血の季節 (宝島社文庫)

著者 :
  • 宝島社
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  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784800258564

感想・レビュー・書評

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  • 泥沼の日中戦争から敗戦直前の東京大空襲、原爆投下までの狂乱の時代を背景に、作家で翻訳家の小泉喜美子さん(1934-1985)が、 なんと!恐怖の<ドラキュラ伝説>を、ミステリ-と絡み合わせ、読む者の興奮と興味を最後までひきつける長編作品です。復刊希望が相次いだという、幻の名作の名に恥じない、捻りの効いた怪奇ミステリ-です。

  • ドラキュラ伝説とミステリを組み合わせた、耽美的なホラー小説だ。

    青山墓地で発見された幼女の惨殺死体。
    犯人を追う警察。犯人は誰なのか?
    フーダニットなのだが、警察視点と犯人視点のエピソードを交互に描いていき、謎解きがメインではない。

    太平洋戦争時下の赤坂を舞台としており、この時代背景がよい。
    小説『紅はこべ』の世界に傾倒する日本人少年と、外国公使館に住まう兄妹との交流のエピソードを重ねるように紡いでいくことで、この物語をはかなくも美しくさせている。

    トリッキーな作風が持ち味の著者のことだから、最後の大どんでん返しに期待したが、そこまでの破壊力はなかったと思う。
    でも、この作品は、そこがすべてではない。
    戦時下の東京で生きる少年たちの奇妙な青春物語だと思えば、それはそれで味わい深い。

  • 幻の名作らしいが、今一つの面白さだった。最初から最後まで判然としないストーリー、ミステリーなのか、ホラーなのか、曖昧模糊、混沌とした雰囲気のままでラストを迎える。

    青山墓地で発生した幼女惨殺事件。逮捕された犯人の過去と現在が描かれるが…

    裏表紙に記載された魔性も狂気も感じられず、吸血鬼小説の面白さも、サイコパス小説の面白さも、警察小説の面白さも味わえなかった。

  • 最後の物語の閉じ方が絶妙。警部が熱い良い味を出している。

  • 「復刊希望が相次いだ、幻の名作がついに復刊」と出版社直々に書かれますと、どんなけ面白いんだ!?と、期待のハードルがグイグイ上がってしまうものですが、とくに山場らしい山場がないまま読み終わってしまった感がありました。
    この肩透かし感は出版社のふれこみを真に受けてハードルが上がりすぎてしまったからかと考えてみましたが、やっぱりこの作品はホラーと呼ぶには物足りなく、ミステリーと呼ぶのも物足りない。「血の季節」というタイトルから何となく想像できると思うのですが、その辺のゴシック感もやっぱり物足りない。
    恐らくですがこの作品が刊行された当時は、私が物足りないと思ったすべての要素が水準以上で、この物語の妖しい雰囲気がたまらなく、復刊を待ち望んだ方々の記憶の中に生き続けていたのではないかと思います。
    ただミステリーもホラーも妖しい雰囲気の小説もこの35年でどんどん水準が上がっていってしまい(表現もどんどんぞくっぽくなっていっているし)、今の基準に慣れきった者は物足りなく感じてしまうのではないかと思いました。
    超個人的な感想としては、もっと美少女の蠱惑的な面を見たかった!それがいちばん物足りないと思った点でした笑

  • 文体は幻想的で、妖しく、古めかしい。

  • 復刊ありがとうー! タイトルからもちょっと彷彿とさせますが、吸血鬼をメインモチーフに置いた、ミステリ+ホラーな作品(帯に謳っている、警察小説、サイコパス辺りの要素は、そうかなぁ?と思う程度にしかないので期待しない方がいい)。
    作中、少年期~青年期と回想が進むにつれ、最初は匂わせる程度だった吸血鬼ネタがジワジワと現実味を帯びて迫ってくる感じが凄くイイ。(この情報を出していく塩梅が絶妙)
    某国大使館に住む美しい兄妹。東京の空襲、広島と生き抜いた「運が良い」主人公のぼく。読み方によってホラーにもミステリにも取れる。サクサク読めるしさすが小泉喜美子。

