22世紀の民主主義 選挙はアルゴリズムになり、政治家はネコになる (SB新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784815615604

感想・レビュー・書評

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  • 「22世紀の」と「少し先の未来」を示唆しながら、「将来に向けた問題提起」を試みる内容であると思う。
    所謂“民主主義”というモノが「何か行き詰って、システムを完全に作り直すようなことでも考えるべきなのでは?」ということが本書の論なのだと思う。
    「若い人が選挙に…」と言ってみて、実は“若い人”という層が人口の中に占める割合はそれ程高いのでもなく、20歳代の人達の政党支持の傾向は60歳代の人達と大差も無いので、若い人が少し積極的に投票をするようになったとして、現状と然程変わらない可能性が高いかもしれないという辺りから始まる話しだ。
    例えばネットの通販を利用した経過が在ると、閲覧したモノ、購入したモノの履歴に基づいて、広告として関係する商品が閲覧出来るように観ている画面に出て来る場合が在る。こういうことをするのが“アルゴリズム”というようなモノだ。
    或いは、世の中の様々な課題に関して、課題毎に人々の意識というような情報収集を広く行って、“アルゴリズム”というような手法で「より好い」と見受けられる選択肢を見出し、それを淡々と実行する仕組みを創れば好いのではないかというのが本書の論だ。そういうようになると、現在行われているような選挙は無用になり、更に政治家は猫でも虫でも、何かのキャラクターでも据えておけば事足りてしまうようになるのではないかということだ。
    現行の選挙が「事を単純化し過ぎていないか?」というように思う場合は在る。“〇=是”か“×=否”かで単純化するような、一点で争うような選挙が繰り返されて、何が如何いうように好くなるのか判らないというような感じは、既に在るのかもしれない。
    こういう大胆な問題提起というようなモノは、大切な「考える材料」になるように思う。そういう意味で広く御薦めしたい。

  • (全ページ読破した書籍のみ、減点方式でレビューを投稿しています)

    まず最初にお伝えしたいのは、著者は学術論文に倣って、内容を凝縮した要約を「はじめに」の中に入れてくれています。そしてその全文が試し読みで確認できますので、一度ご覧になってみて下さい。
    要約を読んで、もっと知りたい、あるいは著者の文体が好きだと感じたなら、損はしません。買いだと思います。逆に要約を読んで、つまらない、妄言だ、と感じるなら読むのはやめましょう。
    理由として、本書は「要約にある内容を、112個にも及ぶ膨大な脚注に裏付けされたデータと理論で、独特かつ辛辣な切り口で断じた本」であるため、合う人にはトコトン合うし、合わない人には神経を逆撫でされるだけだからです(ちなみに私はトコトン合う側でした)。

    さて、本書は第一章で「民主主義の没落」を明らかにし、続く第二章で「現状の民主主義の改善案」、第三章で「現状の民主主義からの逃避」を語ります。
    そしてそのいずれもが有効ではない手立てであることを示し、最後の第四章で、著者の示す新しい選択肢である「無意識データ民主主義」を説く、という内容で構成されます。

    そしてこれを「革命」と称する訳ですが、ここに少し違和感を抱きました。

    読んでいると分かりますが、この無意識データ民主主義とは、例えば私たちが「無意識データ民主主義に移行しろ!」とデモを繰り返して実現するものではありません。
    どちらかというと過去にスマートフォンがもたらした革命に近く、技術が開発されたら自然に起こるようなものです。
    「選挙は古い手法だ」→「だから革命しなくてはならない」までは分かりますが、その続きが「アルゴリズムが完成するまで待ちましょう」なので、結果として「ただ有権者のモチベーションを下げただけ」だよなあと思いました(ここで星を一つ減らしています)。

    ただしこれは逆に言えば、「そういう時代が来るのかもしれない」という程度の気概で読めば良いということで、つまりは「読み物として割り切って読むが吉」と私は結論づけました。
    結局「その時」が来るのを待つしかなく、著者ですらもそれが直近でないと理解しているであろうことは、“22世紀の”という消極的なタイトルが付いていることからも推測ができます。

    であれば本書の評価において、「具体的な実行策は」「アルゴリズムを決め方は」「個人のプライバシーは」と無意識データ民主主義自体の欠点をあれこれと論う意味はほとんど無いでしょう。
    それは「今後はインターネットで買い物が出来る時代になる」という意見に対して「個人情報を抜かれちゃったらどうするの!」と騒ぎ立てるようなもので、結局は実現段階で考えるべきことです。

    「今後来る(かもしれない)新しい民主主義の形を、イエール大学の助教授から風刺やユーモアを交えて格安で教えてもらった」と考えると、滅茶苦茶得した気分になりませんか?
    そういう観点で読むと、本当に秀逸な本だと感じますし、私は読んで良かったと思います。

