ニワトリと卵と、息子の思春期

著者 :
  • 婦人之友社
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  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784829209721

作品紹介・あらすじ

■家族の成長ものがたり

「友だちが持ってるからゲーム買って!」という思春期の息子。
面倒が増えるからと取り合わない母。どこの家でもくり広げられる親子のいさかい。
そんな繁延家で、長男が「ゲームの代わりにほしい」と言ったのは、なんとニワトリだった。
実現に向けて奔走する息子と、著者である母の葛藤。
親子が迎えた成長の季節に、ニワトリのいる新しい風景が加わった――。

感想・レビュー・書評

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  • ゲームを買ってもらいたい小6の息子。母との言い争いの末に、息子は、ゲームの代わりにニワトリが欲しいと言い出した。それも“にわとり飼育計画書“と共に。知らぬ間に近所の大人にニワトリを飼える土地はないかと聞きまわってもいた‥‥
    これは、ノンフィクションです。
    思春期の息子と母との関係、父との関係が赤裸々に描かれています。
    そもそも、自分の行動を親に決められるのが納得いかない息子。養っているということを武器に力ずくで言うことを聞かせようとする親に納得いかない息子。
    自分の思春期の頃を思い出せば何から何まで息子さんの言う通り。
    『親に向かってその口の聞き方はなんだ!』なんてよく言われたものだけど、『親ってだけでなにがそんなに偉いんだよっっっ!』とムカっ腹を立てていたものです。だけど、自分が親になると似たようなこと言っちゃってるんですよね。
    そりゃあ、壁に穴も開きますよ笑笑(思春期の男子がいる家には大体壁に穴が開いているとよく聞く笑)
    そもそもなぜニワトリなのか‥‥卵を売ってお金に換えられるから‥‥なぜかというと、お小遣いをくれないから‥‥
    そのお小遣いを与えない理由も、まぁ母の身勝手な言い訳のようなものなのです。そんな恥ずかしい母自身のことも包み隠さず書いてくれていて好感が持てます。
    今まで様々なことを教え、守ってきた存在の子どもが、いつの間にか親よりも知識を持ち、親を必要としなくなってきている。「お母さんにはわからない」と言い放たれたときの衝撃‥‥‥

    なぜ人は昔の自分を忘れてしまうのですかね。自分も同じように親や大人に対して不満、憤りを持っていたはずなのに。
    でも逆に考えれば、あの時の親の気持ちが分かるということですね。

    • しずくさん
      我が家にも穴あきが2つ。
      これこそ俗にいう”アナーキー”かもしれませんね(笑)
      大学生になりその残骸を見た長男が「迷惑を掛けました」と笑...
      我が家にも穴あきが2つ。
      これこそ俗にいう”アナーキー”かもしれませんね(笑)
      大学生になりその残骸を見た長男が「迷惑を掛けました」と笑いながら頭を下げたのを思い出しました。
      次男は兄貴の爆発を感じて遠慮したのかみっともないと感じたのか、次男君のはありませんwwww
      2023/02/24
    • みんみんさん
      うちは学校の壁を殴って指骨折しました( ̄▽ ̄)
      でもクソババアは言われてません笑
      うちは学校の壁を殴って指骨折しました( ̄▽ ̄)
      でもクソババアは言われてません笑
      2023/02/24
    • こっとんさん
      しずくさん、みんみんさん、こんにちは♪
      穴が2つ‥‥学校の壁で骨折‥‥
      やっぱりあの恐ろしい噂は本当だったのですね‥‥こわっ!
      うちももうそ...
      しずくさん、みんみんさん、こんにちは♪
      穴が2つ‥‥学校の壁で骨折‥‥
      やっぱりあの恐ろしい噂は本当だったのですね‥‥こわっ!
      うちももうそろそろ穴あけのお年頃なんですよね。
      穴を開けるのは息子はだけではない、母が開けることもある、という噂も聞きます。
      私は後者になりそうで自分が怖いわー。
      ちなみに、友だちのところは、息子が開けた穴は自分で修理させたらしい‥‥
      うちはどうなることやら。あーこわ。
      2023/02/24
  • 最初から最後まで、私の心に響きっぱなしで寿命が縮んだ気持ちにすらなった一冊でした。

