資本主義と自由 (日経BPクラシックス)

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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784822246419

作品紹介・あらすじ

世界の構造改革のバイブル。1962年初版、フリードマンが最も愛した著作、待望の新訳。郵政改革、教育バウチャー、規制撤廃など絶対自由主義の政策の意味を説いた名著。

感想・レビュー・書評

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  • ハイエクの「自由の条件」と並ぶフリードマンによる新自由主義の古典的な著作。

    新自由主義的な政策は、私にとっては仮想敵みたいなものなのだが、イメージだけで批判しても仕方がないので、一応、読んでおこうと思った。

    原著は1962年だが、ベースとなっている講義は1955年ごろとのことということなのだが、今読んでも古びていない。どっちかというと批判的に読んでいるのだが、説得力は結構あって、ちょっと納得したところもいくつもあった。

    どういう思想であれ、それを生み出した人の思考は、深い。単純に経済学者が、なんでもかんでもマーケットメカニズムに任せておけば大丈夫みたいなことを言っている訳では全くない。

    フリードマンの思考は、哲学的には、リバタリアンという自由にもっとも価値をおく立場。経済活動だけでなく、さまざまな活動、思考などの、できるだけ人間が自由に選択できるようにしようとしている。なので、できるだけ政府の役割を最小限にしようというのが基本的なスタンス。

    そこからスタートして、現在、政府、規制などなどが関与している活動をさまざまな分野において検証しながら、なんらかの政府の活動が可能なものとそうでないものを仕分けていく感じ。

    その際のロジックの切れ味は鋭く、フリードマンの主張に賛成しないまでも、彼の土俵につい上がって、「いやそこまではできないだろう、このあたりじゃないか」みたいなことを考え始めている自分がいたりする。

    今となっては、新自由主義の政策が破壊的な結果を生み出したかを知っているわけだが、それを単にお役御免にしてしまうのではなく、じっくりと彼の主張を吟味して、自問自答することが必要かな?

    とくに個人の自由より、集団での利益が重視され、事細かな管理、統制、規制に向かい個人の選択を制限する方向に進みがちな日本においては、フリードマン的な思考は大事なものをもっているかもしれないと思った。

  • 経済学部 上野勝男先生 推薦コメント
    『アメリカ流経済学の思想とロジックを明快にまとめた書物。グローバリズムと市場原理主義(もしくは新自由主義、あるいは「ネオリベ」)は、現代世界の抗しがたい一大潮流。市場原理主義に賛成するにも反対するにも、必読の書です?』

    桃山学院大学附属図書館蔵書検索OPAC↓
    https://indus.andrew.ac.jp/opac/book/478267

  • 市場の原理に委ね、政府の介入余地を減らすことが、個人の自由度を高める。政府の施策は利益の偏りが生じる。少し難解でした。

  • 現代経済において必ずしもマッチしないところはあるが、この本の内容と考え方は理解しておいた方が良いだろう。

  • シカゴ自由学派のフリードマンは、経済活動への政府の介入を最小限にとどめ、自由な経済活動を主張した、シカゴ経済学派の中心人物として高名です。
    本書を読むと、個人的自由というものに対する透徹した考え方がひしひしと伝わってきます。例えば、次の一節。
    「自由人は、国が自分に何をしてくれるのかを問わない。その代わり、自分の自由を守るために、政府という手段を使って何ができるか、を考える」

    続けて彼は、こう言います。「権力はよからぬ意図を生みやすく、また磁石のように、悪しき意図を持つ輩を吸い寄せる」。フリードマンが、個人の自由意志に絶大な信頼を寄せていたことは、「偉大な業績を生み出したのは、個人の才能であり、大勢に逆らって貫き通された不屈の意志であり、そして個性や多様性に寛容な社会であった。」という表現からもよく分かります。

    一方、企業の役割が株主価値の最大化以外にない、と言い切ってしまっていますが、今日企業に期待される経営におけるESGの重要性やSDGへの貢献への要求の高まりは、本書が執筆された1962年時点ではまだ予測不能な現象だったのでしょうか。

    フリードマンの経済、政治の在り方に対する主張は、今日の米国のリバタリアニズムにも大きな影響を与えているような気がします。別の本の感想でも書きましたが、当人の孫がシーステッドという洋上自由都市を提唱しているというのは、一家に自由信奉の精神が脈々と受け継がれているからでしょう。

