吸血鬼の花よめ―ブルガリアの昔話 (世界傑作童話シリーズ)

著者 :
制作 : 八百板 洋子 
  • 福音館書店
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本棚登録 : 41
感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784834013665

作品紹介・あらすじ

小学校中級から。

感想・レビュー・書評

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  • ブルガリアはバルカン半島にある国。北はドナウ川とルーマニア、西はユーゴスラヴィアとマケドニア、南はギリシアやトルコと隣り合っています。東西文化の接点だったブルガリアの昔話はどれも一味違って魅力的。タイトルと表紙の挿絵を見ると、不気味で怖い感じがしますがその怖さに魅かれるのがまた不思議です。挿絵が美しくも不気味さを漂わせていてお話の雰囲気にぴったり。
    ・石灰娘
    石灰で作られた美しい娘のお話。好きになった若者が自分の正体に気付いてくれるまで口を聞いてはならないという呪い(?)がかかっている。鼻をちょんぎったり手を火の中に入れるという描写ははじめギョッとしたけれど、次第に滑稽な映像が見え、可笑しくなってきた。石灰(づくり)の説明を少ししてからお話するのが良いと思う。
    ・ムクドリとブドウの木
    今までに出会ったことのないようなタイプの昔話。ムクドリはいつか罰があたるのではという期待に反して和やかな結末。何だか肩の力がふっと抜けて、こんなお話もあっていいかもと思った。
    ・パーベルじいさんの光る石
    火からトカゲを助け、願いの叶う不思議な光る石をもらったお爺さん。その後は日本の昔話「うろこだま」にそっくりでびっくり。でも追いかけるのは猫とアヒル。渡る川はドナウ川。同じ展開でもこちらは壮大さを感じる。結末が少し違う。お爺さんは取り戻した石を手放し、亡くなった後にはトカゲが取り戻しに来る。日本の和やかな終わり方よりも、ちょっと不気味な余韻を残す大人向けのお話になっている。
    ・吸血鬼の花よめ
    末の姫の好きになった若者が吸血鬼になってしまうお話。怖くて不気味な雰囲気だけれど最後にはお互いの愛の力が試され、よい結末に。「もう、どんなおそろしい魔物ののろいも、ふたりを二度とひきさくことはできませんでした。」という締めくくりに心から満足。
    ・たまごを売って子ブタを買って
    一度語りで聞いてからこのお話は面白いというイメージが離れない。一言で言うと「取らぬ狸の皮算用」的なお話。短いけれどテンポよく、誰もが心当たりのあるようなお話でクスクスしてしまう。
    ・月になった金の娘
    なんて切ない話でしょう。「テイザン」や「ホレばあさん」「森の家」を思い出します。継母にいじめられ不思議なお祖母さんに出会う娘のお話。継母の娘も真似をするが、痛い目にあってしまう。小さな生き物たちは「ヘビとトカゲとカメ」。赤や青や黒や金の川が印象的。結末が「おしらさま」のよう。
    ・ふしあわせさん
    語りで聞いたときとても温かくて心が満たされた。なんでもないお話なのに兄弟の成長や父と息子たちの絆がしっかり伝わってくる。
    ・ふしぎな小鳥の心臓
    冒頭またヘビが出てきます。爬虫類が多く生息するのかな?小鳥の胃袋を食べて毎朝金貨を得る力を得た兄と、小鳥の心臓を食べて人の心が読めるようになった弟のお話。あくどい姉妹のお姫様に胃袋を奪われるが、不思議な白ブドウと黒ブドウの力で仕返し。仕返しにはちょっとひどすぎるのでは?と思いきや最後の一文が弟の能力と関係したうまいしめくくり方でなるほどねと思った。
    ・カメのおよめさん
    「三枚の鳥の羽」のようなお話。運任せで選ばれた末っ子のお嫁さんはカメ。ところが昼間、カメは美しい娘に変わる。それを知った王様が末っ子に難題をふりかけ娘を奪いにやってくる。これを助けるのはまたまたカメのおよめさん。黒い森よ…と唱え力を借りる。色々なお話が交じり合ったような昔話。最後、鉄の大男がずしーんと森にやってくるのが印象的。
    ・スモモ売り
    とても短いほっこりするお話。「ごみとスモモをとりかえる」と言って息子にお嫁さんをさがすおじいさんのお話。ごみがないと言って涙ぐんでやってくる可愛らしい娘さんが探し求めていた人。
    ・悪魔とその弟子
    仕事を覚えない息子と教えたことを覚えるとその者を殺してしまう悪魔のお話。母親が井戸で「おーふ」とため息をつくと「どうしてわしを読んだのだ」と出てくるのが悪魔のオーフ。挿絵がドキッとするほど怖い。後半はハラハラドキドキ。悪魔から逃れるための変身合戦。「こうして、この世から、最後の悪魔は、姿を消してしまいました。」「最後」というのが私たちをホッとさせる。
    ・つばさをもらった月
    寂しい老夫婦のもとへやってきた可愛いカモ。実はこのカモは昼間は娘となってよく働き、その正体は月だという。なんとも不思議なお話。少し「鶴のおんがえし」のよう。遠い国のお話だけれどカモが娘に変身する場面など鮮やかに絵が浮かんでくる。老夫婦が娘を留めたい思いで羽を焼いてしまい、森の鳥たちに一本ずつ羽をもらわなければならなくなる。娘は月に戻ってしまうけれどその月は今までに見たことのないような明るい月。神聖的な雰囲気もあるお話。

