるが、国家という大枠で括って
    しまえば、自国民さえ簡単に犠牲に出来てしまうことの恐ろしさが伝わって
    来る。

    ナチスの医師たちや日本の731部隊の行為を非難したアメリカは、
    ニュルンベルグ憲章さえ無視して国の金で多くの被曝者を生み出した。
    そして、ご多分に漏れず、国のしたことの責任はうやむやにされたのだ。

    「われわれはヒトですか?モルモットですか?」。原水爆実験に駆り出さ
    れた兵士の言葉がすべてを物語っている。

  • 待ってた再版ー!!

    怖い本を読むと、しばらく夜眠れなくなったりするんですが
    この本もそのタイプでした。
    しかもこれが実際の出来事という……。

    分厚く、複雑で、おカタイ内容のはずなのに
    ぐいぐい引き込まれて、すらすら読めてしまうという。

    鉛で包まれた注射器と、それをまさに人間に注射しようとする
    人の、これまた鉛に包まれた手袋の写真に背筋が凍る…。

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