パラノイアだけが生き残る 時代の転換点をきみはどう見極め、乗り切るのか

制作 : 小澤 隆生  佐々木 かをり 
  • 日経BP社 (2017年9月14日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784822255343

パラノイアだけが生き残る 時代の転換点をきみはどう見極め、乗り切るのかの感想・レビュー・書評

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  • 時代の転換点でいかに考え、行動するか考えたい経営幹部の方に。

  • 働いていく中でとても役に立つヒントが散りばめられた内容。タイトルにある「転換点」つまり「潮目が変わった」ことをいかに見逃さないようにするか、そのためには「パラノイア」的素養が重要だよ。転換点を乗り越えるために「死の谷を超える」という話が印象に残った。

  • アンディ・グローブの「偏執狂だけが生き残る」ー ”Only the Paranoid Survive”という有名な言葉が本書のタイトルである。この言葉を自分はこれまで、一つのことに拘って突き詰めないと成功しないということだと思っていた。しかし、この本を読むとわかる通り、それが意味するところは、環境の変化や競合他社の動きに対して常に恐れを抱き、病的な心配性と言われるほどに気に掛けることができたものだけが生き残ることができるのだということだった。インテルがメモリー事業を捨てて、マイクロプロセッサへと資源を集中することを決断したとき、アンディを含むインテルの経営層はまさに「パラノイア」であった。

    この本の中でアンディはインテルの主力事業であったメモリー事業からの撤退と、マイクロプロセッサ事業への資源集中について語っている。まさしくインテルにとってインテルの経営層が自ら決定した戦略的転換であった。未来から振り返ると、その判断は至極当然でそれしかありえないようなもののように見えるが、当時の当事者にとっては苦渋の決断であり、そこに至るまでの過程は長い恐怖と逡巡の道のりであったことがわかる。もちろん決断を下した後であっても。アンディは、その経験を惜しげもなく語ってくれている。

    アンディは「戦略的転換点」という概念を用いて企業が行わなければならない決断について語る。そこには二つの教訓があるという。
    「戦略的転換点が産業界に吹き荒れているようなとき、従来の構造の中で成功している企業ほど変化に脅かされる度合いが大きく、変化に適応することをためらう度合いも大きくなる」
    ということと、
    「どんな業界に参入するにも、確固たる地位を築いている企業の向こうを張って参入する場合は膨大なコストがかかるが、業界の構造が崩れると参入コストは明らかに小さくなり、コンパックやデル、ノベルのような企業が生まれる可能性が出てくるということなのだ」
    ここで戦略転換「点」と言っているが実際には「点」という表現は正確さに欠けているという。実際には長く続く変化であることがほとんどなのだ。そして、さらに問題なのはその時点においては戦略転換点がはっきりとしていることはめったにないということだ。そのために豊富な情報を集め、関係者の知恵を総動員することが重要となる。そのためにまずは経営層から危機感・恐怖感を感じていなければならない。その場合の恐怖とは自己満足の対語なのである。また戦略転換点においての決断で重要なことは、恐怖を感じることとは矛盾するのかもしれないが、戦略的転換点においては、リスクヘッジをするべきではないということである。焦点を定めてやるべきことを明確にし、やるべきでないことをやめる決断をすることが最終段階では極めて重要なことなのである。覚悟を決めるときには、ヘッジできないということである。

    通信業界にも戦略的転換点が近づいているようにも思える。

    「大事なこと」としてアンディが挙げたことは次のことである。アンディを含む経営層が長く苦悶している間、現場に近い第一線のメンバーはそのときがくることを予測して準備をしていたということだ。そして重要なのは、その事例は決して特別なことではないということだ。経営者よりも直接第一線にいるものの方が迫りくる危機に対して敏感であることが多いのだ。その事実から、中間管理職の自主的な行動が現代の組織では非常に重要になっていることも示している。企業戦略とはトップダウンの戦略計画などではなく、一連の戦略的行動で成り立っているともいえるのである。
    また自社の現場だけでなく、顧客も他社との取引の準備をしていた。決定を伝えたとき「やっと決まりましたか」と答えた人もいたという。冷静に見ると、もっと早くなされるべき決断であったのかもしれないのだ。あのインテルの決定でさえも。そして、当事者の決断が、第三者の判断に遅れるというのはよくあることなのである。当事者には苦しい実行がそのあとに待っているからである。一般に立て直しのためにくる新しい経営者が有利なのは、その点である。
    そこから出てくるのは率直なディベートとコミュニケーションの重要さである。


