鎌倉うずまき案内所

著者 :
  • 宝島社
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  • Amazon.co.jp ・本 (348ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784800296528

感想・レビュー・書評

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  • あなたは、六年前の自分が何を思い、何を考え、そして、何を望んでいたかを覚えているでしょうか?

    あなたの年齢によっても六年という期間を長いと考えるか、短いと考えるかは異なってくると思います。歳を重ねれば重ねるほどに年月もいうのは圧縮されるようにも感じます。しかし、六年という歳月は小学校一年だったあなたが、中学一年に進んでいる、そんな時間の長さでもあるのです。もしかしたら、そんな今のあなたは六年前に『僕はなんのためにこの会社にいるんだろう』、『親として、これからどうやって彼をサポートしていけばいいんだろう』、そして『私はなんのためにこの世に生を受けたの』だろう、というように、様々な悩みの中で身動きが取れなくなってしまっていたかもしれません。

    人の悩みは人それぞれです。また悩みも時間の流れによって変化してもいきます。そして、そんな悩みに向き合い、もがき苦しんだ結果が今のあなたを作り出しているとも言えます。苦しみながらも生きてきた、そんな今のあなた自身を褒めてあげていいのだと思います。

    しかし、自分の苦しみとその結果は全て見える一方で、他人の苦しみを目にすることはできません。それ故に『ヒロチューってまだ二十三歳なんだろ…年商五百億だって』と『誰もが知る若いIT社長』の話を聞くと、『雇われのサラリーマンだったことなんかあるだろうか』と思い、『遊んでるみたいな生活しながら』成功を掴んだそんな人物に『まじめに会社勤めしてる自分がばかばかしく思えてくる』という妬みの感情も生まれてくるかもしれません。この感情は、今見えている、成功したその人の姿しか見えないために生まれる感情とも言えます。しかし、苦労した過去の自分の先に今があるなら、そんな他人にだってその人を作ってきた歴史があったはずです。

    ここに青山美智子さんが2019年に発表された作品があります。三十年の年月を経て終わりを告げた平成という時代を描いたこの作品。”きっかけ”、”起点”を大切に描く青山さんが綴るこの作品。それは、今を生きる人たちの三十年の時間を遡ることで、そんな彼らの苦難の歴史を紐解く物語。過去を遡っていく画期的な構成が、そこに驚きと感動を紡ぎ出す物語です。
    
    『平成が、終わった。二〇一九年四月三十日、それは華やかな幕引きだった』と振り返るのはこの短編の主人公・早坂瞬(はやさか しゅん)。『改元がもたらした十連休が明け』て出勤した瞬は、『平成になったとき大学三年生だった』という上司の折江から当時の話を聞かされます。『愛車の赤いプレリュードを乗り回し、イタメシ屋でアルバイトをしていた』という若かりし時代を語る折江。そんな折江に渡せずに『鞄の中にしまい込んだ白い封筒』を思い、ため息をつく瞬。『平成と令和、ふたつの時代を、僕は退職願と一緒にまたいでしまった』と思う瞬は、鎌倉駅へとやって来ました。『早坂くん、時間、大丈夫?』と訊くのは四歳年上でフリーライターのノギちゃん。『都内の出版社に』七年前に入社し、『主婦向けの女性誌「ミモザ」編集部に配属されてからは六年になる』という瞬は、『ヒトツナギ』というリレー形式の連載記事の取材に鎌倉を訪れました。『もう鎌倉駅には着いているのですが、五分ほど遅れるかもしれません』と『取材先の古民家カフェに電話』すると取材相手の黒祖ロイドはすでに待っているようです。そして到着した店で『は、はじめまして。今日はよろしくお願いいたします』と名刺交換の後に始まったインタビュー。トイレに立った黒祖を待つ間、『早坂さん、もう折江さんに会社辞めるって話しました?』とカメラマンの笠原に訊かれる瞬。『もう企業に縛られる時代じゃないでしょ』と続ける笠原にはっきり返せない瞬。そんな所に黒祖が戻って来ましたが、『ああ、しまった。煙草が切れた』と言う黒祖に、『同じ銘柄でいいですか』と瞬は指定されたグロサリーにタバコを買いに出ます。ライターのノギちゃん、カメラマンの笠原、そして作家の黒祖…『自分の名前ひとつで身を立てるスペシャリストたち』と出版社の一社員でしかない自分と比較して考えこむ瞬は、『どうも、道を間違えたみたいだ』と『見おぼえのない風景』に行きあたって戸惑います。そんな時『達筆な毛筆で「鎌倉うずまき案内所」』という看板に行き当たり、地下へと続く螺旋階段を降り始めた瞬。たどり着いた部屋には『グレーのスーツを着た小柄な爺さんがふたり』、『頭の上あたりの壁に、フリスビーみたいな丸い巻貝』がかかった横でオセロをしていました。突然、『はぐれましたか?』と訊かれた瞬は、『「はぐれる」という言葉は今の自分に』しっくりくるように感じます。『そうだ、僕は今、はぐれている。あの会社から。仕事から。自分のやりたいことから』と思う瞬に、『ワタクシが外巻きで』『ワタクシが内巻でございます』と挨拶する二人。その次の瞬間、『ぐらりと視界が揺れ』、気づいたら『峰文社が出している「DAP」という雑誌の編集がやりたくて、この会社を受けた』と今までの人生がフラッシュバックする瞬。次の瞬間、『ナイスうずまき!』と爺さんたちが叫び、壁の巻貝が動き始めました。『うちの所長です』と伝える爺さんは『変化を恐れず味方につけよ、と申しております』と所長の言葉を瞬に伝えます。そんな不思議な体験をした瞬が『変化を味方にしながら、もっともっと力をつけて僕がいつか…』と変わっていく、そんな力強い物語が描かれていきます…というこの短編。物語の起点として、過去に時間軸を順に遡っていく物語の起点として、読み返せばオールスターが勢揃いする豪華な短編であることに気づく好編でした。

