すみれ屋敷の罪人 (『このミス』大賞シリーズ)

著者 :
  • 宝島社
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感想 : 97
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  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784800290793

感想・レビュー・書評

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  • この作品は、第一部の証言と第二部の告白からなっています。

    第一部の証言では、2001年に古い洋館の庭から二体の白骨死体が発見されます。
    西ノ森がある人物の依頼を受けて白骨死体の身元を探ります。
    彼はかつて使用人だった人を訪ね、昭和十年代の洋館、紫峰邸についての話を聞きます。
    すみれの館に暮らしていた戦後目の見えなくなった主人と三人の姉妹、葵、桜、茜。
    使用人や書生たち。
    白骨死体の謎。

    第二部の告白では、ストーリーは二転三転して、思いもかけない人物の登場もあり俄然面白くなってきます。
    白骨死体は一体誰のものなのか。

    戦時中、すみれの館で何が起きたのか、生き残った人物たちが告白し謎を解き明かします。
    館の主人だった太一郎と三姉妹、そして使用人たちの心中は、お互いにお互いを想い合う気持ちでいっぱいでした。誰も悪い人はいません。
    使用人だった者たちの命がけで主人を想う気持ちと愛情がなんともあたたかく心に染みる優しい話でした。

    • まことさん
      まおちゃん。
      (私のほうがかなり歳上だと思います)
      この作品は、いいと思います。お勧めできます。
      私も「十三階段」積んであります。
      ...
      まおちゃん。
      (私のほうがかなり歳上だと思います)
      この作品は、いいと思います。お勧めできます。
      私も「十三階段」積んであります。
      来年、読みます。(って、明後日から来年だけど)
      まおちゃんも、来年も、どうぞ、よろしくお願いいたします。
      よいお年をお迎えください!
      2020/12/30
  •  朽ち果てた洋館から発見された白骨死体…その身元を探ってほしいとの依頼を受けた西ノ森が関係者からの聞き取りを行うところからはじまる…。戦前、その洋館は手入れが行き届いており、庭にはすみれの花が咲き乱れていたという…名士の紫峰家が所有し、当主の太一郎と3人の美しい姉妹、女中と使用人が暮らしていた…。当時の様子を聴きとる中でたどり着いた真相とは…。

     この作品の表紙、すごくキレイでポストカードみたいですよね!なので前々から読みたいと思ってました!お屋敷に住まう人々のお互いを想う気持ちが伝わってきて…これ、戦時下でなければみんな幸せな未来もあったのかなって思うと、やっぱり戦争っていいことはない!ただ、いつの時代でも大切な人を思う気持ちはかけがえのないもの、痛いくらいせつない余韻を得ることができました。

  • 降田 天
    〈推理作家・萩野瑛と鮎川颯が小説を書くために用いてる筆名の一つ〉

    旧柴峰家の使用人や、その関係者に、当時の話を聞きたいと、県警の刑事・西ノ森と名乗る男がやってきた。

    戦前の名家・旧柴峰邸の敷地内から発見された二体の白骨化した遺体。
    年齢、性別、死因、死亡時期、埋葬時期、すべて不明だと言う。

    西ノ森は、ある人物から、詳しい事を調べるよう依頼されていた。

    元使用人達が語る、華々しい屋敷の様子、美しい三姉妹たちの、華麗な生活。
    そして、戦争... ...

    二転三転する証言。
    意外な依頼人。

    最後に見えてきたのは、主人を思う使用人。娘を思う父親。父親を思う娘。
    読後感は、すこぶる良かった。

  • フォロワーさんのレビューで知った作品。初読み作家さんと思っていたら、この作家さんは「偽りの春」を読んでいた。

    旧紫峰邸で見つかった三体の白骨体について、西ノ森という刑事がかつての紫峰邸を知る人々を訪ねて当時の話を聞いていく。
    それぞれの話は次第に過去に遡り、紫峰邸の様々な悲劇や危険な兆候を露にしていく。
    しかし一方でそれぞれの証言には偽りや敢えて話さなかった部分があり、更には西ノ森も刑事ではないことも分かり、不穏な空気になっていく。

    紫峰邸にある日突然現れた新しい女中、三姉妹のうちの長女と次女の関係悪化、三女の精神的破綻、そして戦地から帰還した主人の無惨な変化。
    そして不幸へまっしぐらの紫峰家にとどめのような事件が起こる。
    一体白骨体で見つかったのは誰なのか、一体誰が『罪人』なのか。

    酷い火傷を負って頭巾と手袋を着ける生活になった娘たち…という設定には入れ替わりか?とワクワクしたが、予想したような陰惨さとは違っていた。

    細かな点で無理を感じる点はあるが、全体的には物悲しい紫峰家の物語だった。
    穏やかで優しい主人にも理性ではどうにもならない業があったし、窮屈そうで生きづらそうな三姉妹もそれぞれ情や才能がある。

    善意や正論が人の幸せに繋がるのなら誰も苦労しない。罪を犯したから悪人、悪意を持っているとも限らない。
    ここまでしなければならないのかと思う一方で、こうするしかないことが積み重なることもあるのかとも思う。
    何かがどこかで狂ってしまった…ということだろう。

