- Amazon.co.jp ・本 (218ページ)
- / ISBN・EAN: 9784828831022
作品紹介・あらすじ
外国で殺した男の形見として持ち帰った1本の手に復讐される話(「手」)、雪深い山小屋に一冬閉じこめられ、遂に発狂してしまう男(「山の宿」)、眠っている間に無意識のうちにテーブルの上の水を飲んだりする一種の「人格遊離」をテーマにした「オルラ」など、11篇の怪奇短篇を厳選して新訳。
感想・レビュー・書評
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19世紀フランス自然主義文学を代表する作家の一人、
モーパッサンの短編のうち、怪奇幻想色の強い作品を集めた一冊。
描き出される恐怖は人の妄念、過剰な思い込み、
何ものかに対する度を越した執着によって生じており、
こうしたスタイルはフランスにおいて
後にグラン=ギニョル劇場の精神へと
受け継がれていったのではないかと勝手に想像する。
イギリスではドラキュラやフランケンシュタインが誕生したが、
フランスの文芸界には人智を超えたモンスターは登場せず、
狂気だの伝染病だの流血沙汰だのが恐怖譚のモチーフとなり、
人々はそんなストーリーに身震いしつつカタルシスを得ていた――と。
本の内容に戻ると、今回読みたかったのは「オルラ(Le Horla)」。
語り手は心気症に陥ったものと見えるが、
不安の塊に名を付け、外在化させてしまい、
「それ」が一人歩きして自分を襲いにやって来ると考えて正気を失う。
何でもないことに怯えて右往左往する姿は滑稽に映るが、
感受性が鋭く刺激に敏感な人は身につまされるのではないだろうか。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
◇モーパッサンの短編から幻想的(怪奇的)なものを集めた選集。「オルラ」は何度読んでも面白い。
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モーパッサンは変態。好き。
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福武文庫『モーパッサン怪奇傑作集』(榊原晃三訳)読了。11篇のごく短いお話を集めた短篇集。
自然主義の大家だけあって、超自然の恐怖よりも人間存在の不可解さを扱った作品が大半を占める。
『手』は外国で殺した男の手を持ち帰った男が不可解な死に至る話。一応合理的な謎解きも書かれている。
『水の上』は夜中にボートが立往生する恐怖。ラストの謎解きは幽霊より怖い。
『恐怖 その一』『恐怖 その二』はあり得ない(と常識的には思える)ものと遭遇する恐怖をごく短く描く。種明かしがあるとは言え、実際に自分が遭遇した場合を想像すると怖さが実感できる。『髪の毛』は死んだ女性の髪束を手に入れた男が陥った狂気。
『山の宿』は冬季の雪深い山小屋を守る男ために泊まる男が経験する恐怖。相方は帰らず、外には何やら怪しい物音が。これも超自然の怪を扱った話ではないが巧みな語り口で怖がらせる -
2015怪談読書会 紹介本
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20140803 オルラが読みたくて買った。面白かった。
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2011/6/16購入
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「手」、怖い。「オルラ」、苦しい。でも、こういうモーパッサン、好き。そんな自分が、ちょっと恐ろしい。