    2019年4月30日、三十年続いた平成の世が終わりました。この作品は六つの短編が連作短編の形式を取りながら、そんな平成の世の三十年を六つの時代で切り取り、かつ現代から過去に遡っていくという非常に画期的な構成を取っています。言うまでもなく時間軸は過去から現代へと向かっています。過去の何かしらの結果が現代に生きる我々を作り出してもいます。何十年にも渡った時代の変遷を描いた小説は多々ありますが、それらは当然に時間軸に沿ったものです。時間軸を逆に遡っていくというのは作者にとっても読者にとっても大きな冒険です。私が読んできた小説の中でこれを見事に展開したのは桜木紫乃さん「ホテルローヤル」位しか記憶にありません。そんな桜木さんの『雑誌のインタビュー記事を読んで以来ずっと(勝手に)勇気づけられてきた』とおっしゃる青山美智子さん。そんな青山さんがこの作品で展開する物語は、「ホテルローヤル」を超える、圧倒的な伏線に埋め尽くされた物語でした。

    そんな風に時間軸を過去に遡っていく物語となると、それぞれの時代の時代感を如何に出すかは一つのポイントです。六年ごとに遡っていく物語の中でそんな時代感の描写のごく一部を、切り取られた時代とともにご紹介しましょう。
    ・2019年〈蚊取り線香の巻〉:
    - 廊下に設置されたコルクボードには、「FREE Wi-Fi」の貼り紙
    - 消費税が…今年の十月からは十パーセントになりますよね、どこまでいくのか
    ・2013年〈つむじの巻〉
    - テレビでAKB48が『恋するフォーチュンクッキー』を歌っている
    - 二〇一四年の四月以降は、あらゆる商品の消費税が八パーセントになる
    ・2007年〈巻き寿司の巻〉
    - 「そんなのカンケイねえ!そんなのカンケイねえ!」小島よしおだ。最近ブレイクしたパンツ一丁の芸人
    - 使い込んで傷だらけのMP3プレイヤー
    ・2001年〈ト音記号の巻〉
    - 四月に小泉純一郎って人が総理大臣になって、なんだか今までと世間の反応が違う
    - 消費税五パーセントを合わせて、千百五十五円
    ・1995年〈花丸の巻〉
    - ホットパンツのポケットからマッチ箱みたいな四角いものを取り出す。ポケベルだった
    - フロッピーに文書がちゃんと保存されているのを確かめ、感熱紙に印刷しながら
    - 消費税三パーセント込みで九十円の俺の昼めしだ
    ・1989年〈ソフトクリームの巻〉
    - ラジカセの脇にカセットテープのケースがいくつか置かれている
    - おニャン子クラブと秋元康なら私もなんとなく知っている
    - 四月から消費税が三パーセントつくでしょ
    という感じで、消費税、通信機器、その他時代を象徴するような人物も登場させながらその時代、その時代が見事に描き分けられていきます。この鮮やかな描写は、これらの時代をこの国でリアルに見てこられた方とそうでないと方とでは随分と印象が変わるのではないかと思います。青山さんは、その観点から、2019年に五十二歳という折江にこんな風に語らせます。『なつかしいって感情は、年長者へのご褒美みたいなものだよね。時がたてばたつほど、美味くなる』。もちろん、この作品は幅広い年齢層にそれぞれの楽しみ方を提供している作品だと思いますが、この作品を真に楽しめるのは、この三十年の時代を必死で生きてきた人たち。この作品はそんな人たちにご褒美的楽しみを提供してくれる作品でもある、そう思いました。