    ゲーム機を買う買わないで口論になった母と小6の長男。
    「絶対にゲーム機を買いに行く!」と言い放って登校した息子からの電話で、母(著者)は「ゲーム買うのやめるからさ、その代わりニワトリ飼わせて」と告げられる。
    我が子が突然養鶏を始めたいと言い出す。
    しかも筆者は小6の長男を筆頭に3人のお子さんを育てるワーキングマザー。
    さてはて、この一家の養鶏と子ども達の成長はいかに。

    このご家族の、息子さんを中心とした手探りの養鶏を通して、家族、母という立場、命をいただくということ、しつけ、思春期などの様々なテーマについて全て胸を衝かれました。

    我が子はまだ3才で、毎日耳元で大きな声を浴びせられ、休む間もなく求められ、疲労困憊な毎日だけど、
    「これまで、“お母さんに同意されたい”という子どもの気持ちを、ずっと利用してきたことに気付かされた。」
    「これまでは、子どもの身の回りの世話をし、知らないことを教えるのが親の役目だった。(中略)けれど、世話がなくなり、息子の方が識っていることが増えてきたら、私はどういう親をやればいいのだろう。」
    これらの文章を読んだ時、今がとても幸福であると痛感し、また一方で来る我が子の思春期を見据えて、子どもや自分自身と向き合い続けなければならないと気付かされました。

    また、養鶏を通して命の連鎖を学び、無駄のない暮らしに移っていく描写も素晴らしく、偶然にも今年の抱負の1つにフードロスを減らす生活習慣を揚げていた私には強く響きました。

    小6にて養鶏を始め、その後株取引も覚える成長著しいご長男に感心する一方で、ものすごいスピードでこの腕の中から離れていく母親としての戸惑いを、飾らない言葉で過不足なく的確に書き上げた繁延さんの文章力は素晴らしいと思います。
    もちろん、ご家族に向き合うその姿勢と肝っ玉も。

    よい本に出会うとレビューがうまく書けません。
    かなり散らかったレビューになりましたが、最後に1番心に残った箇所を。
    「子の声ばかりが聞こえてしまう母親は、ときに狂いそうになる。」
    まさに、その通り。

    • こっとんさん
      ひゃっほうさん、こんにちは。
      ひゃっほうさんのレビューが素晴らしく、私もこの本読みました。
      とても面白かった!
      いい本を紹介してくださり感謝...
      ひゃっほうさん、こんにちは。
      ひゃっほうさんのレビューが素晴らしく、私もこの本読みました。
      とても面白かった!
      いい本を紹介してくださり感謝です。
      ありがとうございました♪
      これからもよろしくお願いします!
      2023/02/20
    • ひゃっほうさん
      こっとんさん、嬉しいコメントをありがとうございます!
      確か私もブクログか他のSNSで知ったのですが、とても良い本ですよね。
      こちらこそ、これ...
      こっとんさん、嬉しいコメントをありがとうございます!
      確か私もブクログか他のSNSで知ったのですが、とても良い本ですよね。
      こちらこそ、これからもよろしくお願いします!こっとんさんのレビュー、いつも拝読しています。
      2023/02/20
  • “ゲーム買うのやめるからさ、その代わりニワトリ飼わせて”

    小6の長男が、欲しいと何度かねだっていたが、面倒が増えると思い取り合わなかった。その長男が「納得できない!」と飛び出して行った。が、電話が入り冒頭のセリフ。

    自分で〈にわとり飼育計画書〉を作り、大家さんにプレゼン。土地も見つけてきた。なぜ、ニワトリを飼いたいかというと「たまごがとれるから」

    卵が取れたら、売る。そのために、どんな餌を与えればいいのか。どうやって売るのか。母の予想を裏切り、危なっかしいながらも、しっかりした計画で動く長男。しっかりついでに「ジュニアニーサ」も始める長男。なんか、ついて行きたい。

    “採卵率が落ちる2年ぐらいで絞める”

    セリフが経営者だ

    長崎に移住して暮らすこの家族

    近所に「オイ、猟師やけんね」というオジサンがいて、たまにいただく猪の肉で、解体から食卓への距離は近かったのかも。長男くんも鶏を絞めることも、なんとか、やる。いろんな大人のサポートを受けて、長男くんは養鶏を進めていく。

    そこに、コロナからのお父さんリストラ。で、お父さんが養鶏に手を出すようになるという。

    なかなかのおもしろい家族。

    この本を書いているのはお母さんである。

    母として、長男くんをおもしろがりながらも、まだ子供だし、と思って子供のやることに制限をかけてしまったりする。それに、ついての葛藤もある。

    先日、話していた友達が

    “母親は子供にとって『神』みたいになってしまうことがあって、怖い”

