資本主義と自由 (日経BPクラシックス)

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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784822246419

感想・レビュー・書評

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  • ミルトン=フリードマンの代表作。これが45年も前に書かれたものであることは驚きです。まだ通貨の固定相場/金本位制が当然とされていた時代(フリードマンは本書の中でこれに対して変動相場への移行を論理的に推奨)の話ですから。

    いくつか本の中から目に付いた内容を引っ張ってくると、
    ・恣意的な中央銀行の介入の批判
    ・不況期の財政政策の効果への疑問(反ケインズ)
    ・関税撤廃(軽減)、保護貿易反対
    ・教育バウチャー制度提案
    ・職業免許制への批判(医者免許含む)
    ・最低賃金規定への批判
    ・負の所得税提案
    ・企業のCSR活動への批判
    ・郵便事業の民営化
    ・政府による有料道路への批判
    ・政府による年金運営への批判
    などなど、現代日本で先鋭化されている諸問題に関わるテーマが盛りだくさんです。
    根底に流れるのは、自由主義的思想(リバタリアン)の原理原則への忠誠です。言ってみれば「民でできるものは民で」というやつですね。

    自由主義者は、弱者切捨て、格差社会の元凶とも思われているところもありますが、それを口にする人はその前にこの本を読まないといけないんだろうなと思います。機会の平等は保持されるべきだが、結果の平等を担保しようとしてはならない、というようなことがはっきり書かれています。

    今でも有効な古典、と呼ぶにはあまりに現代的にすぎる名作。
    (結論には好き嫌いはあると思いますが)

  • ジョン・スチュアート・ミル『自由論』、フリードリッヒ・ハイエク『隷従への道』と並ぶ自由主義(リバタリアニズム)の三大古典の1冊
    序章
    第1章 経済的自由と政治的自由
    第2章 自由社会における政府の役割
    第3章 国内の金融政策
    第4章 国際金融政策と貿易
    第5章 財政政策
    第6章 教育における政府の役割
    第7章 資本主義と差別
    第8章 独占と社会的責任
    第9章 職業免許制度
    第10章 所得の分配
    第11章 社会福祉政策
    第12章 貧困対策
    第13章 結論

  • サブプライムローン危機以降、何かと悪者にされる市場原理主義ですが、これを読めば、その評価がまったく的の外れたものであることが分かります。

  • 「自由」へのこだわりがずっしりと響いてくる。
    かといって、現在よく言われている「自由主義」の「弱者切り捨て」とは一線を画す印象。
    「社会主義」と「自由」は相容れない。

  • ●未読
    ミルトン・フリードマン:ノーベル賞経済学者。
    ◎「スラム化する日本経済」p.149で紹介。
    《著者フリードマンはノーベル賞経済学者。1962初版。「資本主義こそ、社会的不平等解消の特効薬」と主張する内容。世界が社会主義化することへの恐れと焦りが、著者を極端な資本主義礼賛論へと追いやったが現在(2009年)では、まさにその逆の方向に力が働きそうになっているように見える。「社会主義と自由」と言う本をそのうち誰かが書くかもしれない。まさか「全体主義と自由」(全体主義〜統制・監視)はないだろうが、そうならないように努力しないと、さみっとは「またやるの」どころか、「もうやれない」分断と統制の世界の到来となってしまう。
    *最悪の事態がきても、それが恐ろしいあまりに統制経済化と『自分さえよければ』主義による囲い込み、そして「引きこもり」の方向に向かう事の内容、意識の共有を図っておくべきである。》


  •  リーマンショックにより世論から反感を買っている新自由主義を唱える側の経済学者の大家の一人、ミルトン・フリードマンの著作のうちのひとつ。

     全ては自由から始まる。自らの個々人の自由を実現するためには、今(書いている当時)の政府は強大で、制限的すぎる。政府は、市場が上手く機能するための最低限のルール設定とそのルールを破ったものへの制裁程度が限界であると説く。そして一部の例外を除き、市場での自由な競争を望むべきである。また、国立公園や平時の徴兵制、公有公営の有料道路など民営化を唱えたものは多岐にわたる。

     一部には、教育の自由化など、普通に考えたら中々民営化を考えないようなものへの言及もある。さらには、ケインズの投資理論の現実を説き、新自由主義への舵取りをする。


     今やリーマンショックのせいで酷な評価を受ける新自由主義であるが、まだまだ世界の根幹を構成するだろう。そして格差社会と言うが、それと新自由主義の関係はあまりないだろう。感想レベルだけど。。

  • 図書館

  • 著者は誰もが知るミルトン・フリードマン。
    アメリカの競争的市場を信奉するシカゴ学派の主要人物。
    いわゆる純粋自由主義者に近い。


    本書『資本主義と自由』は1962年に出版されたものである。
    当然、出版当初も、世間に好意的に受け入れた本ではなかったようだ。
    そして、当然今なお主流派からは異端視されているわけだが、彼の理論も一理ある。
    変動相場制、税率区分の簡素化、政府機関の民営化といったフリードマンの政策提言は、いまや世界の常識となっていることこそがその証明ではないか。
    (本の要所要所でアメリカ政府の政策を批判しているのにはウケた笑)


    本書では、一貫して市場原理を崇拝しており、競争自由市場の実現こそが
    現行の差別・不当な格差などを解決し、真の「自由」社会を実現できると考えている。
    過剰な(彼にとっては不当な?)政府による市場への介入が、あらゆる分野において
    自由・発展の阻害要因となっていると主張している。