    そんな風に時間を遡っていく作品は、言ってみれば答え合わせから作品を読んでいくことになります。小説の醍醐味はこんな苦難の時代を送った彼、どん底に生きた彼に、物語の結末に光輝く未来が待っていた、めでたし、めでたし…という苦闘を経て歓喜に至る、ベートーヴェンの第九のようなストーリー展開でしょう。しかし、時間軸を遡るということは、先にその歓喜する様を見てしまった後に、苦闘している様を見ることになります。これはどう考えても違和感があります。そんな流れで私たちが小説から感動を得ることはできないでしょう。ある種のハラハラドキドキ感は小説を読む上で欠かせません。それを解決するためにこの作品には凝りに凝った青山さんならではの構成が待っていました。ネタバレにならない範囲で、かつ押さえておくべき!という観点でこのことを一つ書いておきたいと思います。最初の短編で、主人公の瞬は、『ヒトツナギ』というリレー形式の記事の取材に古民家カフェを訪れます。そして、SF作家の黒祖ロイドの取材の場面が登場します。そんな黒祖にインタビューのリレーをしたのは、『大御所女優、紅珊瑚(くれない さんご)』でした。『めったに顔出しをしない』という黒祖が紅珊瑚からの紹介によって『異例のOK』を出したというこの企画。そんな黒祖は、次に『誰もが知る若いIT社長』というヒロチューへとバトンを渡していきます。メインのストーリーはあくまで瞬が『鞄の中にしまい込んだ白い封筒』に入れた退職願をどうするのかという瞬が主人公となる物語です。そこでは、『ヒトツナギ』の企画など単なる物語の背景に過ぎません。しかし、この作品はそんな背景を単なる背景と読み飛ばしてはいけない作品です。背景が後々の短編の中でそれが過去に登場した人物たちの苦闘の結果であったという驚きが読者のあなたを次から次へと襲います。この作品は、あなたの今までの読書の手法は通用しません。メインで展開するストーリーに感動しながらも、物語の背景となるあらゆる事ごとにもしっかり注意を払い、その内容をしっかり記憶しながら物語を読み解いていく、そんな読書のその先にあなたを次から次へと襲う驚きが深い感動へと変わっていく、この作品は、そんな画期的な構成の物語なのです。

    この作品は時間軸を遡っていく、いわば技巧的な作りの作品であることに触れましたが、一方で六つの短編で描かれるのは、青山さんならではの、”きっかけ”、”起点”に光を当てる物語です。この作品では『鎌倉うずまき案内所』という、行きたいと思っても行けない、行くべき人の前にのみ現れる不思議な場所が登場します。そして、『アンモナイト所長』というこれまた奇想天外な存在によって暗示される”きっかけ”、”起点”を意識したその先に、それぞれの短編の主人公たちが、顔を上げていく物語が描かれていきます。『なんで結婚するんだろう』と結婚に自信を失った32歳の梢。『私がわからなくなってしまったのは、真吾の心だ』と息子の進路に思い悩む母親の綾子。そして、自分の立ち位置がわからなくなり『友達から、学校から、自分から』はぐれていると感じる中学生の いちかなど、今の自分に思い悩む様々な年齢、職業、境遇の主人公たち。そんな主人公たちが、『鎌倉うずまき案内所』で与えられた”きっかけ”、”起点”を元に力強く歩き出す様が描かれるのは、青山さんの安心の王道パターンです。そんな王道パターンが、時代を遡る中で繋がっていく。どんどん、どんどん繋がっていくこの作品。全体を俯瞰するために用意された巻末の〈平成史特別年表〉を読み終えて、その構成の巧みさに改めて感激しました。

