- Amazon.co.jp ・本 (133ページ)
- / ISBN・EAN: 9784820802938
感想・レビュー・書評
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メジャーな昔話ではなく、インド、中国、イラン、ニュージーランド、ジャマイカ、アメリカインディアン、スウェーデン、ポーランドの昔話。
「この本には、ヨーロッパの人工的な文明の世界はでてきません。自然をきり開いて人工的な町を作り上げた国の宮殿の中でくり広げられる王子さまや王女さまをめぐるロマンスや冒険もでてきません。この本には、わざとそういうお話をえらばないで、もっと自然と人間が親しくしていた時代、あるいは、今でも、そういう土地の、おおらかなお話がえらばれています。どうか、人間のおおらかな世界を楽しんでください」
本文あとの「昔話はどうやって生まれたのか」より引用。
そのとおりだと思います。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
民話は間違いないシリーズ第二弾。
こちらは世界のいろいろな地域の民話を収録しています。
「力くらべ」インド、「おひゃくしょうとエンマさま」中国の漢族、「マメ子とまもの」イラン、「マウイのしごと」ニュージーランド、「アナンシと五」カリブ海のジャマイカ島、「夏をとってくる話」アメリカ・インディアン、「あわれなあくま」スウェーデン、「サヤエンドウじいさん」ポーランド。
中でも、インド、漢族、ポーランドの民話が印象深いです。
インドの民話「力くらべ」では、まず人間の大きさがまちまち。湖の水を一息で半分も飲んでしまうような力持ちの大男たちが力くらべをするのがお母さんの掌の上というスケールのでかさ!そしてそのお母さんも周りの物もみんなひっくるめて大きなふろしきに包んで頭の上にのっけてしまう娘さん。娘さんは、さらに町ごとふろしきにつつんで、大きなスイカの皮の中に押し込んで、それをまくらにして寝ていると、眠っているうちに大洪水が押し寄せ、スイカはある岸辺へ打ち上げられて、そこから新しい世界が。なんと!天地創造の話であった!びっくり!
ちなみにスイカの中で暮らしたので、人間の大きさはだいたい同じようになったということです。なんだそりゃ!インド民話すごい!
「おひゃくしょうとエンマさま」では、エンマさまと手下の小鬼がとにかくせこい。エンマさまって、人間が地獄に行くか天国に行くか見極める偉い人じゃなかったっけ?それなのに、貧乏なお百姓のお供えがしょぼいからと、お百姓を酷い目にあわせようとします。ですが、エンマさまたちの話を聞いていた番人のじいさんの助けを受け、お百姓は、小オニの呪文を逆手にとって、利益を得ます。ここらへんのやり方が秀逸で、とっても面白い!次はどんな植物を植えるのかな?って、読みながら一緒に考えたら楽しいと思う。最後まで、お百姓は小オニの呪文をうまくかわし、最後にはたくさんのコメを得られるところが秀逸でした。それにしても、中国のエンマさまは、日本のエンマさまと違うのかしら?(それとも、私のエンマさまのイメージが「鬼灯の冷徹」なのがいけないのかしら?)
「サヤエンドウじいさん」では、サヤエンドウじいさんが、何度背かれても、ずーっとイェジーじいさんを守り続けるところに、ものすごく優しさを感じました。
まず日本の民話だったらありえない。二回目か三回目くらいには、イェジーじいさんは痛い目を見ていたと思う。それなのに、最後の最後までずっと助けられるイェジーじいさんに、文化の違いを感じました。サヤエンドウじいさん優しすぎか。
でも最終的には、イェジーじいさんも改心して、ホラを吹かなくなったのでよかったのかな。そもそも、ホラ吹きということが、人を傷つけたりするような非道なことではなかったから、サヤエンドウじいさんもずっとイェジーじいさんを救い続けたのかもしれないですね。自分の孫のことになると、ころっと宗旨替えしてしまうイェジーじいさんの現金さ(?)もなんだか笑えます。
やっぱり民話って面白い。