    『ダイナマイト円舞曲』もいつか復刊されるといいなぁ。

  • 1982年に刊行されたものの復刊。カバーに『幻の名作ベストテン』とある。
    傾向としては典型的な『好きな人はとても好きになるだろう』タイプだった。
    そういえば、著者の訳書は何冊か読んだことがあるが、小説は初めて読んだな〜。

  • 精神科病棟に収容された囚人の幼年期から現在にいたるまでの独白と、幼女惨殺事件の犯人を追う警部の捜査過程とが交互に展開していく構成となっています。
    囚人の幼年期と、警部の捜査(現在)と時間帯のずれがあるため、この二つの話がどう組み合わさっていくのだろうと考えながら読み進めて事になるかと思います。
    全般を通し、あまり急展開といった場面は無いため、人によっては面白みに欠けると感じるかもしれません。
    最後の最後で、こういう展開に持っていったのかと思わせる内容だったため、事前に本作のテーマについては情報を入れずに読んだ方がより楽しめると感じました。

  • 青山墓地で起きた幼女惨殺事件。被告人は独房で奇妙な独白を始める。
    戦前、戦時下と金髪碧眼の兄妹と遊んだ思い出はいつの間にか狂気と魔性の物語になっていく。ミステリとホラーの噛み合わせが見事にマッチしており、長すぎず、短すぎない程よい小説となっている。

  • 実は読んでから20年以上経ち、その時めちゃくちゃハマって、それ以降、著者の作品を片っ端から探して読んでいたけれど、この本は貸したまま返ってこず。その後、絶版になっていたのが再販され、すかさず購入したものの、まだ読んでない。ゴシック、吸血鬼、そういうキーワードだけれど。

  •  1982(昭和57)年作。
     帯の宣伝文句に「復刊希望! 幻の名作ベストテン第2位」「ホラー×ミステリの隠れた大傑作がついに復刊」と書かれていて、「ふうん、そうなんだ」と買ってみた。
     通読してみて、なるほど、これは面白い。
     まあ、確かにミステリにもなっているが、それよりもホラー小説としてよく出来ている。ヴァンパイアという、確かに日本の風土には相性の悪い主題を使いながら、戦時に青春期を迎えた主人公の追想がなかなかの深みを持って描かれ、説得力があった。
     昭和20年春の東京大空襲の場面もなかなか鮮烈だ。あとがきを読むと、1934(昭和9)年生まれの作者も同様に空襲を体験したようだ。どうも私が最近読む小説にはしばしばこの「東京大空襲」の場面が登場するのは奇妙な暗合だ。
     この衝撃的な空襲と、そこに至る時代の暗がりとが、物語が暗みへと墜ちて行くプロセスとが同期して、見事な効果を生んでいる。
     良い小説。しかし、この作者は「これ1作きり」の人だったのかもしれない。

  • 幼女誘拐殺人を追う警察の視点と犯人の独白で進むストーリー。
    「このミステリーがすごい! 2014年版」の企画第2位の復刊。

    ミステリーともホラーともなんとも分類できない世界観。
    というより、少年時の耽美な回顧録といった印象が強い小説だったな。

  • 記録

  • 「犯人」の回想シーンや逮捕につながる経緯など、物語部分は普通。種明かしというか、推理パートの運び方はちょっと目新しくて、おっ、と思ったけど、それだけで、何だか物足りない感じで終わった。
    200906

  • 3

  • 古い作品だからか、吸血鬼の描写など既視感があった。主にミステリーの要素が強く、あらすじにあったようなホラーとの融合は感じられない。
    最後のドキッとする後味の悪さはいい。警部が闇堕ちする展開もあるかと思ったけど何もなくて拍子抜けした。

  • お勧め度:☆5個(満点10個)。いやあ、なんかちょっと読みづらかった。40年前の青山墓地での幼女惨殺事件を題材として展開していく・・・が、最初は読み易く面白そうと思ったけど、次第にホラー色が強くなり最後にはドラキュラ?西洋色が強くなった。ちょっと理解不能。ただ単に犯人の独白が続き少し飽きる。もう少しわかりやすくならなかったのか?とも思う。ミステリーとホラーは紙一重みたいなものだから雰囲気は理解できるけど、ドラキュラは無いんじゃないか・・・。ちょっと私には合わなかったような気がする。リアリティなさ過ぎ!