    『人生ってまっすぐな道を歩いていくんじゃなくて、螺旋階段を昇っていくようなものなんだ』という通り、私たちの人生は単純に真っ直ぐ続いていくだけのものではありません。『お互いの曲線がそっと近づいたり重なったりするときに人は出会』い、また離れていきます。しかし、そんな人と人は真っ直ぐな人生でないからこそ、再び、また違う場面で再開する事だってあるのだと思います。”大人の階段をのぼる”と言うように階段を一段一段上がっていくということは、人が成長していくということでもあります。かつて幼かった、また悩みの中に苦しんでいたあの人、この人も階段を上がっていきます。そして、そんな苦労に、苦難に見合ったその先の未来を生きている人に再開することだってあるのだと思います。そんな螺旋階段を降りていくように他人の人生、今そこに輝いている人の過去の姿を見るこの作品。”きっかけ”、”起点”を大切にする青山さんのならではのこの作品。そして、読後すぐに最初から読み返したくなること必須のこの作品。

    青山さんなりのこだわりをふんだんに盛り込みながら、小説の一つの可能性を提示した画期的な作品だと思いました。

    • さてさてさん
      りまのさん、こんにちは。
      はい、なんとも胸がいっぱいになって涙が…ということってありますよね。青山さんの作品では私もそんな感を抱くことが多い...
      りまのさん、こんにちは。
      はい、なんとも胸がいっぱいになって涙が…ということってありますよね。青山さんの作品では私もそんな感を抱くことが多いです。この作品も本当に良いお話でした。
      一応、青山さんの既作は完読しました。私の場合、三冊揃わないとレビューには至りませんので、青山さんの次のレビューは、さていつになるのかなあ、と。新刊続々を楽しみにしています。
      2021/09/16
    • さてさてさん
      まことさん、こんにちは。
      青山さんの昨年三冊読んで他の作品も読みたかったのですが、三冊揃わないと読めないので、「月曜日の抹茶カフェ」を心待ち...
      まことさん、こんにちは。
      青山さんの昨年三冊読んで他の作品も読みたかったのですが、三冊揃わないと読めないので、「月曜日の抹茶カフェ」を心待ちにしていました。
      青山さんの作品完読ですが、読んで良かった作家さんでした。
      まことさんのところにもお伺いさせていただきます。ありがとうございます!
      2021/09/16
    • まことさん
      さてさてさん。

      ありがとうございます。
      お待ちしています。
      さてさてさん。

      ありがとうございます。
      お待ちしています。
      2021/09/16
  • ◇◆━━━━━━━━━━━━
    1.感想 
    ━━━━━━━━━━━━◆
    よい作品でした〜。
    優しさとユーモアに包まれているよな、そんな感じをうけます。
    「猫のお告げは樹の下で」と同じような作風で、迷いを抱える人たちが、うずまき案内所に辿り着きます。そこで、ヒントをもらって、自身にとって、より良い道を切り開いて行きます。

    過去に展開していくというのが珍しく感じました。
    登場人物をしっかり記憶してないと、面白さが半減してしまいますので、しっかりとメモっていくのがいいですね。

    登場人物たちの言葉がすっと心に入ってきて、とても心地よい感じで読書ができました。
    「同じ言葉を同じ時間で話している人たちって、みんな同級生みたいなもんだ」
    「世界全体が螺旋なのかもしれない」

    そんな作中で、「はぐれる」という言葉が何度もでてきますが、いろいろと自分のまわりの環境が変化する日々が続いていて、この言葉がとても心にひっかかりました。
    なんとなく、自分もはぐれているような気がして、面白かったです。

    青山美智子さんファンなので、楽しみにしてました。
    読むのが楽しみというだけで、とても幸せなことですね。そんな幸せを提供している作家さんは本当に素晴らしい職業だな〜と感じています。作品に関わった方達へ感謝です。ありがとうございました♪


    ◇◆━━━━━━━━━━━━
    2.あらすじ 
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    2019年 蚊取り線香
     ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    仕事に悩む主人公の早坂。
    自分のやりたいことができていないため、退職を考えるが、うずまき案内所との出会いで、見えていない世界が目に映るようになり、思考が大きく変化していく。


    2013年 つむじ
     ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    ユーチューバーを目指す息子と心のすれ違いを感じる綾子が、うずまき案内所との出会いで、息子に歩み寄っていく。

