新版 歴史の終わり〔下〕: 「歴史の終わり」後の「新しい歴史」の始まり (単行本)

  • 三笠書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (289ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784837958017

作品紹介・あらすじ

◆歴史を前進させる「原動力」とは?
これから世界の、日本の歴史はどう進むのか?


・人間の「優越願望」が歴史に与える影響

・歴史から見た日本人の「労働倫理」

・「権力」と「正統性」との力関係

・脱歴史世界と歴史世界

・「歴史の終点」には何があるのか


人間の歴史の進展を、たんなる人命の保全と財産追求以外の
視点からとらえる、深い洞察と知的刺激に満ちた大著!

【かつて、これほど世界中で話題をさらった歴史書はない。
人間の可能性とゆくえを鋭く示唆し、
実に歯ごたえのある本だ。 渡部昇一(上智大学名誉教授)】

感想・レビュー・書評

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  • 本書の論点は。主に以下の2点だろう。
    1.歴史は、人間の本来的に持っている承認欲求(気概)により構築されてきた。
    2.様々なイデオロギーが弁証法的に淘汰しあい、それらがリベラルな民主主義に止揚(アウフヘーヴェン)されたときに歴史は終わる。
    歴史は、人間が本来持っている承認欲求(気概)により構築されてきた。承認欲求(気概)のために死んでも厭わない者は貴族や支配者、死ぬのは御免だと考える者は奴隷となる。貴族や支配者は自らの承認欲求のために戦い、奴隷は承認欲求を満たすために知識・技術を身につける。
    このそれぞれの立場の人間の承認欲求に基づく行動の結果が、王政、帝国主義、軍国主義、全体主義、共産主義などの政治形態を生み出した。これらの政治的イデオロギーは弁証法的に淘汰され、最後にリベラルな民主主義に止揚されたと主張する。
    この主張は、承認欲求を(多分)あまり持ち合わせていない私にはあまりピンとこない。歴史は本当に承認欲求(気概)により動いているのか?承認欲求を満たす行動に走りすぎるよりも、穏やかな生活を送ることができればよいと考えている人間は大勢いると思われる。いや、このような人間は、昔でいうところの奴隷に相当するのだろうか。すなわち、奴隷たる私たちは、それぞれの組織の昇給、昇進、事業拡大などに向けて、己の承認欲求を満たすべく日々行動していることになるのであろうか・・。
    近年の世界動向も気になる。中国の覇権主義やロシアの軍事侵攻などは民主主義に対する脅威であるが、民主主義はこの脅威を乗り越えることができるのだろうか。また、民主主義の中においても、新自由主義的な潮流は再び貴族と奴隷を生み出しているのではないか。著者の理論では、前者は紆余曲折(ひょっとすると大変な惨禍を含むかもしれない)を経つつもきっと乗り越えられ、後者も奴隷の承認欲求を満たす行動がこれを解決するのだろう。どちらも、歴史の法則性からみたら一種のゆらぎと捉えられるという理解なのだろう。

  • 歴史の終わり
     第3部 歴史を前進させるエネルギー 「承認」をモティーフ闘争と「優越願望」
      4 「赤い頬」をした野獣-「革命的情勢」はいかにして生まれたのか
        最貧国と最富裕国だけが安定する構造
        一本のソーセージと引き換えに売り渡される自由
        ベルリンの壁に風穴をあけた「テューモス(気概)」
        中国に吹きはじめた「自由な風」

      5 人間の「優越願望」が歴史に与える影響
        マキャベリの「栄光への欲望」と「優越願望」
        歴史の流れに強いられた「サムライの変質」
        野心を用いて野心を制する「チェック・アンド・バランス機構」
        ヒトラー、スターリンに見るマキャベリ的「優越願望」
        深い「矛盾」のなかに取り残された現代人

      6 歴史を前進させる「原動力」
        「主君」よりは「奴隷」のなかにこそある真の自由、大きな自由の芽
        不平等のなかにこそある「真の平等」
        人間が作った「神」の力の限界

      7 「日の当たる場所」を求めて戦う人間と国家
        自由な目と頭をもつ子供の誕生
        歴史の終わりに登場する「普遍的で均質な国家」の中身
        より高い合理的精神に気づきはじめた最後の「奴隷制社会」
        人間を完璧に満足させる「歴史の最終段階」

     第4部 脱歴史世界と歴史世界 自由主義経済成功に絶対不可欠な「非合理な”気概”」
      1 冷たい「怪物」-リベラルな民主主義に立ちはだかる「厚い壁」
        国家と民族とのただならぬ緊張関係
        「文化」が民主化への大きな障害物となる理由
        プロテスタンティズムが生んだ「自由の精神」
        中央集権化の強度と民主主義の強度の相関関係
        「国の舵取り」としての指導者の政治力
        民主主義の「突然変異」

      2 歴史から見た日本人の「労働倫理」
        欲望よりは自分の「気概」を満足させるために働く人間の登場
        ウェーバーの「亡霊のごとく生きている労働倫理」
        「武士道」が日本の資本主義にもたらした偉大な影響
        経済発展に絶対不可欠な「非合理的な気概」
        日本の繁栄を裏から支えている特異な「労働倫理」
        自由主義経済の「偉大な生産性」にブレーキがかけられるとき