    アンディは次のように書いている -「今、われわれが生きている時代は、技術革新がこれまでにないスピードで進み、すべての産業を揺り動かしている。その変化の速さは、職業を問わアずあなたにも影響を与えるだろうし、思いもよらないところから、新しい手法を使った新たな競争をもたらす」ー この本の初版がアメリカで刊行されたのは1996年である。むしろ今書かれたものであるとしても驚かないだろう。この本の中でも「10x」の変化ということが繰り返し言われる。今でいうシンギュラリティを迎えるに当たっての指数関数的発展というものである。「10X」の変化なのかどうかを見極めることが何より重要になっている。10Xの変化については、今までの改善では対応できないということになる。ムーアの法則に導かれたPCの世界が正しく指数関数的な変化の世界であった。

    「テクノロジーの分野では、”可能な”ことはいつの日か必ず”実現”される。われわれはこの変化をくい止めることもできなければ、そこから逃げ出すこともできない。できることは、その変化に万全の構えで備えることなのである」
    そして、「教訓として残るのは、われわれは誰でも変化という風に自分自身をさらさねばならないということだ」

    20年前に書かれた書籍だが、勃興するインターネットについての見解が貴重である。
    「通信業界にとって、インターネットはプラス面もマイナス面も持っているということだ。短期的には、インターネットの利用者が増えるということは脅威であるが、長期的に見れば、画像、音声、ビデオを豊富に含んだデータによってインターネットの採用が増えることで、新たなビジネスチャンスが期待できる」
    ー その通りであった。

    「旧業界である新聞、雑誌、ラジオ、テレビ・ネットワークは、資金源の一部を失うことになるだろうし、新業界である接続プロバイダー、ウェブ関連業者、コンピューター製造業者は、この資金の一部を手に入れることになるだろう。後者にとっての恵みは、明らかに前者の損失と一致するのだ」
    ー その通りであった。

    「ウェブの情報を多彩なものにすることに活かされれば、ウェブがテレビ画面で見慣れている品質に肩を並べ、追い越すこともあるだろう」
    ー その通りである。

    「われわれは新しいメディア業界の誕生をこの目で見ることができるかもしれない。もしそれが実現するのであれば、それは確実に「10X」の力による変化になるのである」
    ー 正しくわれわれはその中にいる。

    アンディはこの点でインターネットを戦略転換点とにらんで取り組むと宣言した。時にWindows95が出荷されてしばらく後の話であり、GoogleもAmazonも生まれたかどうかの時期の話である。


    インテルを戦略転換に追い込んだ日本電気メーカーの一角の東芝のメモリ事業売却が決まった2017年。なぜこの年まで本書が邦訳されなかったのか不思議である。アンディ・グローブの意向だったのでああろうか。実体験からもたらされる説得力が重い。
    同じく2017年の今年邦訳された『HIGH OUTPUT MANAGEMENT』とともに間違いなく読まれるべき本。


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    『HIGH OUTPUT MANAGEMENT』のレビュー
    http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4822255018

  • 5F+1の環境が大きく変化した転換点をどう乗り切るかを、経験にも続き展開。9章のインターネットに関しては本当に20年前に書かれたものかと思うぐらい正確な話です。

  • 1996年に刊行された本。でも、古さをあまり感じさせなかった。周囲の意見に耳を傾けながら、小さな懸念事項を一つずつ検討していくのは、文章で読むとさらっとしてるけど、実際はとても大変で疲れることだと思う。だからこそ、健康管理や睡眠が重視される(のかも)。

    個人的には9、10章が面白かった。

    9章はインターネットに対する筆者の見解がまとまっている。
    90年代に出てきた「インターネット」という技術に対する見解も見事だったけど、クラウドやポータブルなパソコンの登場(たぶんスマホではなくて、PDAやポケットサイズのPCだと思う)まで見ていて、すごい人は本当にすごいと思った。

    10章は、個人のキャリアを「自分という会社のCEO」という視点でみよう、というお話。副業とまではっきり言ってないけど、20年前からいろんなことをやってみることを勧める人はいたのだと思った。

    20年近く経っても、全く色あせない本だった。

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