ワーキング・ナレッジ: 知を活かす経営

  • 日本生産性本部
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  • Amazon.co.jp ・本 (372ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784820116974

感想・レビュー・書評

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  • 原著が出版されたのが90年代の末なので、20年以上昔の本になるけど、名著と薦められて読んでみた。属人的ではなく、会社という組織に知識を流通・蓄積させよという主張はもっともだが、実際にやるのは難しい。きっとロータスノーツ使えばナレッジマネジメント(キリッ)って感じで、いまのDXと似たような感じで本質は理解されずブームで終わってしまったんだろうな(と予想)。
    この頃はバブル崩壊後とは言え、まだまだ日本企業から学ぶところもあるという感じだったのだろう。一方、いまのDXは、バブル後に経営と情シス部門の乖離が進んだ結果の、日本特有の問題という面が強い。

  • 「今でも、みんな忙しすぎるのだから、仕事に加えてナレッジ・マネジメントをおこなう時間はないのである。ナレッジ・ワーカーに、時間があるときに教訓や経験の貯蔵庫(レポジトリー)を丹念に調べることや、自分たちの学んだことを暇なときに共有するのを期待するのは、きわめて非現実的というものだ。したがって、ナレッジ・マネジメントのプロセスを、重要なナレッジ・ワーク・プロセスに溶け込ませる必要がある。企業が知識を創造・収集・蓄積・共有・活用するやり方は、マーケット・リサーチャー、サイエンティスト、コンサルタント、エンジニア、マネジャーが毎日働くプロセスとよく融合させなければならない。」(p.viii)学校が「知識を創造・収集・蓄積・共有・活用するやり方は、」教員が「毎日働くプロセスとよく融合させなければならない。」
    「企業の組織知を源泉とする競争優位だけが持続可能であり、その持続性は、すでに持っている組織知をいかに効率よく使うか、そしていかにたやすく新しい知識を獲得するか、にかかっている。」(p.12)各府立高等学校は他の府立高等学校と競争しているのか?それとも府立高等学校総体が私立高等学校総体と競争しているのか?それとも都道府県間競争の一部であるのか?それとも高等学校というシステムが他のシステムと競争しているのか?その捉え方によって、「組織知」の「組織」の定義が異なってくる。ところで、これら知識社会に関する本を読んでいて感じるところであるが、知識社会の次には、知恵社会が来るであろう。知識による競争が永続的ないしは持続的なのではない。永続的なものは存在しない。
    「BPは、バーチャル・チームワーク・ビジネス・ネットワーキング・センターを、バーチャルなコーヒー休憩(ブレイク)談話室を週一回開くために設立した。」(p.56)このアイデアは、テレビ会議システムをつねに立ち上げておくという私のアイデアとその狙うところが一致しているかもしれない。
    「今日ほとんどのビジネスで、企業と従業員の間の勤務年数と忠実さに基づく旧式の社会的契約が色あせるにつれて、評判の重要性は増す一方だ。長く忠実な勤務とひき換えの長期雇用の約束が消えていくにつれて、自分たちの実証された知識・技能・能力に対する個人的評判を高めなければいけない、という強い圧力をあらゆるレベルの労働者たちが感じている。」(p.76)人事交流促進がなされて以来、長期にわたって同一校で勤務することがなくなり、ある意味で教員の人材市場が府立高校間に形成されてきた。その結果評判の重要性が高まってきた。現在の管理職をめぐる状況は過去の評判が悪影響を与えているのかもしれない。
    「買い手と売り手が会うことのできるバーチャルあるいはリアルな場の欠如は、知識の探索・創造・交換のための時間の不足と同じように、インフラの問題なのだ。ダウンサイジングとリエンジニアリングはどちらも、知識を探索し交換するための時間を少なくする傾向にあるので、知識市場インフラに損害を与えるだろう。」(p.98)多忙化の弊害である。特に最近は実感する。外部との接触を極端に減らさざるをえない多忙さである。
    「次の五つの経営原則によって、融合が有効に働くのを助けることができる。
     1 探し求めている知識の価値への意識と知識創造の過程へ投資する意欲を高めよ。
     2 融合の努力が効果を発揮するために欠かせない知識労働者(ナレッジ・ワーカー)を見つけ出せ。
     3 差異を争いの源と見ないで肯定的に捉え、複雑な問題に対して単純な解答を求めずに、アイデアの複雑性と多様性に本来的に存在する創造性の可能性を強調せよ。
     4 共通のゴールに向かって知識創造を促進し、報酬で報いるために、知識創造の必要性を明確にせよ。