  • 本書が出版されたのは1962年。

    本書第2章に、政府がやる理由がない政策が14列挙されている。
    ●農産物の買取保証価格制度
    ●輸入関税または輸出制限
    ●農産物の作付面積制限や原油の生産割当てなどの産出規制
    ●家賃統制
    ●法定の最低賃金や価格上限
    ●細部にわたる産業規制
    ●連邦通信委員会によるラジオとテレビの規制
    ●現行の社会保障制度、とくに老齢・退職年金制度
    ●事業・職業免許制度
    ●いわゆる公営住宅および住宅建設を奨励するための補助金制度
    ●平時の徴兵制。
    ●国立公園
    ●営利目的での郵便事業の法的禁止
    ●公有公営の有料道路

  • アメリカのアダムスエクスプレスのかわりに法律で、政府の大陸横断郵便事業を優先させた。アダムスエクスプレスは今は投資信託会社。
    国立公園は、入場料で運営できる。

    商品本位制(金など)は通貨供給量を増やせない。

    義務教育は公立学校を廃止して教育バウチャーを配る。小中学校は公立と私立の共存が望ましい。

    市場によって差別が減る。個人の属性から生産物を切り離せる。
    公正雇用慣行法
    言論の自由はなぜ望ましか。何が公正化を多数派が決めるような社会はよくない。

    利益集団の声は通りやすい。消費者の声はまとまらない。

    医者の免許を開放する=法的責任と賠償責任が課されれば医療はもっと発達する。

  • 新自由主義の教祖的存在のフリードマンの思想を知りたくて読んだ。全てとまではいかなくてもほぼ全てのことは政府に任せるより市場に任せた方がうまくいく、政府はあくまで外部効果があまりに大きすぎて市場に任せることが難しい問題(とは言ってもそんなものはほとんどない)についてのみ動くことと、自由主義を守るためのルールの徹底のみに注力すべきという主張。負の所得税、教育バウチャー制、特定産業に対する支援策の廃止など、どちらかと言うと自由主義者の自分としては共感できる点が多々あったが、社会福祉政策に限ってはアメリカの健康保険の問題を見ていると果たして本当に自由主義が正解なのかは疑問が出る。また、法人税率ゼロ化に至ってはその効果がまったく理解できなかった。アダムスミスが説いたように自由競争が成り立つためには人間が皆、道徳的な存在になることが大前提なのだが、今の世の中でそんな理想論が通るとも思えない。ただし、日本政府の非効率は目に余るものがあるので、やはり一度全てを市場に任せる社会実験をしてもらいたいものだ。

  • 内容については概ね賛成ですが、議論するポイントがたくさんあります。

    1.この本を一言で表すと?
    ・具体例を挙げながら、「自由」の必要性、政府による規制の有害性を説いている。でも乱暴に聞こえる部分もある。

    2.よかった点を3〜5つ
    ・最低賃金法の導入は結果的に失業を増やす(p326)
    →木を見て森を見ずの典型例ではないかと感じた。
    ・<老齢遺族年金>要するに現行制度では、若者から税金をとって裕福な高齢者を補助しているのである。(p332 )
     →日本の現状と同じ。今すぐ見直し必要。
    ・教育バウチャー(p183〜)
     →供給者より消費者に補助を出すのは合理的な考え。西成区で実際に始めているので効果を見てみたい。
    ・負の所得税(p347〜)
     →生活保護の支給額が最低賃金より高いと働かないほうが得になる、というモラルハザードを防ぐために合理的な考え。

    2.参考にならなかった所(つっこみ所)
    ・ヤブ医者が伝染病を野放しにする例(p272)
     →これに対する反論はないので医師免許制必要では?
    ・第三章国内の金融政策
     →〜71年までの金本位制度が前提となっているようなので話が古く感じた。

    3.実践してみようとおもうこと
    ・なし

    4.みんなで議論したいこと
    ・全体的に、本書の内容には賛同できますか?

    5.全体の感想
    ・主張にちゃんと裏付けがあるので納得感がある
    ・1962年の内容が現代にも通じるのは面白い。人類が進化していないのか?

  • 社会

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