  • なるほど、タイトルの意味はドラキュラをモチーフとしてる作品だったからなのか。

  • ○ 総合評価  ★★★☆☆  
    〇 サプライズ ★☆☆☆☆
    〇 熱中度   ★★☆☆☆   
    〇 インパクト ★★★★☆
    〇 キャラクター★★★☆☆
    〇 読後感   ★☆☆☆☆

    〇 メモ
     オビに記載されている紹介文は「吸血鬼+サイコパス+警察小説。彼女はもう,この時点ですべてやっていた。」(恩田陸)。2014年の「このミステリーがすご!」で「復刻希望!幻の名作ベストテン」の第2位の作品だそうである。
     この作品は3つの時制から構成されている。序章と終章は,弁護士の視点から描かれている。「青山霊園内幼女殺人事件」の弁護人である弁護士の視点である。
     序章と終章の間は,昭和12年から昭和20年までの「青山霊園内幼女殺人事件」の容疑者の回想と,昭和50年代の「青山霊園内幼女殺人事件」の捜査が描かれる。
     このミステリの肝となる部分は,「青山霊園内幼女殺人事件」の容疑者である人物や,その回想に出てくるラドラック,ヘルヴェティア公国の公使夫人,ルルベル,Kという少年が,「吸血鬼」だったのかという点である。
     終章では,2通りの解決が示される。1つはラドラックが吸血鬼であり,公使夫人,ルルベル,Kという少年のいずれも吸血鬼になり,「青山霊園内幼女殺人事件」の容疑者である人物も吸血鬼だったという解決。もう一つは,吸血鬼など存在しないとう解決。いずれにせよ,「青山霊園内幼女殺人事件」の容疑者は,狂人ではなく,刑事責任を負わせることができるという結論となる。容疑者は死刑になるのだが,「「ギロチン」ではないな」と呟き,その死体は,駐日外国公使館でメイドとして住み込み働いていたという老女に引き渡される。
     最後の部分でも,「青山霊園内幼女殺人事件」の容疑者が本当に吸血鬼になったのではないかと思わせる描写で終わる。とはいえ,吸血鬼であるというような断定的な記述はない。いわゆる,リドル・ストーリーのような体裁となっている。
     さて,この作品。面白かったかと言われると…どうだろう。1982年の作品という古さもその原因の一つだと思うが,サプライズがない。「青山霊園内幼女殺人事件」の容疑者が,吸血鬼だったのかどうか。その点をあいまいに終わらせるというリドル・ストーリーとしての体裁そのものはそんなに古臭くない。ただ,叙述トリックがあるわけでもなく,読者を驚かせようという仕掛けもない。戦時下の少年の描写や,「青山霊園内幼女殺人事件」の容疑者の逮捕までの刑事の視点の描写のいずれも,小説としては上手い,読ませるデキだと思う。全体的に評価の高い小説だということは分かるのだが,あまり好みの小説ではない。ただ,微妙な読後感も併せて,心には残る小説である。トリックらしいトリックは,作中で犯人が仕掛けるようなものもないし,作者から読者対して仕掛けるようなトリックもない。ミステリというより小説としての面白さが評価されている作品だろう。作品としては耽美的な描写とリドル・ストーリーという描き方が少しミステリっぽくはある。小説としての出来がよい分,描写が繊細でしっかり読む必要がある。ミステリとして先を読みたいと思わせるような仕掛けがなく,先が読みたくて仕方ないと思わせるような構成になっていないので,熱中度は低め。キャラクターは人間描けているという点では評価できるが,序章と終章に出てくる弁護士や博士,回想に出てくるルルベルやKという少年,捜査の場面に出てくる刑事などのキャラクターは弱い。
     好みの作品ではないが,インパクトのある作品であり,評価としては★3としたい。

  • ”幻の作品の復刻”って随分なあれだけど、意外と薄味。

  • 1982年に単行本として刊行された作品。
    ホラー×ミステリーの隠れた大傑作がついに復刊!

