エイラ 地上の旅人(12) 故郷の岩屋 中

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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784834251166

感想・レビュー・書評

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  • 葬式。育児放棄の両親と母親がわりの姉。
    身分の問題。
    夏のつどいへ。
    ゼランドニとマルソナのコンビがいいなと思いました。

  • 3万5千年の昔、クロマニヨン人とネアンデールタール人が一緒にヨーロッパで過ごしていた頃、エイラは現在ではフランスになっているゼランドニー族の居留地に到着した。
    思えば長い旅だった。ヨーロッパ横断に近い長旅(シリーズ第4集「平原の旅」)はもとより、異なった人々との暮らし(シリーズ第1集「ケーブ・ベアの一族」)、長い一人暮らしと動物たちと心通わせ、“異人”という同族との出会いを果たし(シリーズ第2集「野生馬の谷」)、自分を家族のように受け入れてくれる同じ身体を持つ人々、そこでは同年代の友だちを初めてつくることにもなった(シリーズ第3集「マンモスハンター」)。

    そこには、心通わせるものがいると同時に、多くの試練があった。一つひとつは常にあるものより大きな試練であり、それを乗り越えることによって得たものは多かった。
    時には身をえぐられる想いもあったが。身体のつくりを異にする氏族――ネアンデルタール人との暮らしは、エイラの身体を頑健なものにした。
    わたしたちに近いクロマニヨン人より強い筋力を持つ彼らの中で生活する以上、それと同等の働きを求められたからである。
    さらに、氏族中最高の薬師イーザから、癒やし手の技を教授された。イーザはエイラの養母で、癒やし手らしく、傷ついたものを放っとけない質だった。

    彼らは記憶を遺伝として受け継ぐ。膨大な量の知識を「覚えの悪い子」として身につけていく内に――氏族は記憶を保存して生まれるので「思い出す」だけで済む――驚異的な記憶力を副作用として持った。
    他にも、得たものはある。彼らの特殊な言語は二重の意味を持つ。「仕草」を主体としている言語は、観察力を必要とする。そのため、「音声言語」を使う我々の無意識の仕草など、感情丸見えという具合に見えてしまう。
    さらに、異人が「平頭」と呼び、言葉を介さぬ熊に近い生き物とすら蔑む氏族のものとの意思疎通ができる。

    氏族は生来の「記憶」の中に、太古よりの言語をもっている。日常語はともかく、古い言葉は、遠くの氏族でも理解しうる。他にも、氏族中最高のモグール(霊界との通信者。宗教的指導者のようなもの)であるクレブ――クレブとイーザは兄弟で高い地位にある血脈と言える――と炉辺を共にしていたことで霊的な環境も身近にあり、イーザの代理としても、氏族のモグールの秘技中の秘技を体験することにもなり、第六感のようなものも身につけていった。といって、これは望みはしていないのだが。

    長い一人暮らしは、この上ない自立をもたらす。素早い判断と行動が生死を分ける。怪我や病気にでもなれば、助けるものは一人とていない。
    そんな生活を何年もしたのだ。そのうちに、様々なタブーが無くなる。良心に悖ることはしないけれど、実験的なことや自分の好きなことに集中してすることもできる。
    集団の中でいたら絶対に赦されなかったろうし、しようとも思わなかったろう、動物を飼い慣らしたのもその一つだ。
    生き物そっくりの口まねをすることもできる。さらに、フリントと黄鉄鉱を偶然打ち合わせた際に出た火花を見てひらめき、今で言う火打ち石を発見もした。さらに、道具造りなどの腕を磨いていった。また、氏族の扱う石投げ器を元に、槍投げ器をジョンダラーと考案した。
    苦手なのは縫い物だった。どうしても、穴を空けて、そこに動物の腱を押し込み、突き通すことが上手くできない。そこで、糸引き具を考えついた。今でいう針である。

    このように、様々に役立つ発見や能力が備わっているエイラ。しかも美しい。
    そして何よりの美徳は、人々の心を察するのに長け、癒やしの技を惜しみなくふるうことだろう。
    しかし、彼女も失ったものは大きかった。初めて産んだ息子、ダルク。氏族との子は置いてかざるを得なかった。しかも、氏族との子を「畜人」とし、産んだ人共々差別さえする人々の中でこれから暮らすことになる。
    しかし、所属する一族を欲しているエイラにとって、愛するジョンダラーと共に暮らし、ゼランドニー族に受け入れられ、腹の中の子を産み育てていくことは何よりも欲している。これまでの経験から、エイラはこれまでに無く慎重になった。

    様々なエイラの能力の内、今回は、霊的な力の目覚めがあるのだろうか。霊的な儀式が話の多くを占め、神話の記述にページを割いている。その中心となるのは、ジョンダラーの元思い人、現在の大ゼランドニである巨体を持つ女。
    当時の地上に存在する共同体の中でも、突出して大きな一族の霊的側面を束ね挙げる、最高神官にあたる人物。
    彼女は、エイラの能力に目をつけ、何とか引き入れたいとの思いを持ってもいた。巻を重ねるにつれ、多くの要素が絡み合い、今回はこういう話、とは言いづらいが、やはり第5集は集大成になるのだろう。
    自分の力を見直し、共同体にどのように貢献できるか。そうしたことを想起させる、細かな生活の中の描写もあちこち見られる。

    共同体が大きくなれば、働かずに暮らすものや、恵まれない境遇で育つものも生まれ、また、地位が重要になっていく。交易が生まれ、交渉をすることも起きてくる。様々な、人類の始原を見て取る思いにもなる。

    某サイトより転載

  • 氏族;飾り気のない形状と実用性が美点
    異人;衣類・装飾品・入墨等が人の特徴をきわだたせ人となりを明らかにする

    馬の有効性とそれに伴う「世話」という余計な仕事が見合うのか?九の洞の洞長ジョハランの思索

    氷河近くに住む動物全てが、密生した保温力のある毛皮をまとうことで寒冷な気候に適応した
    豊富な食料に惹かれ、動物より遅れてやってきた毛皮を持たない人間は「火」を扱うことで適応した
    ドニー=人生経験を積んだ、むっちりと豊満な女性。身ごもってはいないがその経験はある、女が豊満な体形を獲得するには食べ物が豊富でなければならない、「豊かさ」と「気前の良さ」の象徴
    贈り物は義務をつくりだす、何かもらったら同じだけの値打ちの品を返さなくてはならない
    個人を主体性を重要とする集団でさえも、「集団」は個人の自由を制限する、なぜなら生き延びるためには共同体としての必要性も重要だから
    集団が協力すれば、余暇が生まれ、美学的な感覚を開くことができる
    数人の語り部が一緒に旅をする、歌や踊りに秀でた者、音楽を奏でる者も同行、神話・伝説・歴史・個人の冒険譚・近隣の噂話

    灰汁+脂肪=石鹸

  • H23.9.21

  • もっとトラブルありの盛り上がりを期待していたのだが、いたって平凡な生活に馴染んでいく様が描かれている。

  • ゼランドニー族の夏のつどいに向かう話です。とりあえすエイラは族のみんなには受け入れられて、平和な感じです。いつもながら分厚い本ですが、読み始めると意外と速く読めます。

  • ゼランドニー族は洞穴の人口も多いだけあっていやな人もいるのねー。

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