HIGH OUTPUT MANAGEMENT(ハイアウトプット マネジメント) 人を育て、成果を最大にするマネジメント

制作 : ベン・ホロウィッツ 
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784822255015

感想・レビュー・書評

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  • マネジメントの最高良書。ドラッカーのプロフェッショナルの条件とならぶ自分ランキング1位。原著が1984年に書かれたとは思えないくらい現代でも充分通用する。ミーティングやワンオンワン面談の重要性、面談のコツなど、マネージャーの要諦がインテルの事例を紹介しつつ、シンプルかつ、強力なメッセージとして伝わってくる。著者の頭が高度にロジカルで整理されていることが感じさせられる。アウトプットに最重視、という点ではドラッカーとにていると思ったら、彼も「非常に大切なことをすばらしく教えてくれる重要な本」と評したとのこと(AMAZONより) 納得。

  • インテルの創業者で元CEOのアンディ・グローブがマネジメントについて語った本。非常に実務的なことがことが書かれていて驚いた。中小企業診断士の運営管理や企業経営の科目で学んだ理論の一部が、実際にアンディ・グローブがインテルで実践してきたこととして書かれているように感じた。組織と人に関して、自身の経験した事例を踏まえて、管理職・経営者が実際に持つべき心得が書かれている。

    アンディは、まず朝食工場という朝食を作る仮想の工場を例に挙げて、そこで行われるべき判断や行動について解説する。もちろん、著者が関わってきた半導体工場とは具体的な要素は異なるが、形を変えて同じような判断が行われてきたということだ。仮想の事例を通して具体的で非常に腑に落ちることが書かれている。

    何よりまず、マネジャーのアウトプットは、「自分の組織のアウトプット+自分の影響力が及ぶ隣接諸組織のアウトプット」である、ということを明確化する。つまり、「いかに頭がよいか、いかにそのビジネスを熟知しているとは関係がない。マネジャーはチームのパフォーマンスとアウトプットのみによって評価される」というところが重要なのである。これがマネジャーと個々の社員との大きな違いであり、「マネジャーの能力や知識は、部下や関係者の能力を結集できる場合にのみ価値がある」ということなのである。

    そのためには人に仕事をしてもらう必要がある。「人が仕事をしていないとき、その理由は2つしかない。単にそれができないのか、やろうとしていないのかのいずれかである。つまり、能力がないか、意欲がないかのいずれかである」ー したがって、「マネジャーのやるべきことは部下の教育とモチベーションの向上だ。他にマネジャーがなすべきことはない」という。この言葉は、ホロビッツが書いた序文でも言及されている。
    そのための実際的な方法として、上司と部下の間で一対一の話し合いの場を持つことを重要視している。それがマネジャーの究極的な役割である部下の教育とモチベーションの向上に直接つながるからである。一対一の話し合いの場を持つことは、インテル社の経営哲学上の根本綱領のひとつになっているという。

    「人を駆り立ててベストを尽くさせる内面的な力は2つある。”能力”に突き動かされるか、”達成意欲”に駆られるかである」
    そのための手段として目標管理システム(MBO: Management By Objectives)によって、目標を高いところに置くことでその能力を伸ばすのである。

    そして、その人を効果的に動かすには組織が重要である。企業の組織は、機能別と事業別のハイブリッド型の間で揺れて、どの形がベストであるということはいえないが、一般的に、大きな組織ではハイブリッド型になると示唆する。共通の事業目的を持つすべての大組織は、最後にはハイブリッド組織形態に落ち着くことになる - これはグローブの法則と呼ばれるらしい。 また、マネジメントの型としてはグループメンバーの熟練度によってマネージャが採るべき方針が異なるなど、いった組織論の実際が語られる。

