がん消滅の罠 完全寛解の謎 (宝島社文庫 「このミス」大賞シリーズ)

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  • 宝島社
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  • Amazon.co.jp ・本 (380ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784800279828

感想・レビュー・書評

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  • これまでにも何度か手にとってきた専門関係シリーズで、例の「このミス大賞」ときたので、ショボかろうと気軽に読み始めたら、そうでもなかった。

    築地の日本がんセンターの呼吸器内科の夏目のもとに転院してきた数名患者は、多臓器転移で進行性の末期がんと診断される。余命半年と診断されるが、そろってがん保険がおりた途端に、奇跡の寛解(がんが消えること)を起こす。立て続けに4件も「奇跡」が起こったことで、同級生で研究を行っている羽島と保険会社に就職した森下とともに調査を開始する…。

    いやいや、これ本物の人やん。間違いなく同業者やん。がんのステージや治療方法からはじまり、転移を起こすメカニズムに最後のオチまで、がん研究をやっている人にしか書けないレベルの話が続く。オチに関しては、研究をやってる人にしかわからんぞこれ。メカニズムその他は、ありえないけれどもまあまあ納得はしなくはない。ただ、肺がんて難しいんやけどね。

    ディテイルに関して上記の通り、最近読んだ本の中ではトップクラスの専門性を持っているので、専門をやっている人間にとっては興味深い。病院の診察や手術室の描写が曖昧なところも、研究者ぽいよね。

    それはそうと、ディテイルが書けているから全体が良いかというとそうでもなく、旧ボスを穏やかすぎるキャラクター付をしすぎたことや、その手下も不気味になりきらない点など、全体に平坦に物事が進みすぎるきらいがある。動機も薄く、その部分の解明がまったく活かしきれていない。

    また、最近の小説にありがちではあるのだが、探偵役の羽島が金持ちの一人息子で豪邸に住んでいて気難しくて…という設定など、無理に浮世離れさせすぎる部分も鼻につく。もうちょっと普通のキャラクターにできなかったのか。

    おそらくこの作家の初期作品で、専門の知識をとりあえず全力で盛り込んでみましたという作品なのではないかと思う。もう少しネタ切れになってから、人間関係を描くことに力を入れ始めてからが本質か。

    専門から言っても、良佳作といったところである。

  • タイトルとこのミス大賞作ということに興味持ち、購入。
    確かにこれは面白い。続きが気になり一気に読んでしまった。
    トリックはちょっと専門的かもしれないが、どんでん返しの仕方はなるほどと思わされた。 犯人は誰かを考えるより、どうやったかに重きを置いた印象。
    終盤種明かしの部分が駆け足気味に感じ、個人的にちょっと勿体無いように感じた。特にあのラストは。

  • 医療の専門的な話は全わからないから、とりあえず納得してスルーするしかない。
    そんなこんなで、これといってすごいおもしろいって感じでもなかった。
    大賞ってこういうのでいいのかって疑問ありながら読んでしまった。

  • 身近にガンの人がいたからこそ、気になって購入。
    医療系ミステリーはこの作品が初めて。
    難しい用語がたくさん出るかと思っていたけど、意外と読みやすくてスラスラ読めた。
    作品にも出てくる、殺人事件ならぬ活人事件という言葉が印象的だった。
    最後のどんでん返しもうまく決まってた。

  • まあ、なんと言うか、もちろん完全にフィクションなんでしょうけど。ちょっと不謹慎?そういう私も先を知りたい好奇心に負けて読了しちゃったんだけど。
    実際のところ酷い医者はいるんだろうし、綺麗事では済まない職業なんだろうけど、同業者にこういう可能性を見ちゃうってのは、なんともやるせないというか、寂しいねえ。大多数(と信じたい)の真面目な医者達を冒涜してるよなあ。

    反社会勢力も富裕層も官僚も「社会的影響力の大きい人々」で括っちゃうのは大雑把過ぎ。関わり方も彼等の言動も不自然でご都合主義で薄っぺらい。あと、ミステリとしても、宇垣の存在は早々と出しておいて、一方で娘が実の娘でなかったとか精子提供してたとかを最後の最後でパラパラ出してきて、数ページで回収しちゃうのがバランス悪し。
    「お父さん」じゃねーだろw。

  • がん保険や生命保険に加入したあと、ガンが見つかって余命宣告を受け、「リビングニーズ特約」とかで数千万円を受け取ったあとガンが完全に寛解する、っていうミステリー。そんなことはめったに起きないのに、自分のかかわった患者が立て続けにそのような経過をたどった。保険会社や研究者の友人とともに、その謎を解こうとする。
    今や4人に1人(だっけ?)が生涯に一度は癌になるという時代。がん医療や薬の開発をめぐっては巨額のお金も動くし、ミステリーの題材として面白いのかも。でもいくら画期的な医療技術や、遺伝子操作による治療法が発達しても、人の体はもっと神秘的なもので、計画通りに病気にさせたり、治したりなんて、できないんじゃないかなぁ…ちょっと無理があるんじゃないかなぁというオチでした。
    私もガン家計なんで、少し前にがん保険に入りましたが、長年高額な保険料を納めても、「保険に入っていて本当に良かった」とか思うことがあるのか疑問だし、もちろん病気にならないのが一番良いので保険料は無駄になって当たり前だと思うようにしています。がん保険に入っているのにがん以外の病気になって、保険がきかなかったとか、保険が役に立たない話ばかり耳に入ってくる。人生は文字通り賭けだなぁ。

  • 専門用語が多くて難しいかもしれない、でも実際の医療に忠実に書いてあった。ミステリーならではの物哀しさと大どんでん返しはちゃんとあって、最後はポカーンとしてしまった。

  • 練りに練ってあり、飽きないけど少し現実ばなれ

  • おもしろかったけど、やっぱり医学的な物語やや難しい
    1/5/12

  • 2019年5月9日 63冊目(5-4)

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著者プロフィール

1976年、埼玉県生まれ。神戸大学大学院自然科学研究科修了。国立がん研究センター、放射線医学総合研究所で研究に従事。現在、医療系出版社に勤務。第15回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞し、2017年に『がん消滅の罠 完全寛解の謎』でデビュー。他の著書に『時限感染』(以上、宝島社)、『テウトの創薬』(KADOKAWA)がある。

「2022年 『がん消滅の罠 暗殺腫瘍の謎』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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