    2007年 巻き寿司
     ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    恋人との結婚が決まった梢。マリッジブルーの状態になり、本当に結婚していいのか迷いが消えない。うずまき案内所との出会いで、自分の気持ちと向き合っていく。

    2001年 ト音記号
     ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    中学校で自分の立ち位置を守るために、快く思っていない同級生の輪の中にいた、いちか。うずまき案内所との出会いで、自分の気持ちと向き合っていく。

    1995年 花丸
     ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    劇団でなかなか芽が出ない鮎川が、珊瑚との出会いで自分自身を取り戻していく。

    1989年 ソフトクリーム
     ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    書店を営む文太。還暦もすぎ、人生の終盤に向かって迷いがでてくる。うずまき案内所との出会いで、新たな一歩を踏み出していく。


    ◇◆━━━━━━━━━━━━
    3.主な登場人物 
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    (鎌倉うずまき案内所)
    アンモナイト所長 アンモナイト
    外巻 じいさん
    内巻 じいさん
    黒祖ロイド SF作家
    紅珊瑚  女優


    2019年 蚊取り線香
     ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    早坂瞬 29歳、峰文社(都内の出版社)
    ノギちゃん 33歳、乃木、ちょいヒゲ、フリーのライター
    笠原さん
    折江さん 上司、52歳、副編集長
    田町 オーナー
    鮎川茂吉 有名劇作家


    2013年 つむじ
     ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    広中綾子 51歳
      譲 夫、58歳
      真吾 息子


    2007年 巻き寿司
     ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    日髙梢 こずえ、32歳
    田所朔也 恋人
    ジェシカ・ウィルソン 23歳


    2001年 ト音記号
     ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    園森いちか 中学生
    乃木 同級生
    サクちゃん 叔父さん


    1995年 花丸
     ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    鮎川茂吉 40歳
    広中 40歳


    1989年 ソフトクリーム
     ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    浜文太 64歳、浜書房
    千恵子 60歳
    黒戸六郎 高三
    九十九夢見 高三
    桐谷珊瑚 19歳
    まーちゃん 人魚、珊瑚の母


    ◇◆━━━━━━━━━━━━
    4.語彙
    ━━━━━━━━━━━━◆
    メルティング・ポット

    るつぼの意であるが、アメリカの社会的文脈のなかでは「人種のるつぼ」を意味する。
    多様な人種、民族による多様な文化がアメリカ社会で溶け合い、新しい生活文化を形成していると考え、その状態をいうときの表現。

  • フォロワーさんが、次々に読まれているので、一体どんな話なのかと気になって、つられて読みました。
    私のところの図書館には、まだ入ってなかったので、新規に購入してもらってラッキーでした。

    連作短編集です。
    2019年蚊取り線香の巻
    2013年つむじの巻
    2007年巻き寿しの巻
    2001年ト音記号の巻
    1995年花丸の巻
    1989年ソフトクリームの巻
    という風に時代が6年おきにどんどんさかのぼって逆行していきます。

    ファンタジー色が濃いお話でした。
    どのお話にも登場する「鎌倉うずまき案内所」でオセロをしている双子のおじいさんの外巻さんと内巻さんはずーっと同じ老人でなんで若くならないのかなと思いました。
    あと黒祖ロイドという作家がすべての話に登場します。

