ゴールドマン・サックスM&A戦記 伝説のアドバイザーが見た企業再編の舞台裏
- 日経BP (2018年4月19日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
- / ISBN・EAN: 9784822255688
作品紹介・あらすじ
「M&Aは総合格闘技」
「M&Aは売りから入れ。買いはマイナスからのスタートだから」
日本のM&Aが本格化した1990年代から2000年代半ばにかけて、主要プレーヤーとしてM&Aをリードしたゴールドマン・サックスの辣腕アドバイザーの著者が、自らが手がけた多くのM&A案件の内実を初めて明かした稀有のノンフィクション。日本のM&A20年史でもある。
ゴールドマン・サックスのニューヨーク修行時代から、内外の大物経営者との出会い、社内でのカネ・政治・出世競争などの知られざるエピソードを数多く描く。
日産自動車、三菱自動車、ダイムラー・クライスラー、日立製作所、DDI、KDDなど数多くの企業が登場。M&Aアドバイザーからみた日本経営論にもなっている。
著者が手がけた大型案件の代表的なものは以下の通り。
●DDI・IDO・KDD3社合併
●ロッシュによる中外製薬買収
●NKK・川崎製鉄経営統合
●GEキャピタルの日本リースのリース事業買収
●ダイムラー・クライスラーの三菱自動車への資本参加
●日立製作所によるIBMのHDD事業買収
●三菱商事のローソンへの資本参加など。
感想・レビュー・書評
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実用書というよりは、自伝。ただ、現在の柵無き立場もあるのだろうか、率直な物言いにリアリティがあり、果たしてきた実務に付随する情緒面も含めてよく伝わる内容。実績を披露しながら、随所にその勘所や感じた事などを散りばめる。ゴールドマンサックス以外のコンサル会社は偉そうで好きになれないとか、元々勤めていた日産から留学費用を返還させられたとか、その留学先であるMITで軽蔑する日本人がいたとか。生々しいから、臨場感があり、より伝わってくる。
実績は、KDD、DDI、IDOの統合によるKDDI。三菱自動車とダイムラー、川崎製鉄とNKKのJFEなど弩級の案件が多い。そうした思い出話と共に、MSCB(行使価格変動型転換社債)のB種優先株発行は自殺行為。引き受けた証券会社が自動的に儲かる仕組みなので、他の資金調達手段がある会社は絶対に手を出してはいけないという話とか、デューデリジェンスにおいて、品質問題を抱えていない事の再確認しておいた事が良かったとかのノウハウが語られる。
世界トップクラスの医薬品メーカーは自国市場だけでなく海外市場でも世界シェアに見合う大きなプレゼンスを獲得していたが、日本市場だけは10位前後かそれ以下のシェアにとどまっていた。日本の大手医薬品メーカーを買収したいと考える世界の大手医薬品メーカーはいくらでもあった。しかし会社を買うにしても50.1%は嫌で、なぜなら買収した結果自社の製品を日本で独占的に販売するので会社の業績は当然良くなるが、良くなった業績の残り49.9%を業績改善に全く貢献していない一般株主にただで提供すると経済的に合理性がないという考えらしい。
また、NKKと川鉄の統合比率交渉のキックオフミーティングでは、NKK本社に両者の関係者が集合したが、それぞれ会社側30人以上に財務・ホーム・会計アドバイザー含めて総勢50名程度のチーム。両者合計で約100人いたなど。勉強になった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ゴールドマンサックスでの、様々な業務経験について、淡々としながらも、軽快な筆致で書かれており、楽しく読破することができた。
「はしがき」には、端的に筆者の思いが凝縮されているように思えるが、特に以下の点について非常に同意する。
●でも気を抜けば、やはり、どうしても会社が有利な立場に立ち、個人を支配してくる。
