世界史の分岐点 激変する新世界秩序の読み方 (SB新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784815610098

作品紹介・あらすじ

予測の先の新時代に備えよ!

近いうちに、「世界史の分岐点」が訪れる。日本も世界も、その激動に呑み込まれるだろう。避けることはできない。本書は、それがどんなものか、なぜ起こるのか、詳しく論じている。ビジネスにたずさわる人びとも、市井の人びとも、その備えをしたほうがよい――(「まえがき」より)経済、科学技術、軍事、文明……「知の巨人」が語りつくす、新しい時代を読み解く針路。

感想・レビュー・書評

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  • 橋爪大三郎氏が、佐藤優の脱線しがちな対話の流れを何度も引き戻す。解説もそれぞれに得意分野があり、佐藤優を上回る知識や見解を披露できる橋爪大三郎は流石だ。分かりやすいし、面白い。技術論も踏まえた世界情勢について。

    今の中国は大東亜共栄圏とよく似ている。グローバル経済は主権国家がたくさんあって、しかし経済は各国の法律のもとで活動するのがルール。法律は国ごとに違う。各国の法律を国際フォーマットに合わせなければならない。会計法、訴訟法、特許権とか知的財産権とか。現状これにそぐわない国はイスラム圏と中国。国際秩序のゲームチェンジャーになろうとしている中国を牽制すべく、こぞってウィグル問題で中国を非難し制裁をかけるが、日本は与さず、視点は台湾海峡へ。

    日本でもアメリカでも起こっている問題は中流階層の解体。製造業中心の大企業が経済を牽引していたが、生産拠点を海外に移し始めることで打撃を受ける。リカルドの比較優位説。これを洗練させたのがサミュエルソン。国際貿易の基本定理としてのモデル。自由貿易を進めていくと最終的にどうなるか。モデルの前提は各国間で資本や技術の移転はなくて生産物を輸出入するだけというもの。それを続けていくと各国の要素価格が均等する。要素価格とは生産要素の価格のことで土地、資本、労働の価格。賃金が世界中で均等化すること、これが国際貿易の最終到達地点。付加価値の大部分は先端技術に集中するのだと。

    日本もアメリカもここ数10年賃金が上がらず、アメリカの先端企業における一人勝ちの構図が格差を拡大し、富の集中とともにアメリカ経済を引き上げているから、日本のみが停滞してるように見える。国境の枠内に社会保障が必要な人間をどれだけ抱えているか。それによって税金が異なる。つまり要素価格は国際比較によって均等化する傾向にあるとしても、自国の枠内に抱えるリソースの形によってそれぞれにハンデが異なるから、最終的に賃金が世界中で均等化する事はありえないのでは。

    核融合が10年後に実用化すれば地球温暖化の問題は解決する。今の原子力発電所は核分裂。放射性のウラニウムを使うがこの資源は埋蔵量が少なくまもなく枯渇する。廃棄物も多く出る。廃炉の解体も厄介。核融合なら海中に無制限に材料があって枯渇の心配がない。水素は炭酸ガスを出さないが、そもそもエネルギー資源ではなく、他のエネルギーを使って生産されるものである。太陽光エネルギーより太陽熱発電の方が本命。

    受験や就職のために科目を選択して、早い段階から決めつけてしまう人生は空虚だ、と最後に二人。全くその通りだと思う。上手く生きる事は生命にとって重要で、社会のルールを把握したら、それに合わせて最大限自分の得意分野を当てはめる。それ自体は空虚だとは思わぬが、社会のルールは正しいか、それで社会は変わるのか。その時点での自己評価は正しいか、別の環境や異次元での成長を目指さないのか。内外から規定する人生の単位の枠を超えねば。国境枠内のリソース差異により均等化があり得ぬ原理と同義にも感じる。

  • 佐藤優さんとの共著は初めてですが、橋爪大三郎さんの本
    3冊読んでいました。面白かったようです。

    佐藤優さんによると
    〈本書で第一ヴァイオリンを弾いているのは橋爪大三郎先生だ。私は橋爪先生から、中国問題、都市問題(特に東京の現状と将来について)、教育問題、科学と技術の問題(特に核融合、量子コンピュータ、量子通信衛星)、軍事問題、文明の問題などに関するブリーフィング(説明)を受けた。対談を本にする際には、私が橋爪先生の見解に賛成する部分と見解の異なる部分が浮き彫りになるように編集した〉だそうです。