    話としては2001年のト音記号の巻がみずみずしい中学生のお話でよかったし、最後のソフトクリームの巻も文太とマーちゃんの恋がせつなくてよかったです。

    他にも何人か違う話にリンクして登場する人物が複数いて、このお話全体がうずまきのようにぐるぐると巡り巡っているかのようでした。

    もうひひとつ話を付け加えるなら2025年にト音記号の巻の乃木くんといちかちゃんが再会する話はどうかと思いました。

    あと、とても不思議なことが起こるうずまきキャンディですが、私には必要かどうか考えてしまいました。

    • まことさん
      ゆうママさん。
      フォローありがとうございます!
      ブクログ歴2か月で、それだけ、フォロワーさんに、お薦めしていただけるなんて、凄いですね!
      私...
      ゆうママさん。
      フォローありがとうございます!
      ブクログ歴2か月で、それだけ、フォロワーさんに、お薦めしていただけるなんて、凄いですね!
      私が、そのくらいの頃はただひたすら、一人で日の目をみない、レビュー書いてました(笑)
      こちらこそ、これからもよろしくお願いいたします。
      2021/04/16
    • アールグレイさん
      まことさん、こんにちは!
      図書館予約が、波のようにやってきています。ひ~っ!今、読んでいる本が明日までです!「ブロードキャスト」新刊の「ドキ...
      まことさん、こんにちは!
      図書館予約が、波のようにやってきています。ひ~っ!今、読んでいる本が明日までです!「ブロードキャスト」新刊の「ドキュメント」に繋がりがあるらしいと知り、再読中です。なんと、図書館から電話があり″リクエストの本が用意できている〝というのです。「その扉をたたく音」です。伊坂さん、当分読めそうにありません。
      では、ご飯の支度です。(^_^)V
      2021/04/23
    • まことさん
      ゆうママさん。こんばんは!
      本が次々に入り、嬉しい悲鳴ですね!
      伊坂さんも、面白いので、読み終えられたら、是非!!
      私も、ゆうママさんの、本...
      ゆうママさん。こんばんは!
      本が次々に入り、嬉しい悲鳴ですね!
      伊坂さんも、面白いので、読み終えられたら、是非!!
      私も、ゆうママさんの、本棚も、そのうち、参考にさせていただきますね。
      2021/04/23
  • フォロワーさん方のレビューを読んで興味を持った本。
    面白かった。こういう出会いがあるから嬉しい。フォロワーさん方に感謝。

    設定としては人生に行き詰まっている人々の再生の物語という、よくある話なのだが、その再生の転機となるのが<鎌倉うずまき案内所>なる怪しげな場所で、そこにいる奇妙なおとぼけ老人コンビと、これまた怪しいアンモナイト所長!
    そこで提示されたキーワードとラッキーアイテムが人々の再生の始まりとなる。
    最初はちょっと奇を衒ったような話なのかと思ったが、意外にもその後の話はホッとする。

    平成という時代を六年ごとに遡るという構成が効果的。
    先の物語の脇役が後の物語の主役だったり主要人物だったりということで登場するのもよくある手法なのだが、これが実に巧妙に作られている。
    あの話の中のあの人のさりげない一言、何気ない仕草、サラッと書いてあるエピソードが後々の物語に繋がっている。
    そういう幾つもの伏線を探すのも楽しかった。

    また「遡る」という手法のおかげで、先の物語に出てきたあんな人こんな人の、それまでが後に知ることが出来るというのも良かった。
    なんの努力もなく持って生まれた運の良さや人当たりの良さで世の中を上手く渡っているように見える人、筋も信念もなくその時々で上手く行きそうな方を選んで勝ち組に入ったように見える人、周囲の人の気持などお構いなしにガンガン強気に進める人、そういう一見妬ましく見えてしまう人たちもその過去を知ればみんな紆余曲折や足掻きや葛藤があったことが分かる。
    頑張っていない人などいないのだ。

    全体を通して登場する女優と作家も、読み進めていきながらその人生を遡っていくと、家族関係人間関係、現在の地位に行き着くまでの様々なことが分かってくる。
    ここにも大いなる仕掛けがあって、思わず最初から確認してしまった。

    年齢、性別、職業に関わらず人にはそれぞれの悩みや行き詰まりがある。それは決して他人には見えないし見せないし、でも分かる人には分かる。
    そんな時にふと現れる<鎌倉うずまき案内所>。
    『はぐれましたか?』
    今日もおとぼけ老人コンビは誰かに優しく声を掛けているのだろうか。

  • 二度読み必至。

    くるたんさんのレビューを読んで、気になった本。
    「人生はうずまき」というフレーズが、最近読んだ絵本「生きているのはなぜだろう。」を思い出させたのだ。絵本でも「いきものは宇宙の中にポツンとある小さな渦」と言っている。これは直ちに読まねば!ということで図書館で借りる。

    そしたら、めちゃくちゃ面白い小説でした。
    ブクログを続けているから、こういう幸せな出会いもできる。

    「鎌倉うずまき案内所」は、まさしく人生のうずまきを見つめなおして、新たな気づきを案内してくれるところ。しっかりと幸せになるヒントをくれる場所。人生に迷った時だけ、訪れることができる場所。

    そして、人と人とのつながりもまたうずまき。
    この小説は、年代の新しい順に短編は折り重なっていく。他の短編の登場人物や出来事が少しづつ顔を出し、それぞれの人生のちょっとしたスパイスになっている。
    それを発見するのも楽しく。いいですね。