●会社というものは、自分の味方ではない。敵とまでは言えないが、少なくとも、黙っていても会社が自分のために何かを施してくれるというものでは絶対にない。会社で自分の思いを通すためには、会社と個人は常に対等の関係になければならないし、さらに対等な上で、日々これ勝負であり、これにある程度勝たなければ、自分の思いを止めることはできない。今でもこの考えは変わっていない。
●そして、これを実践するためには、自分の人生は自分でリスクを取って、自分で切り開く、特に人生の後半の時期に、少なくとも自分の居場所は自分で決められるような立場にいたい、全く自分の意思とは無関係に、組織の側に自分の居場所を一方的に決められることだけは絶対に避けたい、と言った考えも重要だと思っていた。
●若い頃に身につけたこのような考え方が、その後の人生に非常に役に立った面が多かったと、自分としては感じる。
筆者の生き様が、まさに以下の各点を体現していることを、読後に改めて実感をした。
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あっという間に読了。
細かい買収の話よりも、著者の人生スタンス、ゴールドマンの社風に感激。
今の働き方改革というのが、残業削減一辺倒というのが不幸。金融などのサービス業は、もっと働き方の多様性を追求していいのではなかろうか。生き方の一つのあり方として、大いに参考になると思う。 -
タイトルに惹かれて購入。著者の服部暢達氏は、日産→MITのMBA→ゴールドマンサックスで10数年ご活躍。現在はファーストリテイリングの社外役員とか。ゴールドマンサックスでは東京でM&Aを。
感想。面白かった。本の中でも「臨場感を伝えたい」と説明があった通り、少し世界を覗けました。
紹介のあった事例は、KDDIやJFEの誕生案件とか、ダイムラーとゴーン前の日産の話とかで面白い。
ノウハウの紹介がある訳ではない。本の中でも「顧客のために一生懸命に働き、地道なことを繰り返す」という趣旨の話や、会計士や弁護士とチームアップして行動する様が記載されていて、なんとなくイメージできました。
改めて、全力で仕事に没頭すべき、と思うに至る。
備忘録。
・会社と個人は常に対等な関係。
・自分の人生は、リスクを取って自分の才覚で切り開く。
・少なくとも自分の居場所は自分で決められる様な立場でいたい。自分の居場所を自分の意思と無関係の組織に一方的に決められる立場にいることは絶対に避けたい。 -
「M&A戦記」という悪ノリのタイトルは編集者が付けたのであろうが、まさに日本M&A史の勃興期にゴールドマンサックスのM&A部門の最前線に居た方の回顧録であるので退屈であるはずはない。服部氏の当時の記憶を語る内容だけあって、ディールの説明は理論のみならずテクニカルなスキームやバリュエーション、タックスと多岐に渡っており、ある程度の知識レベルは必要だが、M&Aの象徴的案件が多く大変興味深い。特にワインバーグ、ルービン、ポールソンという伝説的GSメンバーや稲盛氏や永山氏とのエピソードは実際に携わった者ならではの感がある。
服部氏の話に好感が持てるのは優れた経営者、例えば稲盛氏や永山氏、ゴーン氏、江本氏&下垣内氏に対して敬意を払っている点だ。2000年代の投資銀行はリーマンショックへ向けて猛進していったが、服部氏のGSやモルガンは投資銀行が辛うじて投資銀行の品格を保っていた最後の時代なのかもしれない。 -
いかにもタイトル買いを誘ってそうな・・・
全く期待しないで買ったが良書。
著者のGS時代に手掛けた案件が、かなり踏み込んんで書いてある。 -
日産に勤めながらMITのMBAコースに留学し、ゴールドマン・サックスに入社して、規模の大きいM&Aに関与してきた著者の半生記。興味深い話が結構あった。
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M&Aの臨場感を味わうのに最適な一冊。
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私の関心とは異なる何かだった。ステレオタイプな野村証券マンみたいな方なら。
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2020.8.30 再読
臨場感がよい。哲学を持って就職活動をする。