- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784828830551
感想・レビュー・書評
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借りたもの。
洋の東西における食人嗜好の違いを比較しながら、禁忌であり、飢餓、宗教的倒錯とエロティシズム、そして究極の美食である事を指摘。
西洋と東洋における血の概念(西洋は切りつけた時の流出・噴出するイメージ、中国は解剖学に基づいた体内を循環するもので、粘質である)の違い等を例に挙げ、中国における人肉は「肉」すなわち「モノ」と見なす現実的な視点であるという。
故に中国では人肉嗜食が食文化に成り得たと。
“食べなければ死、食べれば悪という絶体絶命の深淵に置かれた人肉は、なんと精神的な存在物であることか。(p.76)”
それは食文化から迷宮としての人体への言及に至り、狂気や倒錯、退廃的な世界を、主に中国の文学から垣間見る。
この文学エッセイは世界、特に中国の残酷物語についてではない。
その根底には、世間の「良識」を疑えというメッセージが込められている。 -
直接カニバリズムに関わることが書かれているのは第1部。喫茶店でコーヒー飲みながら読んでいたら気持ち悪くなった。やはり気持ち悪いものは気持ち悪い。中盤以降の2・3部は中国の魔術、マゾヒズム、国民性、等の怪奇事情。ハキハキした明解な文章でわかりやすい。個人的には「失敗した」天才青年、王国維の悲劇が印象的。
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1970年代の本。
カニバリズムという観点から中国文学や中国特有の思考を論じていく。
新奇な説が多くあり非常に面白かった。
このような思索ができれば、きっと物事を考えるのが楽しいだろうなぁと思った。
中国の纏足文化はエロスの対象が育ってきた環境に影響を受ける例として重要。
また、美と徳は同居しないという説には首肯。
さらに、著者が説の論拠として幾度か使用している単語家族という漢字の語源による当時の思想推測は興味深い。 -
2009/3/5購入