    昭和の終わりから令和の始まりまで、つまり平成をうずまき状に描く。僕は青山さんとあまり年が変わらないので、時代感がすごく響いてくる。

    ちなみに、僕も鎌倉(というか江の島)でとんびに手に持ったパンを取られたことがあります。ああ、鎌倉行きたいな~!今度訪れたら「うずまき案内所」探してみよっと。

    • くるたんさん
      たけさん♪こんばんは♪

      ナイス!レビュー!です♪
      人と人とのつながりもまたうずまき…ほんと、そうですね。
      なんだか世界中の全てのものがうず...
      たけさん♪こんばんは♪

      ナイス!レビュー!です♪
      人と人とのつながりもまたうずまき…ほんと、そうですね。
      なんだか世界中の全てのものがうずまきなんじゃないかと思います。

      第1章をまた読み返すと なるほど〜!
      ナイス構成でしたね。

      青山さんはこういうゆるい繋がりがたまりません。
      「木曜日にはココアを」「猫のお告げは樹の下で」も好きです( ˊᵕˋ* )
      2020/06/28
    • たけさん
      くるたんさん、おはようございます!
      コメントありがとうございます!

      また、レビューにお名前を出してしまってすみません。

      レビューお褒めい...
      くるたんさん、おはようございます!
      コメントありがとうございます!

      また、レビューにお名前を出してしまってすみません。

      レビューお褒めいただきありがとうございます。この小説読んでいて構成から何からまさしく「うずまき」だなぁ、と思いました。

      青山美智子さん、この本で初めて知りました。他の本も読んでみようと思います。
      良い本を教えていただきありがとうございました!
      2020/06/29
  • 面白かった〜
    鎌倉うずまき案内所を訪れた主人公たちが、「固定観念を取っ払う」ことの大切さに気付くお話。
    一章ずつ、主人公も違い、前の章の登場人物がちょこちょこ出てくるので、辻村美月さんの本のように楽しむこともできました。
    章を追うごとに時間が遡るので、最終章から逆に読んでいった方が分かりやすいじゃないか、と思ったりもしますが、ここはやっぱり時間を遡ることに意味がありますよね。第一章の主人公がまぶしく思える人たち、現在の彼(彼女)がなぜ今輝いているのか?の原点が見えてくると、第一章の主人公にもきっとそんな未来がくる!と信じられます。
    それにしても、案内所の双子のおじいさんと所長、毎回言う同じ決め台詞や所長の動き、ここだけマンガみたいで初めは「?」と思ったけれど、章を追うごとにこれがいいんだ!と思うようになりました。このシーンのおかげでジメッとせずにカラリと爽やかな作品になっていると思います。
    読み終わったらすぐに、最初のページに戻りたくなります!とっても面白いです。おすすめです。

  • フォローしている色々な方のレビューを読んで、これは読みたい!と図書館に予約。
    意外と早く回ってきた。
    お墨付きだけあって、引き込まれる本でした。
    皆さまご紹介ありがとうございます。

    子どもの頃からよく訪れている鎌倉。
    読みながら、もしかしてあの帽子屋さん?とか、私も合格祈願に行きましたよ、などと映像が浮かぶ。
    そして、著者の青山さんは同年代。
    平成を6年毎に遡っていく構成は、細かな時代背景もさりげなくきちんと描かれていて、場所だけでなく時代をも追体験しているようだった。

    いくつもの人生、それぞれの螺旋がどこかで触れるように、それぞれの短編もどこかで繋がる。
    特に、中学時代、結婚、子育ての話は、あ〜分かるわ〜…とウルッときた。
    しかし、転職希望の若者の話は、将来自分の子どもも言い出しそうなので、この案内所が実在することを思わず願ってしまった。

    私も双子の紳士内巻きさんと外巻きさんに「ナイスうずまき!」と言われたい。2020.7.25

  • 分かった! 図書館で予約するも、「予約1」なのに、なかなか届かなかったわけが。
    きっと私の前に借りた方は、何度も読み返して、人と人の繋がりを辿ったり、素晴らしい表現を味わっておられたのだなと

    そして、やっと届き読んでみると、ページのあちこちに散らばっている工夫に、表現の素晴らしさに、構成の巧みさに虜になってしまった

    まず、章の構成が楽しい
    2019年 蚊取り線香の巻 2013年 つむじの巻
    2007年 巻き寿司の巻 2001年 ト音記号の巻
    1995年 花丸の巻 1989年 ソフトクリームの巻

