- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784822249113
作品紹介・あらすじ
「Google+」のサークル機能開発の中心的役割を果たし、現在はFacebookに勤務する、ソーシャルメディア研究者でUXデザイナーでもあるポール・アダムス氏の著書「Grouped」が邦訳化!「インフルエンサー理論」に対して懐疑的な立場をとり、親しい仲間が情報伝達の鍵を握るという「グループ理論」を提唱。ソーシャルウェブの第一線で活躍する著者による、米国で高い評価を受けた1冊です。
感想・レビュー・書評
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ソーシャルネットワークは独立したグループが結びついて形成されているという考え方は本書における最も重要な主張。非情に影響力のある人物を探し求めるよりも、無数に存在する小規模のグループに注目し、彼らに焦点を合わせて戦略を練るべきなのだ。
アドバイス
大勢の人々に対して普遍的な価値をアピールするようなコンテンツをつくろうとするのではなく、小規模なグループに響くようなコンテンツをつくること。
情報が広く伝わるかどうかを左右する最も重要な条件は、影響力を持つ人物がいるか否かではなく、影響を受けやすい人物が十分に存在し、彼らが同じように影響を受けやすい人々と繋がっているか否かである。
新しい発想が普及する際、イノベーター+ハブが出発点となるが、広く一般にまで到達するためにはフォロワー+ハブを経由しなければならない。
イノベーターハブはつながりを数多く持つだけでなく、心理的ハードルが低い人々だ。彼らは新しい発想に数回触れただけでそれを受け入れる。もう一方のフォロワーハブはより一般的な存在で、つながりの数は多いものの、心理的ハードルの高い人々のことを指す。
意思決定の際にソーシャルネットワークを頼る傾向が強まるのに反比例して、専門家を頼る傾向は弱まっている。ましてや見ず知らずの他人を頼るという可能性はさらに減少するだろう。その代わりに頼られるのは、私たちの遺伝子に「助けが必要なときには彼らを頼るように」と刻み込まれている人々、すなわち心理的に最も近い人々である。
私たちは無意識をつかさどる脳に依存している
あらゆる判断において、無意識脳が膨大な分析を行い、その結果を「なんとなくこう感じる」という形で意識的に伝える。意識脳はそれを受け取って、最終的な判断を下す際に活用している。つまり理性は感情に依存する存在なのだ。
意識脳は大量の情報を処理するようには設計されていない
大量の情報の中で生きている関係上、私たちの脳は意識された情報を無意識の情報へと変換するように設計されている。
意識脳は、無意識脳が下した結論というインプットを得た上で、直近の短期記憶に基づいて働くのである。
よく思い出す記憶は、最も不正確になる
何かを思い出せば出すほど、その記憶は正確さが失われていくのである。
人間は細部ではなくて、主要な関係性を記憶する
私たちの脳は細かい部分ではなくて、物事と物事との関係性を記憶している。
人々は情報を欲しがるが、対立する情報がアタマの中に入ってくるだけで、処理がパンク状態になってしまう。この現象は認知的不協和として知られ、買い物をしているときに陥ることが多い。この状態になると、私たちは直前に抱いていた信念に近い選択肢を採用し、残りの選択肢は適切な分析もせずに捨ててしまう。
習慣が先入観を与える、難しいのは、最初に何か新しいことを初めてもらうというステップだ。人間が行動に対して最もオープンになれるのは、幸せを感じているときである。悲しみや恐れを感じているときには、慣れ親しんだものに気持ちが向いてしまい、新しいことは避けようとする。
情報過多になると、人々は友人を頼りにする詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
3分で読了。ぼくも「ソーシャルネットワーク構造モデル」と同じ図を昔に描いたけど、もう古い。いまのぼくは分人主義的な図を描く。この著者は分人主義ではない。
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【5人・15人・50人・150人】
どんな本?
社会行動に関する法則を理解する入門書
↓
まさにそんな本だと感じた1冊。
『ウェブの構造変化=コンテンツ中心型から人中心型へ』
本著内の言葉が、先日の女子高生との交流(健全な)で腑落ちする。
例えば、その子にとってウェブ上で『何のゲームで遊ぶか』よりも『誰と遊ぶか』が重要といった話題。
(最近は人狼ゲームというのが流行っているそうな)
経済学、心理学、脳科学などいろんな方面から書かれている本書の内容。
その中で私は一番腑落ちしたのは、『ネットワークの境界線』(私は人間関係の境界線と理解)の部分。
《境界線》
5人=『人間関係の中心グループ』困ったときに頼る、もっとも信頼できる相手
15人=『共感グループ』ある程度強い絆があり、亡くなるようなことがあれば非常に悲しい相手
50人=『理解グループ』定期的に交流をもち、自信をもって近況を知っていると言える相手
150人=『認知グループ』顔と名前が一致し、誰と知り合いかが把握できる相手
※グループ名は自分の想像。
本著では150人が脳の心理的限界だと述べている。
『心理的限界』という表現が言い得て妙だと個人的には感じた。
私にとって、顔と名前が一致するってことは、相手を『覚える』ことではなく、『想う』ことなんじゃないかと思う。
想うことは、けっこうパワーがいる(心理的に)。
MD(みんな大好き)要素が強い私にとっては、この境界線を意識することが必要なのかなぁとも思う。
ただ、『感謝の念』に境界線は引かないでいこうよ、私。 -
Windows95が登場してから、インターネットは常に「個人が世界とつながる」という謳い文句がありました。
それが、ブログやSNSの登場を経て、ついにはリアルコミュニティの範囲とほぼ一致するかのような収斂を見せています。
その中でのビジネスでは、いかなる点に注目すべきか、という事がまとめられています。 -
