エイラ 地上の旅人(6) マンモスハンター 中

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  • Amazon.co.jp ・本 (456ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784834251104

感想・レビュー・書評

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  • あいかわらずゆっくりと進む。エイラ18歳の冬から春の冬解けまでのお話である。
    (あらすじ)
    旅の途中、思いがけぬ愛の相克に悩むエイラ。
    マンモスを狩る一族のもとでの暮らしが始まるが、エイラの心は一族の彫り師ラネクとジョンダラーとの間で揺れ動く。嫉妬でひびの入ったジョンダラーとの絆をどうするか、エイラは決断を迫られる。

    Amazonの説明は以上。この三角関係の描写はまるで韓国のメロドラマなので、飛ばして読んでOK。魅力的なのは、あいかわらずクロマニヨン人の一族の描写である。エイラはいったんライオン族の一員となる。そのための儀式が終わったあと、ひと冬を過ごす間に、エイラは親を亡くした子狼を一族に迎え入れる。

    その間に、蒸風呂や複雑な毛皮の洋服の作り方、エイラの縫い針の発明、骨で作る鍬や鋤など様々な驚くべき「技術」が紹介される。

    それよりも、興味深いのはときおり起こる諍いに対するこの一族の解決法である。

    「ここに〈話の杖〉がある」タルートはそう言って杖を高くかかげ、自分の言葉をさらに強調した。「これよりこの問題をなごやかに話し合い、誰にも公平な解決をはかろうではないか」
    「母なる女神の名において、誰であろうと〈話の杖〉の名誉をけがさぬように」トゥリーがそう言い添えた。「さて、最初に発言したい者はだれ?」(328p)

    マンモスの骨で出来たテントの中で約20人ぐらいが生活している一族。村の決め事や諍いは全員一致が原則でこのように徹底的話し合われる。

    エイラが元いたネアンデルタール人の氏族では、意見を主張し合う場はあったが、最終的にリーダーの決定に、意に沿おうと沿わまいとみんな従わねばならなかった。エイラはその方がいいと思っていたし、クロマニヨン人のリーダーのタルートには人々を抑える力を持っていないと疑っていた。しかし、実際はタルートは騒ぎが一線を越えてまで大きくなることを許しはしない。自らの意思を押し付けるだけの力はあるが、タルートはそんなことはせずに、人々の合意を取り付け、意見の歩み寄りと擦り合わせをうながすことで族を束ねているのである。タルートは人々を重んじることで、人々から重んじられているのである。エイラは次第とそのことに気がついてゆく。

    これは、「言葉」によって社会生活のあらゆる革新を成し遂げて来た我々の祖先(クロマニョン人)が、必然的に身につけた「知恵」だろう。

    かのヒトラーは「人間が生きたり動物界の上に君臨したりするのは、人間性という原理のおかげではなく、ひとえにもっとも残忍な闘争のためだ。」と主張したという。

    しかし、そうではない。「エイラ地上の旅人シリーズ」を読めば読むほど、闘争ではなく、話し合いと助け合いこそ、人間を他の動物と違うものにしたのだと思い知る。

    2013年11月1日読了

  • この二人めんどくさー
    と読み終わってすぐに思ってしまいました。
    自分が思っている事は思い切って話すべきだと二人っきりのときに学んだと思うのですが…
    ウルフ可愛い。

  • 上巻から引き続きの三角関係。
    初めて出会ったゼランドニー族の旅人の男ジョンダラーと共に、エイラは住み慣れた洞窟を離れ、”マンモスハンター”といわれるマムトイ族のすみかに赴く。客人としてもてなされる間に、薬師としての技、新しい投槍器という道具、馬を使った新しい狩り、ライダクという、氏族(ネアンデルタール人)との混血児と心を通わすための身振り手振りで話す方法、エイラのもたらしたものは大きかった。
    遂にはマムトイ族ライオン簇の簇長タルートから縁結び(養子)をし、マムトイ族になって貰いたいとの申し出を受ける。
    エイラはその申し出を受けることにした。エイラにとっては喜びだった。
    「一族を持たない女、エイラ」が、「マムトイ族のエイラ」となるのである。
    3年に及んで作り溜めた毛皮や籠、薬草から作った薬、様々な木の実など、縁結びの贈り物の交換にエイラが差し出したのは、簇のものが驚くような素晴らしい品々であった。
    実は内心、「平頭」に育てられた女の作るものなどたかがしれている、と、馬鹿にしていたのだったが。
    エイラは、受け入れられた喜びをかみしめていたそのとき、ラネクから誘いを受ける。