    と言っていた。

    自立して欲しい、と思う親の気持ちと
    どこかで“子の命を守る”親の使命感があり
    まだ子と繋がっていたい気持ちがあるのかと
    自問自答していることが書かれていて
    子と同じで、親も子から離れるという意識をこんなにも持つものなのかと

    って、この本ホントにおもしろくて、一晩で読んでしまった。物語の運びや、文章の流れがとても合うというのもあるかもしれない。

  • すごい行動力がある子供たち。今の我が家では考えられない。まったく別世界を見ているようだった。

  • 子どもが三人もいれば、一人くらいはやりにくい子どもがいるものだ。やりにくいから良くないのではもちろんない。世間の価値観を安易に受け入れず、自分で考え、疑問を持ち、納得できないときはとことん議論する。こういう資質は、素晴らしいものだ。が、家庭や学校にいると(大人の心や生活に余裕がないこともあって)なかなかすんなりと受け入れられない。
    大抵の子どもは大人の要求が理不尽だと思っても、受け入れないと毎日の生活が滞るので、仕方なく呑み込むが、著者の長男は、とことん議論派。一歩も引かない。
    養鶏を始めた息子との関係、食べることと生きることについて、柔らかい言葉で綴っているが、内容は深く考えさせられるものだった。

    著者も一般的な親と比べると十分彼の意見を聞いているし、柔軟に対応しているのだが、子どもはよその家庭がどうなのかは知りようがないので、(私なんかから見れば十分に受け入れているようでも)不満なのである。また、(立派なことを言う割には)子どもだから、未熟なところ、抜けているところもあり、親はイライラすることもある。
    思春期の子どもを持つと、親だって悩む。こういう子どもを持ったらなおさらだ。親だって初めての体験だから、試行錯誤していくしかない。
    一方、子どもの、自立したくてもその手段のないやるせなさ、精一杯頑張ってもなお親の比護の下にいなくてはならない苦しさも伝わって、本当に胸が締めつけられた。
    他人から見れば自分をしっかりと持ったたのもしい少年だなぁと思うが、我が子だったらやっぱり大変だろうなと思う。
    読んでいて自分が思春期の頃のことまで思い出したりした。
    思春期以降の子どもと親の関係は難しいが、会社と株主の関係に似ていると書いてあり、なるほどと思った。
    それくらい客観的に見るべきなんだな、一人の別の人間なんだもの。
    この間まで柔らかい手足をした小さな子どもだった記憶があるから、なかなか難しいけれど。

    長男だけでなく、両親と兄のやり取りを見ている下の子どもたちも、今は言葉にできなくても、幼いなりにいろんなことを考え、感じている。それが彼らの生き方を作っていくだろう。そのあたりの部分がほの見えるところもとても良かった。

    子育てをしている人、生きること食べることについて考えている人に是非勧めたい。素晴らしい本。

  •  思春期を迎えた長男が養鶏を通して自立への階段を登る姿を、母親の目線で描くフォトエッセイ。
     本編4章と、序章およびあとがきからなる。

         * * * * *

     凄まじい一家だと思いました。

     東日本大震災が直接の引き金になったとはいえ、東京から長崎への移住は「勇気がある」程度ではできないことです。
     その原動力になったのは、繁延あづささんの持つ野外写真家ならではの好奇心や思い切りのよさなのだと思いました。

     彼女の好奇心と思い切りは長男のあやめくんにもみごと引き継がれています。

     このあやめくんが、実にパワフルなんです。
     心に渦巻くマグマを噴出させるように何に対しても全力でぶつかります。養鶏に取り組むのも、親に反抗するのも、すべて全力です。
     それを同じく全力で受け止める母のあづささんもさすがです。狩猟写真がライフワークというだけあって、すごいパワーだと思います。

     子育てに要する膨大なエネルギーこそ子育ての醍醐味の証しでしょう。
     このエッセイが魅力的なのは、その醍醐味がほとばしるような面白味を感じるからで、それはつまり、子どもたちに振り回されつつも、あづささん自身が子育てを楽しんでいるからに他ならないのではないでしょうか。

     ついでながら、あづささんの夫君が惣領の甚六タイプなのもよかった。
     息子に「あわれ」と言われて拗ねる姿は『ドラえもん』ののび太くんのようです。( 次男のあおいくんが少し受け継いでいるみたいです。)