    作者が自らに課した長篇三部作。
    一作目がシンデレラ、二作目が青ひげ、三作目が本作で ドラキュラがモティフとなる、つまり西洋三大ロマンその原型を現代ミステリーとして料理しようという計画なのでして…、と、あとがきより抜粋しましたが、
    作品が書かれてからさらに時間が経過し、現在の読者からすると現代ミステリーとはまず受け取れません。
    クラシカルで端正、品がよく雰囲気もある。80年代の雰囲気なのかな?素敵でした。

  • 幼女殺人事件と東京大空襲と吸血鬼・・・・
    刑事のくだりはごく普通だが、終章における伏線回収は
    怪奇なロマンに満ちていて、古いながらも魅力的である。
    ラストも個人的には怪奇映画みたいで好きだなぁ・・・・

  • 幻の名作としてこの度復刊した作品とのこと。恩田陸さんの紹介帯に惹かれて購入しました。

    幼女惨殺事件の被告人はあくまでも物静かで知的な男。どこか正常ではないのに、どこが正常でないのかが分からない不思議な人物。でも、その男の回想はあまりにも非現実的で、どこか狂気に満ちていて…。

    あくまでも淡々と綴られる物語は、まるで翻訳ゴシック小説を読んでいるかのような重厚感があります。そして「終章」がとても好みです!!これぞミステリ×ホラーの融合。

  • 外国大使館の子供との交流、美しく残酷な一面をみせながら成長する美少女など、ゴシックホラーな雰囲気が満点。
    ドラキュラものです。
    ラストの怒涛のどんでん返しがざわざわきます。

  • 読了日2017/10
    とても評価が高かったの期待して読んでみた。
    最初は、だいぶ昔の本らしく言葉の言い回しとか読みにくく感じたけど、ラストの吸血鬼か否かの謎解きはドキドキワクワクしながら一気に読んでしまった。
    謎解き章で、ドキドキする本はあってもワクワクさせてもらえるのはあまりないような。
    40年近くも前に発表された作品なのにこの最終章は秀逸。

  • んんん・・・・・・
    帯に「吸血鬼+サイコパス+警察小説」と書いてあるが、どれも中途半端というか生ぬるい。

  • 2017年39冊目。
    幻の名作の復刊、そして「弁護側の証人」の著者ということで手に取った。淡々と読み進めていたけど、中盤以降から吸血鬼をうかがわせるような描写やリンクしていく様などは大きな盛り上がりはないもののまぁまぁ面白かった。
    両方の見解が書かれていたが、最終的にはどっちなのかが明確にならないままのあのラストは結構好き。

  • 吸血鬼、サイコパス、警察小説の要素どこ?犯人と警察視点で順番に進んでいく物語がどういう着地をするのか、ワクワクしながら読んだのになにこれ。時間の無駄

  • 本屋で平積みされていたので偶然手に取りました。それまでこの作家さんを知らずにおり、なんと損をしていたことか。青山墓地で発生した幼女惨殺事件の犯人の奇妙な独白。時代設定、登場人物、事件の内容等々、シチュエーションが素晴らしく、ハマってしまった。80年代に書かれた作品ということもあり、この時代の作家さんの文体が好きな私には大変満足です。しかしながら、これのオチはミステリーかホラーとどちらにもとれますが、個人的にはホラーとしたいです!

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著者プロフィール

1934 - 1985。推理作家、翻訳家。1963年に『弁護側の証人』でデビュー後、多くの作品や翻訳を手がけたほか、ミステリーに関するエッセイなども。歌舞伎好きとしても知られ、論考を残している。

「2023年 『不思議の国の猫たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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