江戸を読む技法 (宝島社新書)

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  • 宝島社
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  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784800223616

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  • 本書は、近世政治史研究の第一人者・山本博文博士が、丹念な史料探索によって、江戸時代の一般人像を現代に蘇らせた意欲作である。武士と現代サラリーマンは、何が共通していて何が異なるのか。本書を読めば、新たな視座が得られることだろう。歴史の教科書では、江戸時代を士農工商という身分制で説明してある。しかし、武士は支配階級、百姓・町人は被支配階級という捉え方は、短絡的で誤りであることがわかる。さらにまた、我々一般人が江戸時代の史料をひもとき読み込むための方法も紹介してある。本書で江戸を読む技法を身につければ、時代小説や大河ドラマが一〇〇倍楽しくなること請け合いだ。(2014年刊。本書は、1996年に文藝春秋から刊行され、2005年に新潮文庫となった『江戸時代を[探検]する』を増補・改訂したものである。)
    ・序  章 「徳川中心史観」にとらわれずに江戸を読もう
    ・第一章 武士とは何か
    ・第二章 武士の出世競争と藩の不況対策
    ・第三章 幕府を揺るがした大事件
    ・第四章 江戸時代の調べ方

    本書は、これまでの山本先生の著作のエッセンスが詰まった1冊である。読んでいると、まるで、歴史学の講義を受けているような感じがする。しかも読みやすく分かりやすいのが嬉しい。
    著者の文庫、新書については、概ねフォローしているつもりであるが、各章を読みながら、思いを馳せることが出来た。(逆に、人によってはネタに新鮮味が無いように感じる方もいるかもしれない)気になる点が一つ。大岡越前の石高について2700石(p75)と1700石(p125)の記述がある。校正ミスだと思われるのが残念。

    「徳川将軍家、大名家関係資料の調べ方」については、新潮文庫版を読んだときに、非常な衝撃を受けた。どの様な史料を調べれば良いかあらましが書かれているが、これらの史料集を個人の手で揃えることは困難で、とても素人の手には負えない。(金銭的な問題もあるが、既に絶版のものや入手困難なものも多い。専門的な史料を収拾するのは、公共図書館などの役割であるが、地域格差を感じずにはいられない。今後のネット環境の進化に期待したい。)

    江戸時代の事が知りたい方には格好の1冊でありオススメである。

著者プロフィール

1957年、岡山県生まれ。東京大学文学部国史学科卒業。文学博士。東京大学史料編纂所教授などを勤めた。1992年『江戸お留守居役の日記』で第40回日本エッセイスト・クラブ賞を受賞。著書は『寛永時代』(吉川弘文館)、『日本史の一級史料』(光文社新書)、『歴史をつかむ技法』(新潮新書)、『流れをつかむ日本の歴史』『武士の人事』(角川新書)など多数。NHK Eテレ「知恵泉」を始め、テレビやラジオにも数多く出演した。2020年逝去。

「2022年 『角川まんが学習シリーズ 日本の歴史 全16巻+別巻4冊定番セット』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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