  • あまり見ることはないであろう
    ブルガリアの童話です。
    どこの国にも似たような物語はありますが
    ブルガリアのお話はあまり一攫千金系は
    少ないように感じました。

    よくある一攫千金系はあるのですが
    最後の展開が違います。
    教訓の意味合いではすごくベストな終わり方です。

    ハッピーエンドのお話も面白いですが
    そうでない切ないお話も
    すごく作品としてはよいです。
    「月になった金の娘」はおすすめです。
    いろいろ考えさせられますし。

  • 知らない話ばかりだったが、どことなく知っている昔話との共通点もあったことが不思議だった。
    意外だったのはムクドリとブドウの木の展開。さんざんブドウの木の世話を断った挙句、ブドウが実ったときだけおじいさんについて行ったムクドリは最後に痛い目にあうのではないかなと思って読み進めていたが、結果的におじいさんはムクドリがうんだ子どもたちの成長を喜んで、ムクドリにブドウをあげていた。なんだかほっとするような話だった。
    小学生の時にえほんで読んだ「月の天使」が「つばさをもらった月」としてのっていたのが懐かしかった。ブルガリアの昔話だったことをこの本をよんで初めて知ったのですこし驚きました。

    <小学校中級から上級>

    *****

    石灰娘の王子に思わず「おい!」て突っ込んでしまいました。そうですよね、婚約者いてもあっさりそっちに行っちゃうんですよね……おとぎ話。
    あとびっくりしたのは「ふしぎな小鳥の心臓」兄弟はふつうにお姫様姉妹と結婚するのかとおもってましたら……お姫様たち悪っ(笑)!彼女たちの父王が民から高い税を取り立てていたっていうのは、一つの伏線だったのか、とあとから思いました。
    ブルガリアの昔話はどれも一回の展開で終わらず、二三続くのが多くてそれが面白かったです。

  • 傑作

  • 短編集。ぜんぶのはなしが割とすき。
    悪魔とかでてくる。
    スープとか飲みながら読んでる。
    いつのまにかまた読んでる。

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著者プロフィール

1946年福島県生まれ。ソフィア大学大学院に留学。『吸血鬼の花よめ』(福音館書店)で日本翻訳文化賞、『ソフィアの白いばら』(同)で産経児童出版文化賞を受賞。2011年、ブルガリア共和国文化省より文化功労賞をうける。

「2022年 『高橋真琴のおひめさまものがたり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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