魂の民主主義: 北米先住民・アメリカ建国・日本国憲法

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  • 築地書館
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  • Amazon.co.jp ・本 (142ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784806713098

作品紹介・あらすじ

1142年、1787年、1946年…北米先住民イロコイ連邦憲法、アメリカ合衆国憲法、日本国憲法が生まれた、3つの時代を通して見える風景とは。民主主義の「もう1つの源流」を、1000年のときを超えてたどる魂の旅。

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  • 今現在もアメリカの中にイロコイ族の領土が在り、そこでは合衆国憲法第6条によって守られている治外法権が認められている。イロコイ連邦のパスポートが有効であり入国ビザもある。当然アメリカの税金も及ばない、そのかわりアメリカの市民権も選挙権もない、一種の独立国なのだ。アメリカンインディアンのイロコイ族やホピ(アナサジ族)などが。持っていた憲法を知ることヨーロッパ人は強い驚きと刺激を受け、フランスやロシアの革命の道を開く種になったと言う。モンゴルやイスラムによる支配とペストそしてローマカトリックによる異端者への弾圧と王による封建政治の恐怖から逃れユートピアを夢見人々が新天地を求めて新大陸に移民したとき、当然ながらその白人達はすべての人々の平等と自由を願っていた。彼らが逃げ延びた新天地で漠然と夢見ていた対等な関係で成り立つ社会を実践している人々を目の当たりにしたのだから驚いたに違いない。先住民は哲学的・文化的にはるかに勝っていたけれど文明的に発展していなかったためにイロコイ族達のことを「気高い未人」などと呼んだらしい。別の大陸と出合うまでは部族の名前はあっても大陸の名前の必要がなかった。コロンブスの後、新大陸を探検してそこがインドではなく、未知なる大陸だと言うことを発見したイタリア人のアメリゴの名を取ってアメリカと名付けられた。従って当時は先住民のことをアメリカ人と呼んでいたのだけれど、英国の植民地であることやカトリックの支配から独立したいと願った移民達がアメリカ人と名乗るようになってインディアンの呼び名が浮上した。エンゲルスは五つの種族が集ったイロコイ連邦を評して「兵士も憲兵も警察官も、貴族も王も総督も知事や裁判官なく刑務所もなければ訴訟もなく、それでいて万事がきちんとはこぶ・・・貧乏人と困窮者はありえない・・・万人が平等であり自由だ 女子も含めてである
    トマス・ジェファーソン曰く。もし私が、新聞なき政府と政府なき新聞のどちらが良いかと問われれば後者と答える・・・インディアンのように政府を持たない社会の方がヨーロッパ諸政府の下で生きる人々よりもずっと大きな幸福を享受していることに疑いの余地はない。合衆国の憲法はフランクリンなどによってイロコイ憲法にならったすべての人々(We the People)の対等な関係による。精神と肉体に対する自由と平和がもたらす幸福を歌い上げようとしたけれどすでに出来上がった大地主と実業家によって阻まれ、その自由は奪い合いの自由に摩り替えその対等性は押しなべた平等に置き換えられた。権利を勝ち取ったものが優先的に強くなるシステムに塗り替えてしまったし女と黒人と先住民を蔑視して奴隷とペットにしてしまい。サラダでなくミックスジュースにならんとした夢の国は建前の憲法に薄められてしまった。公務にたずさわる者はけして権力でも代表でも権利でもなく「人々に従い人々が導く」ことなのだ。
    デビッド・ラムゼー曰く、人々の政治的自覚は、臣民から市民へと変化した。・・・市民とは集合的に主権を有する自由人集団の一員を意味し・・・一人ひとりが本来他の成員と同等の共有的主権を持っている精神的な自由を現すフリーダムと物質的な契約による自由を意味するリバティーを区別しなければならない。そのフリーダムはすげての生き物と無機物に至るまで対等に扱うことで成り立つ、合衆国の憲法に使われている言葉はShallを基調にして人民主権を現している「我々は~をする」と誓い、政府に対しては「~せよ」あるいは「~してはならない」と命令する。2003年のイラク戦争に対してイロコイ女性の連盟でインターネットに流された言葉がある。私達の伝統では戦地に行く男達に女達がモカシン(靴)を作る慣わしがありました。戦争を望まないときにはモカシンを作りませんでした・・・女達よ自分お力を思い出しなさい。自分の責任を思い出しなさい・・・自分の持つ力を信ずる善きことのために使わなければなりません。平和を守らなければなりません。モカシンを仕舞っておかなければなりません。イロコイ族によれば聞く耳を持っていれば必ず合意(ワンマインド・一体感)が生まれる。と言う確信の基に憲法のみで法律で縛らないフレキシブルな政治が可能になる。徹底議論を支えるのは話し手を尊重する聞く耳と話し手自身が考えるための間を置いて静かに丁寧に語ることと、会議に当たって全員が森羅万象と七世代に渡る福利を配慮することを誓う。会議は焚き火を囲んで輪になり日が暮れるまでとする。続きがあるとすれば明日に持ち越し会議の後は共に食し歌い踊る。外の民に対しては憲法を披露し連邦への参加を呼びかけ話し合いで解決せず戦いを仕掛けられた場合に限って自衛的暴力もやむをえない。しかしこの場合ですら最終的に族母の判断が必要になると言う。

  • 分類=憲法(日本)。05年6月。

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著者プロフィール

作家・翻訳家。インドやアメリカで自学の道を歩み、82年より家族と屋久島で”半農半著”の暮らしを続けた。現在は国際環境保護団体グリーンピースジャパン事務局長。

「2006年 『どうして勉強するの?お母さん』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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