    マネジャーの仕事についての分析も実際的な視点で描かれている。アンディによると、マネジャーの大きな活動は、「情報収集」「情報提供」「意思決定」「ナッジング」だという。実際にアンディ・グローブの一日の大部分は情報収集に使われるという。さらにそれは同時に相手に対して情報を提供するということでもある。もちろん、それに加えて意思決定とそれを組織に落としていくことはマネジャー本来の役割でもある。そこで絶対的に有限かつ自らコントロール可能な時間の管理の重要性が説かれる。
    また、アンディによると好業績を上げる特定のリーダーシップの型というものはないという。これは最近のGoogleの研究プロジェクトアリストテレスの結論にも近いのかもしれない。また、ピーターの法則が発生することは仕方がない。上げてみて、ダメならリサイクルしかないという。
    その上で、さらにCEOはオプティミストでなくてはならないという。トータルで考えればその方がいいのだという。もちろん、勝ち続けるためにはパラノイアでもある必要があるのだが。

    さらに、社員の考課についても非常に細かいことまで記載されている。採用や、退職の引き留め、教育などについても具体的だ。人事が会社が成果を出すためにそれだけ重要なタスクだということなのだと思う。人は表に出た結果に対して色々と評価をするが、それを生み出す人や組織についてこそまずは手をつけなくてはならないということなのかもしれない。この辺りの内容ひとつをとっても、いわゆる概念論だけのコンサルが書いたような経営書と一線を画するところである。

    なお本書では、ピーター・ドラッカーがたびたび言及される。日本では特に有名なドラッカーだが、米国の経営書で言及されるのは珍しい。ドラッカーによると、時間の25%以上を会議で過ごすようなら、それは組織不全の兆候だと言っているらしい。アンディはさらに、意思決定のためのミーティングは7人以上になってはいけない。「8人が絶対に打ち切るべき上限である」と言い切る。意思決定におけるグループシンクについても言及がある。多人数での意思決定会議の問題をよくよく知っているのである。また、打ち合わせへの遅刻についても他人の時間を奪う行為であるとして戒めている。この辺りは自らの行動を振り返り反省すること大である。またドラッカーが提唱したとも言われる目標管理システム(MBO)についても先に述べたようにポジティブである。
    ・わたしはどこへ行きたいのか
    ・そこへ到達するためのペースをどう決めるか(マイルストーンとキーリザルト)
    を意識することがMBOに関しては重要なのである。MBOは評価のためのシステムでは本来ない、という指摘はその通りであると思う。変わる環境に応じて変化をさせていってもよいし、変化をさせるべきなのである。この点については肝に銘じておきたいと考えている。

    本書の序文にて、マネジャーとして、本当の価値を付加しているか、情報収集を怠らないでいるか、新しいことを常に試みているか、ということを責任として問い続けなくてはならないという。いずれにせよ個人の優位性を保つために、常に自らを磨いておかないといけないのである。果たして自分はできているのか、常に自問をし続けなくてはならないことである。
    1983年初版刊行の本だが、古びていない、中身が濃い本。レビューも長くなったが、まだ書き足りないような気がする。自信を持ってのお奨め。

  • 40年以上も前の内容だが、現代でも通じるという点に驚きを隠せない。
    工場生産を中心として話を整理しているためアウトプットという点に絞ってまとめられているためスコープがわかりやすい。しかしその分人の特性などに関しては記述が少ないのでインディケーターなど、マネージャーからの命令によって取得するのではなくチームとして積極的に取得するためにはどのように広めていくのかが鍵になっていくのかもしれない。
    言葉としては出てきていないものの、現在よく話題になる心理的安全性に関しても指摘されている。
    また、グローブの法則として提示されている「共通の事業目的「持つすべての大組織は、最後にはハイブリッド組織形態に落ち着くことになる」というのは今自分が所属している組織のことを指摘しているかのようで恐ろしくもある。
    最後の第4部ではこれまた最近よく耳にするコーチングの重要性を述べている。
    総じて令和の今にも通じるマネジメントの教科書だなと思った。

