3Dプリンターで世界はどう変わるのか (宝島社新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784800215840

作品紹介・あらすじ

いまや連日メディアで報道される注目の技術・3Dプリンター。数千万円もの企業用から、10万円台のモデルも出現、個人にまで普及をみせ始めている。患者それぞれに合わせた臓器すら出力可能になると予測され、世間では「魔法の箱」とまで謳われるようになった。しかし、その「魔法」のカラクリと実態を理解する者はあまり多くないのではないだろうか。本書では、3Dプリンターの仕組みはもちろん、これまでの進化のプロセスや、現状のメリット・デメリット、今後可能になるかもしれない技術までをわかりやすく解説。世界が注目する技術の「過去」「現在」「未来」のすべてをひもとく一冊である。

感想・レビュー・書評

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  • 大学時代の専攻は金属材料工学で、モノを金属で作る場合、どのような方法で作成するかという講義もありました。多くの方法がある中で、鋳造というのは型に溶けた金属を流し込むだけで、通常の工作方法では難しい形状も作れるということで印象に残っています。

    しかし、そこに到達するまでには多くの工程がありました、まず型(木型もありますが、メインは金型です)を作らなければなりません、それにも時間がかかるし、金属を溶かすための装置も必要、冷えたあとにとりだしたものは、さらに多くの工程(研削、研磨等)を経て、ようやく完成です。こうやって、日本のモノづくりは多くの人によって支えられているのだと認識したのを覚えています。これぞ日本の強みであると。

    しかし、それを覆すような技術として登場してきたのが、この3Dプリンターです。これにより日本の今までのアドバンテージが全て吹っ飛ぶ可能性もある代物です。日本では、まだそのような認識がされてないような気もしますが。

    まず、時間をかけて作成していた「型」が不要となります。その代わりには、三次元データ(3Dデータ)です。これだけでも驚きですが、3Dプリンタ(3D工作機械)は、原材料を削って(消費して)作るのではなく、原材料を積み上げて作るのです。つまり、原材料のロス、無駄が無いのです。3Dデータの通り作るのですから、精度もかなり良いはずで、今までの鋳造の後に必要だった、研削は不要で、仕上げである研磨も最小限になると思われます。

    日本のコンピュータやテレビ産業が不振に陥ったのは、これらの多くはデジタルデータで同じものが作れるからではないでしょうか。その中で唯一、自動車産業が強みを維持できたのは、デジタルだけで制御しにくい工程があったと私は理解しています。その最後の牙城を崩しかねないのが、この3Dプリンタ技術のように思えました。

    娘が大学の事業で、3Dプリンタで作った、ハロウィンで飾る「かぼちゃ」のオブジェを見せてくれました。こんなものまで作れてしまうのかと私は感動しましたが、娘にしてみれば、今までの二次元データのプリンタが、三次元になっただけ、という冷静な見方をしていました。

    私が大学だった頃、社会人になって研究員だったころは、二次元データを三次元データにするだけでも「ひと仕事」のように記憶していますが、今ではそれらは一体化しているようです。

    中国や欧米では3Dプリンターが凄い勢いで導入されていると聞いています、それに対して日本メーカはどうなのでしょうか。イギリスやアメリカが、鉄鋼業でドイツや日本に抜かれたのは、それまでに最適化されていた製造装置を、最新鋭のものに置き換えるタイミングが遅れたからと何かの本で読んだことがあります。日本もそのような歴史を学ぶ必要があるのでは、とこの本を読んで特に感じました。

    以下は気になったポイントです。

    ・初めて3Dプリンターを見た1990年頃、ステレオリソグラフィー(日本語では光造形)と呼ばれていた、液体ポリマーに光をあてて樹脂を積層することで立体物を作る方法であった、このとき理論が発表されてから10年が経過していた(p14)

    ・多くのパーソナル3Dプリンターは、樹脂をヘッドの熱で溶かしながら細い糸状に射出して造形する「熱溶解積層法」を採用している(p16)

    ・3Dプリンターは、ここ数年で、プロとアマチュア、作り手と使い手という、対極の人たちを結ぶことに成功したユニークな製品に成長した(p18)

    ・スライスした断面を積み重ねるというところは同じであるが、その断面をどのように造形するか、というところが異なる(p26)

    ・3Dプリンターの場合は、工作機械を使いこなすようなスキルは必要がない(p41)

    ・現在の3Dプリンターは大量生産よりも少量生産に向いた機械である、ひとつだけユニークなモノを作るのにはとても向いている(p61、65)

    ・完成度の高い3DーCGデータが完成したこと、現代の3Dプリンタを活用した造形プロセスが融合したことによって、リアルな医療シミュレータが実現する、しかし完全ではないのは、材料を選ぶことができないから(p71)

    ・3Dスキャナーは物体に光を当てて座標軸を測定する、その測定点の集合を点群とよぶ、その点群のデータ上に面を貼っていき立体にする。そのため、CADや3Dモデリングのスキルは必要となる。これら3Dモデリングツールを用いて、まずはパソコン上にバーチャルな立体を作ることが、3Dプリンターでモノを作るときの第一歩となる(p110)

    ・3Dプリンターが偉いのではなく、3Dデータが偉い、そのデータを作り出すためのソフトが、3D-CADであり、3D-CGである。(p131)

    2017年8月6日作成

  • 文字通り、3Dプリンターについて細かく解説した一冊。

    3Dプリンターについて全く知らなかったので、良い勉強になった。

  • レビュー省略

  • 誤字脱字満載だった…

  • この本が書かれたのが2013年。その当時の状況ですら、未来感が高いのに、それから2年後の今はもっと廉価に高度なことができているんだろうか。
    ミシンの造形版(家でものづくりができる)くらいかなと思っていたけど、臓器の複製や月面での建物の構築など夢は広がるもんだ。確かに産業革命に匹敵するイノベーションになりうるかもしれないね。
    あくまでこれは基礎技術。これを使って何をするか、何を生み出すかをウォッチしていかねば。

  • 誤字脱字がひどかったのと、著者の文章があまりうまくないのとで、読もうという意欲がどんどんそがれていった。

  • あまり得るものの無い本だった。モノづくり革命を起こすには、もう少し時間が掛かるってことかな。

    出版社の人が見てるか判らないが、誤植の指摘をひとつ。
    第1刷: P206の7行目 (誤) 既知 → (正) 基地

  • 貸し出し状況等、詳細情報の確認は下記URLへ
    http://libsrv02.iamas.ac.jp/jhkweb_JPN/service/open_search_ex.asp?ISBN=9784800215840

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著者プロフィール

1967年東京生まれ。1992年 Embry-Riddle Aeronautical University(米国フロリダ州)航空工学修士課程終了。 2004年にニコラデザイン・アンド・テクノロジーを起業し、代表取締役に就任。オリジナルブランド製品の展開やコンサルティング事業を推進。 2016年に、3D CADやCAE、3Dプリンター導入支援などを中心にした製造業向けサービスを主目的としてmfabrica合同会社を設立。さらに2017年に高度な非線形解析や熱流体解析業務を展開する株式会社解析屋の設立に参画。 2018年6月からは法政大学アーバンエアモビリティ研究所の特任研究員も務めている。
主な著書に『わかる 使える 3Dプリンター入門』(日刊工業新聞社)、『3Dプリンター革命』(ジャムハウス)、『あと20年でなくなる50の仕事』(青春出版社)など。

「2020年 『モノが壊れないしくみ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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