    佐藤優さんは、日本が抱える危機を克服するのに必要とされるのは教育の質を改善することと考えているそうです。
    そして読書を通じて高校レベルの知識の欠損を埋めることが社会人にとって重要で、この本は独学の手引きになることも意識して書かれたとのこと。

    そして、今年(この3月?)で大学の仕事を全部終わりにしようと思っているんですって!
    一冊一冊の本を、全力を挙げて作る。
    書くことに全力を集中させないといけないと思っているそうです。
    楽しみにしています。
    お体を大切に。

  • 経済、科学技術、軍事、文明をトピックに対談。
    失われた30年。まだ取り戻せる。でも今のままじゃダメだ。
    先端技術、宇宙法、核融合発電…

  • 非常に面白かった。二人の対談形式で、経済、科学技術、軍事、文明について、過去の歴史を振り返りつつ、現状が語られている。今まで自分はなんと無知であったかを思い知らされる。危機感を持ちつつ、学び続けずにはいられない気持ちになる。巻末の文献リストも嬉しい。ぜひ読みたい。

  • ●中国にとって、台湾は、今あるものにプラスできるかもしれないもの。しかしウイグルは今あるものからマイナスされてしまうかもしれないと言う問題。本当は台湾よりウイグルの方が大きい問題。
    ●東京に住むのは、富裕層とその富裕層の生活を支えるエッセンシャルワーカーになっていく。富裕層の東京とスラム化する東京が、同じ東京の中で道1つ隔てて共存していくのではないか。
    ●大学と言う「知の共同体」の一員なのだから、不測の事態(コロナ禍)に際しては、皆で負担していくべき。授業料を返せと主張するのはおかしい。
    ●量子の専門家は他にもいるのですが、宇宙法のことをよく知っている人は、日本で青木節子さんだけです。慶応大学の研究室。防衛大学校にいたこともあるので、軍事技術的なことに関しても、いろいろ知識をつけてきています。
    ●軍事の分野では、今から150年から200年前の議論が今でも有効です。古くならない軍事学の古典。

  • タイトルと対談者の組み合わせから大いに期待をしたが、やや期待を下回る内容だった。前半はほぼ橋爪先生の独壇場で日頃の主張と大きく変わらない。最近は橋爪先生の書物の出版があまりに連続して出版されるのでやや満腹感が出てきた。後半で佐藤氏による外交の裏側の解説は著者ならではの経験、知識が披露されて興味深い。

  • 地政学のあたりは全くついていけなかったので、もっと勉強が必要だなぁと改めて思う一冊でした。

    また、日本の教育についても(著者ほど深くは考えられていないですが)共感する部分は多かったです。

  • 現代の国家観について非常に冷静に読み解いているように感じた。
    現代においてあらゆる分野は互いに影響を及ぼしあうので分野横断ができることが望ましいと思っているが、ここまで多様な分野について議論できる人がいるのかと驚いた。

  •  現代が「分岐点」というところが、本書の位置。世界史について書かれたものではない。

  • ちょっと疑問のの頃ところもあるが、おもしろい。
    本論とは違うが、体言止めや単文についての記述、なるほど。。納得。

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著者プロフィール

橋爪大三郎(はしづめ・だいさぶろう):1948年生まれ。社会学者。大学院大学至善館教授。東京大学大学院社会学部究科博士課程単位取得退学。1989-2013年、東京工業大学で勤務。著書に『はじめての構造主義』(講談社現代新書)、『教養としての聖書』(光文社新書)、『死の講義』(ダイヤモンド社)、『中国 vs アメリカ』(河出新書)、『人間にとって教養とはなにか』(SB新書)、『世界がわかる宗教社会学入門』(ちくま文庫)など、共著に『ふしぎなキリスト教』『おどろきの中国』『おどろきのウクライナ』(以上、講談社現代新書)、『中国共産党帝国とウイグル』(集英社新書)などがある。

「2023年 『核戦争、どうする日本?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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