    氏族の女は、よくしつけられていれば、男の誘いを断ったりしない。いや、それは誘いではない。命令であり、決定である。決まった合図をすれば、その場で男を受け入れる姿勢になるようにしつけられる。それは、その生きもの全体のしきたりであり、疑問を差し挟む余地はない。そもそも、氏族は男女間の役割がはっきりしており、それぞれ異性の持つ知恵としての記憶を持ち得ないことから、互いに踏み込むことはあり得ない。
    何でも記憶ではなく、興味からの習得が主な学習方法であるエイラは、多く、異分子であった。
    しかし、エイラは一族のなかでも高い地位のモグール(氏族全体の祖霊を祭るものでもある、最も地位の高い聖職者)、最も優れ、身分の高い薬師の集う炉辺でしつけられた、「しつけのよい女」である。
    エイラはラネクから「口づけ」と「ことば」をかけられたことを「合図」と判断し、寝床を共にする。
    それにジョンダラーは苦悩する。
    「独り占めしたい」と、これほどに懊悩する自分が信じられない。でも、エイラは初めて愛した女だ……。

    このエイラをつれあいに持ちたいラネク、ゼランドニー族の住む土地まで連れ帰りたいジョンダラーの三角関係がこの巻の焦点だが、周りの反応は現代とは違う。「ジョンダラーとエイラの関係に、ラネクを招けばいいのに。エイラを2人の男が共有すれば、事は済む」である。
    考えてみると、現代と違い、出生児の多くが命を落とすか、出産に危険がまとわりついていた時代、健康な子どもを産む女が重要であり、しかも、男と女の交合が子をなすこととはとらえられていない時代では、何よりも頭数を増やすことのできる“女”が重要だ。一族の基本は女にあり、男はどうでもいいのである。
    ただ、エイラが了承すればよいのである。
    実際、簇の女がダンナとの炉辺に別の男を招いているシーンも挿入される。

    考えてみると、もとは「習慣」のはずなのに、善悪にすら関わることはいくらでもある。
    二股はいけない。全裸では、外を歩いてはいけない。そういえば、昔読んだ「パパラギ」でも「女が腰蓑を着けるから、男たちは見たくなるんだ!」と書いてあった気がするなあ。
    いっそのこと、この習慣、やめる?
    いーえ、うらやましいから言っているなんてことはありません。

    三角関係がどうなるのか、下巻に続く!



    この話は、皮のなめし方、竪穴式住居の作り方、狩りの仕方など事細かに書かれていて、3万5千年前に、一気にタイムトラベルできます。

    某サイトより転載

  • 縫い物の「針」の発明
    狼→犬として人間と暮らすこと

  •  引き続きジョンダラーかわいそうの巻。
     ……下巻への引きが強すぎてどうだろうなぁ……という感じ。

  • H23.7.30

  • 「野生馬の谷」の続編。

    前作よりはよかった。今作は、恋の三角関係を軸とした内容。

  • マムトイ族になったエイラ。村の人たちにもすぐ馴染んでいって、ラネクから、つれあいになろうと申し込みをうける。この巻では、村での暮らしを中心にしてジョンダラーとラネク、エイラの三角関係が描かれています。か〜なり分厚い本だけど、え?この先どうなるの...って感じでかなりの勢いで読めました。

  • ただいま6冊目。あちこち読み散らしながら、これは精読。
    そのためには子供が寝ている時間か、幼稚園にいっている時間か・・・
    ぶあっつい割にはするするすすみます。

  • ていうか、表紙裏の地図に今気づいた。

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