      3 新しいアジアを生み出す「新権威主義の帝国」
        欧米先進社会に挑戦する家父長的「アジア社会」
        日本社会に残っている生産的な「専制主義」
        経済成長の最大の脅威となる「悪平等」
        世界史の決定的な転換点にある日本

      4 もはや万能ではなくなった「現実主義」
        「最悪の国家」の政策にしてはじめて可能な「最良の国家」
        国際政治における唯一最強の「通貨」
        国家体制を形成する「正統なシステム」と「革命的なシステム」
        万能ではなくなった「現実主義」の重大な弱点

      5 「権力」と「正統性」との力関係
        軍備増強と領土縮小による「力の最大化」
        イギリスが植民地にしがみつかなかった最大の理由
        強大なワルシャワ条約機構を崩壊させた正統性の変化
        近代国家に昇華された「貴族的な優越願望」
        様変わりしていく「戦争の経済学」
        驚くべき歴史の方向転換を支えた民主勢力の「確かな目」
        「現実主義のものさし」だけでは決して計れないこれからの世界

      6 国家主義と国益の経済学
        意欲に燃え猛威を振るった「近代国家主義」
        ヨーロッパが体験した途方もない非合理性
        半永久的な「流刑」に処せられた宗教
        ようやく目を覚ました「眠れる獅子」たち
        「三つの点」で確実に生まれ変わりゆくヨーロッパ
        国家主義がリベラルな民主主義国にもたらす「催眠効果」

      7 脱歴史世界と歴史世界-二極に大きく分かれいく世界
        脱歴史世界と歴史世界間の衝突を引き起こす「移民問題」
        歴史を逆流させないための最大の「保証書」
        二十世紀の絶望的な嵐から身を守る「避難所」

     第5部 「歴史の終わり」の後の新しい歴史の始まり 21世紀へ「最後の人間」の未来
      1 自由と平等の「王国」のなかで
        右と左からの「自由主義社会」批判
        「自助の精神」原理がうまく働かない社会
        自由と平等の「緊張関係」こそ自由主義の核心
        対応を誤るときわめて危険な諸刃の剣となる「対等願望」
        過剰な平等志向が産み落とした矛盾だらけの諸権利
        ほとんどの環境保護論者が陥っている自己矛盾と大欠陥
        現代人が「相対主義」によって追い込まれた知性の袋小路

      2 歴史の終わりに登場する「最後の人間」
        リベラルな民主主義国家の致命的弱点
        一つの光り輝く星を誕生させるための「混沌」
        人生のあらゆる面にわたる「不平等」を求める戦い
        歴史の始点にいた「奴隷」と歴史の終点に立つ「最後の人間」の唯一の共通点
        現代に出現した新しい形の「奴隷制」
        「歴史の終わり」における人間の意味と未来
        最後の「約束の地」は真の幸福・満足を約束してくれるのか

      3 民主主義社会における「優越願望」のはけ口
        歯止めのきかない「対等願望」が歴史に与える悪影響
        「優越願望」が育てる真の企業家精神
        民主主義下であるがゆえに実現される「野心」
        日本のなかの「歴史の終わり」とその後

      4 自由主義国家が生み出した「リバイアサン(大怪物)」
        民主社会の極端な細分化を防ぐ「防波堤」
        資本主義経済のダイナミズムと未来社会
        もっとも純粋な「自由主義」の持つ弱点

      5 「歴史の終点」には何があるのか
        平和と繁栄にあえて反旗をひるがえす人間の存在
        「弱肉強食」を正当化する原理
        歴史を再出発させる最後の「エネルギー」
        歴史の「循環・横揺れ」ははてしなく繰り返される
        リベラルな民主主義にとっての「最大の脅威」
        人類の乗った「幌馬車」の終着駅

     あとがき 「歴史の終わり」が直面する四つの問題
    Free Press「The End of History and the Last Man」 1992年1月

    訳者解説 渡部昇一
    これからの日本人にきわめて貴重な「指導原理」を与えてくれる歴史的名著

  • 上巻から続く著者の歴史観に圧倒される。印象に残ったのは、対等願望の概念。

  • 歴史の終わりとは何かが分かりそうでわからずじまい。力不足です。気概、対等願望、優越願望、このキーワードで説明できるように、解説を読み直します。

  • 最近(2020年9月)、国際情勢に関する本を読んでいると、この『歴史の終わり』が引用されることが多く、気になって再読してみた。引用する書籍は軒並み『内戦もテロもなくならない、歴史は終わっていないのだ!!』という使い方をしている。フクヤマ本人が『歴史の終わりとは、歴史的な大事件が起きないということではない』とはっきり書いているのに・・・。私が見る限り、フクヤマの見立て通り世界はリベラルな民主主義に向かっていると思います。今の時代、ぜひ読んでみる本だと思います。

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著者プロフィール

1952年、アメリカ生まれ。アメリカの政治学者。スタンフォード大学の「民主主義・開発・法の支配研究センター」を運営。ジョンズ・ホプキンズ大学やジョージ・メイソン大学でも教えた。著書『歴史の終わり』(三笠書房、1992年)は世界的なベストセラーとなった。著書に、『「大崩壊」の時代』(早川書房、2000年)、『アメリカの終わり』(講談社、2006年)、『政治の起源』(講談社、2013年)、『政治の衰退』(2018年)、『IDENTITY』(朝日新聞出版、2019年)などがある。

「2022年 『「歴史の終わり」の後で』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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