     「生命」と「食」について深く考えさせてくれると同時に、子育てに全力を費やす著者の姿に、元気やパワーを分けてもらった気がするエッセイでした。

  • 弁護士会の読書:ニワトリの卵と息子の思春期 (2022年4月11日)
    https://www.fben.jp/bookcolumn/2022/04/post_6812.php

    「ニワトリと卵と、息子の思春期」繁延あづささんインタビュー 命を頂く宿命、思春期の少年が向き合う【Podcast】|好書好日(2022.3.11)
    https://book.asahi.com/article/14558057

    【2021年11月30日発売】ニワトリと卵と、息子の思春期 | 婦人之友社 生活を愛するあなたに
    https://www.fujinnotomo.co.jp/book/essay/b2406/

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      命の重さと親子の関係性を問い直す"気付き"にあふれた奮闘記:わが店のイチオシ本(vol.50 ときわ書房 志津ステーションビル店) | ほん...
      命の重さと親子の関係性を問い直す"気付き"にあふれた奮闘記:わが店のイチオシ本(vol.50 ときわ書房 志津ステーションビル店) | ほんのひきだし
      https://hon-hikidashi.jp/bookstore/151591/
      2022/07/12
  • 長崎で暮らす写真家の著者、小六の長男が突然にわとりを飼いたいと言い出した。ペットとしてではなく、家畜として卵をとろうと考えている。養鶏家から3羽をわけてもらうところからスタートし、卵を売り年をとったにわとりを絞めてさばき…。長男の成長記と思いきや、著者や父親である夫、弟・妹という家族の歴史だった。
    著者夫婦の子育てに、批判的なことを言うのはたやすい。だが、試行錯誤中の長男のこれからを楽しみにしたい。ある種たくましさを感じる家族だ。

  •  ニワトリを飼って、産みたての卵を食べたいと何度か思ったことがあります。大人の安易な考えです。
     子どもの、ゲームがダメならニワトリ買ってという発想が面白いですね。ただ飼ってみたいという興味本意の思いつきではなく、土地はどうするか、においや近所への迷惑はどうか、えさはどうするか、等、自分で調べて、親を説得して、どんどん行動に移す子どもの情熱がすごい。応援したくなります。
     ニワトリはペットではない。だから名前はつけない。卵は売ってお金にする。最後は、絞めて食べる。はじめからそこまで考える⁉︎ 思春期に命を肌で感じながら育つ子ども。計画通り、自分で絞める。捌いて食べる。たくましいな。親も心配や不安はあっただろうけど、子どもはニワトリからたくさんのことを学び、これからの生き方にも関わる、かけがえのない経験ができたと思います。
     産みたて卵を食べたいなんて、簡単なことじゃない。食べ物、生き物への考え方が変わります。

  • 思春期の息子が、ゲームを買う代わりにニワトリを飼うと言い出したら?!私が親だったら反対したい。面倒くさそう。著者も初めは乗り気でないが、協力者を見つけ、ちゃっかりニワトリを飼う土地を借りる交渉までしてしまう長男の行動力に巻き込まれていく。初めは順調そうだったが、夏の暑さで弱ったニワトリを死なせてしまう。畑に埋めたあと、「生きてるってすごいことだね」という長男の言葉に大きな学びを感じる。その後も、たびたび親子げんかをし、時には家出までする思春期の息子にハラハラさせられるが、「夫婦の鎹が子どもなら、わが家の思春期の鎹はニワトリだったのか」と著者が言うように、生き物がいることで、嫌でも家族が関わり合い、責任を持ち合うことは、子どもだけでなく親にも様々なことを教えてくれたと思う。ニワトリを飼うことは、ゲームを買うよりずっと良い選択だった!

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著者プロフィール

写真家。兵庫県姫路市生まれ。桑沢デザイン研究所卒。
2011年に東京。中野から長崎県長崎市へ引っ越し、夫、3人の子ども(中3の長男、中1の次男、6歳の娘)と暮らす。雑誌や広告で活躍するかたわら、ライフワークである出産や狩猟に関わる撮影や原稿執筆に取り組んでいる。
主な著書に『うまれるものがたり』『永崎と天草の教会を旅して』(共にマイナビ出版)など。現在「母の友」および「kodomoe」で連載中。

「2020年 『山と獣と肉と皮』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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