    螺旋階段を上るように?下るように?6年ごとに遡っていく。みんなぐるぐる回っているものばかり。それに○○の巻なんていうところまで、巻きにこだわって、思わず笑ってしまった
    こういう遊び心たっぷりの何気ない演出は、発見する楽しみもあって、大好きだ

    「はぐれましたか?」
    鎌倉うずまき案内所に入り込んでしまった迷い人は、この言葉で
    自分の心のまだかまりを吐露することになる
    みんな大なり小なり、迷っている。これでいいのかと
    不安に思っている。誰かにそれでいいんだよと言って欲しくて

    そして、アンモナイトのお告げと困った時のうずまきキャンディ
    の助けを借りて、気付く
    いつのまにか、本質を見失ってしまっていたことを
    いつのまにか、最初の頃の気持ちを忘れてしまっていたことを

    著者の言葉選びのセンスは、私の心に響いてきて、付箋だらけになった。しかもユーモアがあって、楽しい

    *本当の幸せは、人から選ばれることじゃなく、私が私を愛することの中にあるのだと。

    *心って、顔の真ん中にあるのかなあ。嬉しかったり感動したりすると、鼻がきゅーって痛くなるじゃん。
    ても、悲しいときって、胸が痛かったり重くなったりするよね。わたし、感動の涙と悲しみの涙って、製造の場所が違うんだなっていつも思ってた

    *俺は、流れ着いた先での、そのつどの全力が起こしてくれるミラクルを信じてるんだ。思いがけない展開で次の扉が開くのがおもしろいの。そのつどの全力の結果、俺は今ここにいるんだ

    *人生ってまっすぐな道を歩いていくんじゃなくて、螺旋階段を昇っていくようなものなんだなって。お互いの曲線がそっと近づいたり重なったりするときに人は出会うものだし、ぐるぐる回りながらあるところでまた同じ景色を見たりするものね

    多くのレビュアーさんが再読したと言われるのに納得!
    私も人と人の繋がりに読み落としがないか味わいながら、もう一度読もうと思う
    文句なしの五つ星

  • 「平成」という時代を6年ごとに遡りながら、悩める人々が緩やかに繋がっていく連作短編集。
    仕事や結婚等について、誰しも理想の人生を何となく思い描いているだろう。
    けれど人生とは、目も前に広がる一本道をただ真っ直ぐに歩いていけばいい訳ではない。
    道は時に二股に分かれていたり、くねくね曲がっていたかと思うと、その場をぐるぐる回っていたり、とその時々で悩みは尽きない。
    そんな悩みのループにはまってしまった人々に対し、一つの答えを教えるのではなく、ヒントを出して自分で気付くよう導いてくれるところが読んでいてとても心地好かった。
    自分で気付いた方が納得もいくし、その後の歩みにも繋がるはず。

    読み終えた後すぐにもう一度読みたくなる(というより、一度だけではちょっと混乱してしまう?)読み手も螺旋階段をぐるぐる回ったような気分にさせてくれる作品だった。
    二度目を読み終え、登場人物達の深い繋がりを再確認した後、「平成」という一時代を渡り終えた満足感で一杯になった。
    「ナイスうずまき!」

  • 螺旋階段、降りてみたい。
    その時、何を話すのだろう。

    縁と縁の力で前に進む感じがして、とても良かった。

    どこで誰と誰がどう交差していたか、もはや分からなくなったので、逆再生読みしてみようかなと画策中。
    答え合わせみたいになるのか?

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著者プロフィール

1970年愛知県生まれ。横浜市在住。大学卒業後、シドニーの日系新聞社で記者として勤務。2年間のオーストラリア生活ののち帰国し、上京。出版社で雑誌編集者を経て、執筆活動に入る。第28回「パレットノベル大賞」佳作を受賞。デビュー作『木曜日にはココアを』が、第1回「宮崎本大賞」を受賞する。『お探し物は図書室まで』で2021年「本屋大賞」2位に、『赤と青とエスキース』で2022年「本屋大賞」2位に選ばれる。他の著書に、『鎌倉うずまき案内所』『ただいま神様当番』『月曜日の抹茶カフェ』『マイ・プレゼント』(U-ku氏との共著)『月の立つ林で』『リカバリー・カバヒコ』等がある。

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