  • 成田さんが独自の発想で、資本主義と民主主義について考察し、将来ひょっとしたらこうなるかもしれないというビジョンを描い著書。
    選挙は、民の無意識のデータ集積で行われ、最適なアルゴリズムで選ばれる政治家を選出するような未来を想像できますか?成田さんの発想がユニークでありつつ、実現できそうな技術的な裏付けも披露しつつ、展開される文書なので、実現性が高そうな気がしてくる。
    前半の民主主義国家である国々の経済は低迷しており、民主主義から遠くにある国の方が経済成長しているというデータも興味深い。
    資本主義も民主主義も疲弊しているというデータ的な裏付けがあり、これからの社会はどうあるべきなのか不安に感じる。だが、それに対する答えは誰も持ち得ない。でも、何もしないでいいのですか?という問いから生まれた本だと感じた。

  • 無意識民主主義いいな。私は政治の知識も乏しく、非選挙人のこともあまり知らない状態で、とりあえず投票しに行ってしまうから。
    アルゴリズムが勝手に自分の民意を汲み取って、それが気がついたら実行されてるなんて世界があれば嬉しいな。

  • 私が頭悪いから何も入ってこなかった。文字追ってただけ。だから⭐️一つは悪いんだけどね。正直、アルゴリズムの意味わかんないし。悲しい時ーのお笑いの人の体操しか思い浮かばない。

  • 成田悠輔流の毒舌とユーモアを交えながら、民主主義に対する我々の固定観念を打ち壊してくれる本。
    民主主義や選挙の未来についてさまざまな可能性が示唆されているが、どれも荒唐無稽ゆえ読み進めているうちに成田氏に担がれているのか?という気さえしてくる。そう思わせるような軽い語り口の裏にある信念こそが、本書ひいては成田氏の魅力なのかなと思ったり。

    本書の白眉は第4章・構想だろう。成田氏自身は「素人の妄想」と言うが、新書ではまず見ない丁寧な脚注が付されており、見る限り氏の言う無意識民主主義、あるいはアルゴリズム民主主義はそれなりに真面目に検討されてきた概念のようだ。
    投票だけでなく検索履歴や監視カメラの映像などの無意識的なデータから「民意」を抽出してアルゴリズムに入力し、選挙に代わって最適な政策決定を「出力」するというのがアルゴリズム民主主義の大枠であり、これを成田氏は「一般意志の規制緩和」と表現している。

    まあ頭の固い文系の人間からしたら、無意識的なデータを有権者の意思表示たる投票と一括りにするとはけしからんとかデータの抽出方法や処理方法で必ずや不正が起こるとか、あれこれケチをつけるのは簡単だろう。
    しかし現在の選挙民主主義がどれだけの惨状を呈しているのかを思えば、そうした弊害も現状と大して変わりないのかもしれない。
    いつの時代も世の中を変えるのは理系による技術革新で文系は後からあれこれ口を出すだけ、などとよく言われるが、ついには選挙さえも科学技術によって人間の手を離れうる時代が来た。それはなんとなく寂しい、なんて考えは、未来世界の到来を遅らせる妄言なのだろうか。

  • 大したことは書いていないが、現代の政治状況の流行り的なのは追える
    初心者におすすめ

  • しばしば炎上させにいくような態度の人は苦手なんですが一冊はということで。紙の投票での選挙による民主主義が機能不全に陥っているのはその通りだろうしデータを適正に活用できる仕組みが整っていけば面白いとは思う。何をどこからというイメージはあまり湧かないですが。

  • 著者が言う通り、本書に提案されていることが実現する可能性は物凄く低いのであろう。

    ならば教育の場でこんなことは問えないか。従来は「民主主義の欠点は何か」これからは、「ではどうすればその欠点をなくせるか」

  • 確かにそうだと納得と共感。一方で人は、バイアスがかかるからな~と、あきらめている自分。

    本を読んでいるというよりも、レポートを眺めていたら、あっという間に読了。といった感じ。

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著者プロフィール

夜はアメリカでイェール大学助教授、昼は日本で半熟仮想株式会社代表。
専門は、データ・アルゴリズム・ポエムを使ったビジネスと公共政策の想像とデザイン。
ウェブビジネスから教育・医療政策まで幅広い社会課題解決に取り組み、企業や自治体と
共同研究・事業を行う。混沌とした表現スタイルを求めて、報道・討論・バラエティ・お
笑いなど多様なテレビ・YouTube番組の企画や出演にも関わる。東京大学卒業(最優等卒業
論文に与えられる大内兵衛賞受賞)、マサチューセッツ工科大学(MIT)にてPh.D.取得。
一橋大学客員准教授、スタンフォード大学客員助教授、東京大学招聘研究員、独立行政法
人経済産業研究所客員研究員 などを兼歴任。内閣総理大臣賞・オープンイノベーション
大賞・MITテクノロジーレビューInnovators under 35 Japan・KDDI Foundation Award貢献
賞など受賞。近著に『22世紀の民主主義:選挙はアルゴリズムになり、政治家はネコになる』
(SBクリエイティブ)。

「2023年 『ゴースト・ワーク』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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