ソーシャルメディアの隆盛、ソーシャルネットワーク理論、インフルエンサーマーケティング(この本では否定されている)、行動経済学などを、人のウェブ上での社会行動という観点からまとめた本。そういう意味では、正直どこかで聞いた話もかなり多い。
ウェブが人中心構造に変化しつつあること、会話は他人との絆を深めるためだったり、他人からどう見られるかを、コントロールするために行われる。また、会話の多くは他人の行動や強い感情を引き起こすもので、ブランドはたまたま触れられる程度。
情報の拡散においてはイノベーターハブとフォロワーハブがあり、マス市場に到達するにはフォロワーハブが大事。
周囲の行動に人は影響を受け、特に親しい人や同じグループのメンバーからの影響は大きい。
人の行動のほとんどは無意識によって促されている。そして人は新しいことは避けるため、小さな行動や、信念に添うかたちでお願いした方がいい。
情報過剰社会では、小規模でつながりあった友人グループに焦点を合わせてマーケティングすべき。 -
タイトルだけを見れば、多くの人にとって異論の挟む余地はないだろう。個人的にもFacebookが本当に面白くなってきたのはグループという機能が付いてからだったし、ブログにしてもHONZというグループに入ってから手にしたものは、計り知れないものがあった。
その背景には、かつて文書を結びつけるものであったウェブが、人を中心とした構造へ変化したということがある。いくら良いコンテンツであっても、人の手を介して伝達されなければ情報は拡散されないし、逆もまたしかりだ。
著者は、かつてGoogleでGmailやYouTubeなど様々なプロダクトに関わった人物。彼の研究が基礎となってGoogle+のサークルという概念も生まれたのだという。しかし、その成果をまとめた”Social Circles”という題名の本を発表する直前に、著者自身がGoogleからFacebookへと移籍してしまう。本書はGoogleから差し止められたものを、改めて書き直し出版されたという、いわく付きの一冊なのだ。
ページをめくっていくと、何箇所か手の止まるところがある。それはウェブの定説とも言える二つの理論に対する、強烈なアンチテーゼとなっている部分だ。
一つは、大きな影響力を持つインフルエンサーを発見し、メッセージを根付かせるということへの否定である。インフルエンサーに頼る手法というのは、リスクが高く信頼度の低い戦略であると主張する。
もう一つは「弱い紐帯の強み」として注目されてきた「弱い絆」から「強い絆」への原点回帰だ。私たちが行うコミュニケーションの80%は5人から10人程度の決まった人々を相手に行われているという研究結果なども紹介されている。
つまり、ソーシャルネットワークは独立したグループが結びついて形成されており、非常に影響力のある人物を探し求めるより、無数に存在する小規模のグループに注目し、彼らに焦点を合わせて戦略を練り直すべきであるというのが本書の骨子だ。
自分の思い込みも手伝って、ここの部分の咀嚼には若干の時間を要した。ただ思い返せば、確かにそういう流れへの兆しは見受けられる。一つは、電話帳というソーシャルグラフに紐づいたLINEの急成長である。また感覚的なものかもしれないが、FBのニュースフィードのアルゴリズムも6月くらいからこの方向へ舵を切ったのではないかと感じている。
突き詰めると本書で問われているのは、ネットにおける情報の拡散力とは何かということである。著者は、情報の受け手としての個人を、単体としてではなく、いくつかのグループのハブと捉えている。このように捉え直すと、流す情報のメッセージやベクトルというものも大きく変わらざるを得ないだろう。
マスメディアによる情報伝達が空爆のようなものなら、インフルエンサーによるミドルメディアの台頭というのは、誰もが簡単に空爆が出来るようになったということを意味していたと思う。一方で、本書に書かれているのは、非常に泥臭い地上戦のような部分である。
これだけ個の力が注目される時代でありながら、地上戦のメカニズムについて書かれた本というのは、なかなかお目にかかれない。しかも、遠くを見据えるためには身近なものに着目する必要があるなど、なかなか含蓄のあるメッセージである。情報発信を行う人なら、誰にとっても示唆に富む内容になっているのではないかと思う。 -
マーケティングのポイントが理解できる内容。約10年前に出版されている本だが、今でも十分に通じる内容で、むしろ未来を予言できているのか。
「オンラインの世界がオフラインに近づいていく」
「情報過多の時代には、広く多くの人に伝えようとするのではなく、少数グループのオフラインにアタックして、そこから口コミとして情報を広げよ」など。
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ネットワーク、関係性、グループに関する本。
著者もFacebook関連の人であり、Facebookで実践している智慧を共有してくれている本という印象。
基本的な人の行動原理は影響力の武器の要因に共通しつつ、ネットワーク、認知という文脈でそれらを語っている印象。
2012年の本ということもあり、若干トレンドが変わっている部分もある印象。アドテクの進化・変化の目まぐるしさを感じた。
一方で信頼性透明性など、今より一層重要度を増している、概念もあり。
メモ
・情報を広く広げるには、影響を受けやすい人とのつながりを持つことが重要。
・信頼性を担保するために共通の知人の選択を表示させる
・社会的証明という要素が人に効く。他人の行動見せるという方法。
・選択肢を減らしてやることで適切に意思決定が可能になり売上があがる。アップルは非常にシンプルな商品構成。人の脳で処理できる選択肢は限られる。
・人々の行動変容を促す手段。
1 人々の周囲にある環境を変える。新しい環境だと新しいことに取り組みやすくなる。
2 新しい行動に伴うコストに対するメリットを高める。
3 ゴールとされる行動を他人が行なっている状況を見える化し、メリットを得ていることも見えるようにする。
今の選択の否定は絶対してはならない。認知的不協和で、余計に現状固執されてしまう。 -
今から約8年前にこれが書かれていたなんて、読むのが遅すぎた。