    うーん

     彼は非常に論理的に進めているのだが、学術論文ではないためか?、私が自由主義者ではないためか?、「ちょ、待てよ!」となる部分が多々ありました。というのは、理論上は間違ってはいないのだが、彼は「市場」を過信しているため、現実的ではないということです。彼の主張通りに市場が機能すれば別ですが。
     とはいえ、もちろん彼の「大きな政府」批判に同意する分野もありました。政府の介入が全くもって社会に利益を還元出来ていないこと、場合によっては市場の混乱・不利益を生み出す介入がなされていることは言うまでもない。
     このように、政府の市場介入を激しく批判している彼ですが、市場が必ずしも有効的に機能しないことを認めている。第2章・自由社会における政府の役割には「自発的な交換を通じた活動では、政府がそのための下地を整えることが前提とされる。具体的には、法と秩序を維持し個人を他社の共生から保護する、自発的に結ばれた契約が履行される環境を整える、財産権を明確に定義し解釈し行使を保障する、通貨制度の枠組みを用意することが、政府の役割となる。」(本書、p.73)とあると記述されている。
    彼は、「筋の通った自由主義者は、けっして無政府主義者ではない。」(本書、p.85)とはっきり書いており、世間一般に批判されているほどの偏った人間ではないのかも。
    まぁ、免許制度などについては行き過ぎた感があるが・・・


    ---
    世界的大不況に陥った今、行き過ぎた「資本主義」に批判が集中しがちであるが、私見としては、あまりにも短絡的な批判に過ぎない。上記にもあるとおり、市場が必ずしも有効的であるとは言えない。今回の不況も、アメリカの金融商品を世界にバラ撒いてリスク分散させようとしていたこと、不景気になるとバブルを生み出そうと政府が市場介入していたこと、いろいろな要因がある。おそらく現行の自由市場と奇妙な政府介入の最悪な事例であろう。しかし、だからと言って安易に自由主義批判に走るのはいかがなものか。もちろん、今まさに「大きな政府」が成功している北欧の事例もあるが、必ずしもすべての国に導入すればいいというわけではないということを確認したい。
    自由市場の実現による急成長という事例もあるかと。
    まぁ、こんなこと言っても、だったらどうすれば?ということができない自分。笑
    要は、フリードマンの自由主義に賛同できないが、かといって自由主義批判に走るつもりもないという・・・笑

    ---
    私自身、経済学に関してまだまだ未熟者であり、このような古典を安易に批判できる考えは持ち合わせていない。また、本書は私に新しい視点・問題意識をもたらしてくれたという意味では”今の私にとっては”良書であった。
    (実際、マンキューが推薦する本ってくらいなので、いい本なのでしょう。)
    何より、本書はミル『自由論』、ハイエク『隷従への道』と並ぶ自由主義(リバタリアニズム)の三大古典の1冊であり経済学を学ぶ者にとって必読書であると考えている。
    そうした意味で、★5つと評価する。

  • フリードマン御大。今なお切れ味抜群。

  •  自然失業率やマネタリズムの話で読んでいた本に度々名前が登場していたミルトン・フリードマンの著書。本書は小さな政府を提唱し、市場に出来る事は市場に任せる。市場に出来ない事「だけ」政府がやるべきだという自由主義(現在、一般的に使われている自由主義とは意味合いが異なるが、フリードマンは自分達こそが自由主義だと言っている。)について書かれている。

     「最低賃金法は貧困層を助けるのではなく、逆に追い詰める」、「貧困対策には負の所得税が有効である」など半世紀以上前に書かれた本とは思えない位に考えさせられるアイデアが沢山詰まっている。教育バウチャー制度は日本でも導入を検討しても良いのではないだろうかと思う。

     この本はタイトルの通り、フリードマンが定義する自由について様々な事象について政府が行うべき部分と、市場に任せる部分を定義している。彼の定義する自由とは詰まる所、他人の自由を害さない限り、取り得る最大の自由である。特徴的な言葉に「自由を信奉するなら過ちを犯す自由も認めなければならない。」という言葉がある。

     例えば、年金制度。年金は若いころに積み立てを行い、老後に備えるものであるが、現在の日本の様に強制的に積み立てを行うのは好ましくないとフリードマンは言っている。積み立てを強制されるのは、若い頃に浪費する自由を政府が奪っているとの事。(但し、若い頃に浪費してそのまま老後生活出来なくなると、結局政府から生活保護を受ける為に今度は外部性の話が出てくる。)

     個人的には職業免許撤廃など行き過ぎているのでは無いかと感じてしまう部分もある。例えば医師免許を撤廃した際にフリードマンは民間の病院審査機関が出来ることで市場が形成されていくと書いている。長期的に見ればその方向に進むかもしれない。(但し、病院と審査機関の利害関係を断ち切る必要が生じると思われる。)但し、そこに行き着くまでに所謂「ハズレ」を引いてしまった患者はどうなるのだろうか。病院審査機関による監視及び評価が形成され、成り立った後であれば本書に書かれている通り、どこの病院を選ぶのかは患者の自由であるし責任であるが、発展途上の段階でそれを患者に選ばせるのは今以上に博打に近いし、人柱以外の何者でもないと感じる。他の学問にも往々にして見受けられるが、マクロな視点で正しい方向性を示すあまり、ミクロな部分の犠牲には目を瞑っている気がしてならない。

     そんな感じで本書で描かれている自由を私は諸手を挙げて賛成する訳ではない。でも、この本はそれで良いのだと思う。あくまで本書はフリードマンが考える自由、政府と市場の役割分担をフリードマンの視点で描いているだけなのだから。これを受けて、読んだ人が政府には何を任せるか、市場をどこまで信じるかを考える切欠になれば良いのではないかと思う。だからこそ、「大きな政府」が必要だと感じている人にも読んでもらいたい。そして、考えて議論していく事が大切だと思う。

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