     5 知識の真の価値を反映するために、単なるバランス・シートに比べてより完全な成功の測定方法や指標を導入せよ。」(p.130)人事交流促進により、府立高等学校人材融合の物理的条件はできた。しかし、何らかの条件不足で、その融合が知識創造と完璧には結びついていない。その欠けている条件を考えるうえでこれらの五原則は有効そうである。その欠けていたものとは、人事交流促進は各学校活性化のためであり、活性化にはその活性化につながる知識創造が不可欠であるとの方針が欠けていたのである。融合すれば知識が生まれ活性化されると考えていた。あるいは融合と活性化を結びつけるプロセス(=知識創造)について無関心ないしは無知であった。融合と活性化を結びつける知識創造プロセスにおいて有効かつ必要であろう具体的原則は、1の「投資」と4の「報酬」、5の「指標」であろう。この際の「投資」とは、大阪府の財性事情を考えれば、主に時間の投資である。「報酬」も時間中心とならざるをえないであろう。教員個々の投資を促進する、そのインセンティブとしての報酬、報酬を与えるに際しての公正さを担保する指標が必要であるということである。
    「いかなる形式化プロセスにおいても、ローカルなニーズとグローバルなニーズとのあいだには、本質的な緊張関係がある。・・・。必要なのは、システムを作動させるのに充分なほどの統一性なのだ。目標は、組織内の知識を調和させることであり、同一化することではない。」(p.177)編集の必要性
    「挑戦的な課題は、知識を形式化し、なおかつその特有の性質を保持することであり、知識が急速かつ柔軟に変化するのに形式化の構造を合わせることだ。すでに論じたように、物語やレトリックの形をとる戦略は、その任務のための最も豊かで柔軟なアプローチを提供する。」(p.178)知識の形式化とは知識を商品化し交換価値とすることであろう。商品化は知識を疎外する。そのことを認識したうえで、知識の使用価値を減じないように工夫する。
    「最も興味深い新しい知識専門職は、知識を統合する人(ナレッジ・インテグレーター)、図書館員(ライブラリアン)、総合する人(シンセサイザー)、報告書作成者(レポーター)、編集者(エディター)である。」(p.219)特に編集者は知識データベースと知識メーリングリストを有益なものとするために必要不可欠であろう。
    「CKO(チーフ・ナレッジ・オフィサー:角田注)の任務のなかで特に次の三つが重要だ。すなわち、知識文化を創造すること、ナレッジ・マネジメントのインフラを構築すること、そして投資全部を経済的に回収することである。」(p.230)投資の回収の指摘は重要である。
    「CKOには、(上級役員の一般的な資質と技能(スキル)に加えて)、次のような資質が望ましい。・・・。
     ●ナレッジ・マネジメントのなんらかの側面すなわち知識の創造、流通、活用のいずれかについての深い経験を持っている。
     ●知識志向の組織と技術(図書館、グループウェアなど)に精通している。
     ●プロとしての能力に直接関係する高水準の『理解能力』を持っている。
     ●ビジネスの主要業務をこなせる(そして理想的には実体験がある)。」(p.232)学校においては図書部を改組してナレッジ・マネジメント部とし、その中にCKO的な人物を配置するのが適切であろう。
    「ナレッジ・マネジメント・プロジェクトは、組織目標を達成するために、人間・技術・知識コンテンツを組み合わせて、知識を実務的に活用する試みだ。」(p.283)
    「知識貯蔵庫(レポジトリー)を作る試み、知識へのアクセスを改善する試み、そして知識文化・環境を良くする試み」(p.287)ナレッジ・マネジメントを軌道に乗せるためには、この三つの試みが必要なようだ。
    「ナレッジ・マネジメント・プロジェクトの成功をどう測定するか、という問題」(p.296)ナレッジ・マネジメントが教育活動そのものに貢献するかどうかは疑わしい。ナレッジ・マネジメントを導入すると宣言することで、①職場を離れた研修の活性化、②報告書公開への抵抗を克服する、の2点を達成できれば上等と捉えるべきであろう。表向きは成功の測定は、公開された報告書に基づき府民によって行われる、ということになろうか。
    「我々は成功の度合いには二つあることに気づいた。最も印象的なタイプは、根本的な企業変革をともなっていた。・・・。成功の他のタイプは、ある限定したプロセスや職能に限った業務の改善をともなっていた。」(p.298)表向きは前者を目標とし、実際は後者(自宅研修の改善)を目標とするのが得策であろう。
    「ナレッジ・プロジェックトの成功に影響を与える・・・最も重要ないくつかの要因を、我々は直感的に感じている。残念なことに、それらは構築するのが最も難しい。すなわち、知識志向の文化、人間的インフラ、経営上層部の支援(特に組織変革を目的とする場合)である。・・・。これら三つの要件を欠いている企業は、知識を志向するたった一つの職能部門あるいはプロセスの効率と効果を目的に、小さなスケールでナレッジ・マネジメントを始めるべきだ。」(p.313)大阪府政全体は無理として、まず身近なところから。

  • 友人の紹介でアクセンチュアのパートナーとお会いした際に薦められて読んだ本。
    著者はナレッジマネジメントの教祖的存在なのだそうです。

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