  • 10章以降のヒトのマネジメントに関する内容が明瞭で素晴らしい。ここだけで何回も読む価値あり。著者のアナロジーの力が大変高いので、記憶にも残ります。

  • 組織構造の話から人事考課、そして面接や退職希望者の引き止めまでカバーされたマネジメントのバイブル。
    ・組織はどうしてもハイブリッドになっていく
    ・考課は、伝えることで部下のパフォーマンスが上がるよう具体的に行動できるものであるべき
    などはとても共感できる。
    少し古い本なので、2017年現在のマネジメント慣行に合致しない部分はあるが本質的な部分は色褪せない。

  • 20年以上勤めた日本非上場企業を辞めて、アメリカ上場企業のシンガポール子会社の支店に入る、という働き方大転換の真っ只中の僕ですが、新しい環境のエッセンスはまさにこの本の中にあった、という驚愕の読書体験。ワン・オン・ワン、という会議(というか面談)のやり方や、社内会議のあまりの多さに最初は違和感あったのだけど、なるほど合理的だなあ、と思い始めた矢先にグローブさんの80年代前半の著書でその哲学に触れるというオチ。僕自身、自ら体験しないと学ばないタイプなので今後も自分に無茶ぶりをして、マズローの欲求階層を昇ったり降りたりしようと思います。以下引用。
      
    ・職場の同僚などとは数においてはるかに上回る1000倍もの、1万倍もの、100万倍もの人々が、みなさんの会社と競合している組織で働いているのだ。だから、仕事をしたいならば、あるいは働きつづけたいならば、「個人としての競争優位性」を保つために、絶えず熱心に自分を磨かなければならないのである。
    ・私の1日が終わるのは、疲れて帰宅するときであり、仕事が終わったときではない。私の仕事は決して終わらない。家庭の主婦と同じように、マネジャーの仕事は決して終わらない。もっとなすべき仕事が、もっとなさねばならない仕事が、そしてなしうる以上の仕事がいつも控えている
    ・レポートは情報を伝える手段というよりは「自己規律訓練」の「手段」なのである。レポートを「書くこと」は重要だが、読むことは重要でないことが多い。
    ・マネジャーが毎日毎日配分する唯一無二の重要な資源は、本人の時間
    ・ミーティングはマネジャーが仕事を遂行する「手段」そのもの(中略)。われわれはミーティングの存在の当否と戦うのではなく、むしろその時間をできるだけ能率良く使わなければならない
    ・より良いモチベーションというのはとりもなおさず業績が良くなることであって態度や気持ちの変化ではないのであり、部下が「自分はやる気が起きた」などということにはなんの意味もない

  • ビジネスの基本を再認識。
    どうすれば知識志向型をアウトプット志向型に切り替えられるか、難しい…。

  • 組織におけるマネージャー・リーダーの役割を述べた本。

    特に「マネージャーの役割とは、アウトプットを最高に上げる活動に、エネルギーと注意を注がなければならない。」と、朝食工場を用いての事例が、とても解り易く納得感がある。

    部下に、製造部門の工程を任せている者がいるが、朝食工場の事例を用いて、説明して好評でした。

  • 聞いたことあるけど実際何してるのかさっぱりなもの「マネジメント」
    ドラッカーの言うマネジメントの定義から始まらない本書で、やっと何をすればいいかわかった。

  • マネジャーとはどうあるべきか、日々の活動において何に注力すべきか丁寧に、具体的に書かれている。どのような組織に所属していても参考になるだろう。組織論や経営についても多くのエッセンスが詰まっており、何度も読み返して理解を深めたい。

著者プロフィール

1936年9月2日 - 2016年3月21日
ハンガリーのユダヤ系アメリカ人実業家。1936年ハンガリーのブタペスト生まれ。1956年にハンガリーからアメリカに移住。ニューヨーク州立大学を主席で卒業し、カリフォルニア大学で博士号(化学工学)取得。インテル社の創設に参画し、第1号の社員となる。79年社長に就任。97年にはタイム誌の今年の人に選ばれた。98年にはインテルのCEOを辞任し、2004年には会長から退いた。スタンフォード大学経営大学院で24年にわたって指導した。
『HIGH OUTPUT MANAGEMENT』(日経BP社)で「読者が選ぶビジネス書グランプリ2018」マネジメント部門賞受賞。

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