    ミステリーとして、というよりは紫峰家の悲劇の物語という印象が残った。

  • 紫峰邸の二体の白骨体について身元調査。
    紫峰三姉妹,葵,桜,茜,使用人ヒナ。
    真相解明は第2部告白から。
    特筆すべきはヒナ,自分の顔を焼いて紫峰家の秘密を守りぬく。家を捨てた葵とは対象的。生き様が凄い

  • 最初の調査の方ではそれぞれの人間関係をつかむまで。
    物語の世界になかなか入り込まれなかったけど。
    中盤から徐々に。そして告白の章からクライマックスまで。
    時代背景や関わる人達の想いと儚さ。それを感じました。
    人を想ってつく嘘。苦渋の思いを十字架として生きる者。
    どの想い、思いも尊くて切ない。

  • 「これは秘密よ」

    愛する者の嘘を守るために彼らは嘘をつく。
    ひとつの嘘が嘘を呼びまた嘘をつく。
    すみれ屋敷の罪人とは誰なのか?
    誰かのための哀しい嘘が切ない。

    2001年、長らく手付かずだった美しい館の敷地内から発見された身元不明の二つの白骨死体。
    昭和14年に館で起こった火事、顔に大火傷を負った三姉妹。この火事と白骨死体は関係があるのか。

    「証言」の章では、関係者たちが輝いた館での日々を懐かしむ。何かを隠し嘘をついているので話が二転三転する。
    「告白」の章ではある人の告白から始まり驚く。

    本格ミステリ好きとしては、ミステリの部分は物足りない気もしたけど、
    昭和初期、すみれの花で彩られた美しい館、優しい旦那さま、美しいお嬢さま、気のいい使用人、秘密、謎の男、
    この小説の雰囲気が私は大好きです。

    証言を聞き回る謎の男西ノ森くん好みでした。

    • あいさん
      くるたん♫

      でもまだ町田くん以上は小説では現れていないわ。漫画ならいるけど(笑)

      絶対読めないけど「狐狼の血」の日岡って私好みか...
      くるたん♫

      でもまだ町田くん以上は小説では現れていないわ。漫画ならいるけど(笑)

      絶対読めないけど「狐狼の血」の日岡って私好みかしらって思うんだ。桃李くんだからそう思うのかなぁ(〃ノωノ)
      2019/02/25
    • くるたんさん
      懐かしい!町田くん♡
      そして桃李君への愛も♡
      (⸝⸝˃̶͈ ૢ ૢ˂̶͈⸝⸝)
      懐かしい!町田くん♡
      そして桃李君への愛も♡
      (⸝⸝˃̶͈ ૢ ૢ˂̶͈⸝⸝)
      2019/02/25
    • あいさん
      くるたん♪

      懐かしいね(⁎˃ᴗ˂⁎) またキュンしたいわ!
      くるたん♪

      懐かしいね(⁎˃ᴗ˂⁎) またキュンしたいわ!
      2019/02/25
  • 戦前の名家、旧紫峰邸の敷地から発見された白骨死体。
    当時の関係者の証言をもとに謎を紐解いていくミステリ。ページ数はそれほどでもないのにどのページもぎっしり濃密さを感じ、読み応えがあった。
    その時代を生きた美しい三姉妹、使用人達、謎の探偵…とそそる設定と二転三転する展開。あぁ、この時代ならではの、きっとこの時代だからこそ持ち得る感情がもたらした真相をヒシと感じた気がする。
    誰かのために…こういうのに弱い自分にはこの想いがたまらなかった、せつなさあふれるミステリ。

  • 旧紫峰邸の敷地内から発見された三体の白骨体の身許調査を、ある人物から依頼された西ノ森は当時の使用人達から聞き取りを行っていく。

    証言から導かれ、行き着いた先に見えてきたものとは事故なのかあるいは殺人なのか。野生のスミレが咲く屋敷で起きた事件は家族の切なくも悲しい愛の物語であった。

    殺人ものはちょっと苦手でドキドキしながら読んでいたが、そうではなくてホッとした。
    が、
    「まるですみれのお葬式ね」 
    この言葉が頭から離れず、物語に引き込まれるような感覚だったな。

  • 美しくて悲しくて切ないミステリー。
    命を絶とうとした岡林が見たのは、実は生きていたヒナだったのか?それとも幻だったのか?
    紫峰家で起きた悲劇。守るためでも罪は罪だと思う。

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著者プロフィール

(ふるた・てん)プロット担当の萩野瑛(はぎの・えい)と執筆担当の鮎川颯(あゆかわ・そう)による作家ユニット。少女小説作家として活躍後、「女王はかえらない」で第13回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞し、同名義でのデビューを果たす。「小説 野性時代」掲載の「偽りの春」で第71回日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞。同作を収録した短編集『偽りの春 神倉駅前交番 狩野雷太の推理』を2019年に刊行した。他の著書に『匿名交叉』(文庫化に際して『彼女は戻らない』に改題)『すみれ屋敷の罪人』がある。

「2021年 『朝と夕の犯罪』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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