「歴史の終わり」の後で (単行本)

制作 : マチルデ・ファスティング 
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120055355

作品紹介・あらすじ

アメリカの政治学者フランシス・フクヤマは、1992年のベストセラー『歴史の終わり』の中で、自由民主主義の支配によって、人類の政治的およびイデオロギー的発展は終わりを迎えたと言った。
 それから30年、世界的なポピュリズムの勃興と自由民主主義諸国を襲う危機を前に、フクヤマが『歴史の終わり』を自ら再考する。

   * * *

 「ベルリンの壁の崩壊から30年。いまふたたび民主主義を擁護しなければならない時代が訪れようとは思ってもみなかった。」――インタビュワーであるマチルド・ファステイングの最初の言葉である。
 フクヤマが、ファスティングのインタビューに応える形で、今日の自由民主主義の深く分析する。
 これまでフクヤマが掘り下げてきた「アイデンティティ」、「バイオテクノロジー」、「政治的秩序」などに関するテーマに触れながら、権威主義の台頭と、民主主義が現在直面している脅威の数々を分析。フクヤマは、自由民主主義が陥っている窮状を説明し、その終焉を防ぐ方途を探る。
 また本書では、フクヤマの個人的なトピックに触れている。彼の人生とキャリア、彼の思考の進化、そして彼の重要な著作について振り返る。

   * * *

●目次

編者まえがき

1 歴史の終わり後に何が起こったのか

2 世界の政治はどう変わったのか

3 反自由主義的な攻撃は民主主義をいかに脅かすのか

4 アメリカは自由主義秩序の導きの光ではなくなるのか

5 オーウェル『一九八四年』のディストピアは現実になるのか

6 フクヤマはヨーロッパの古典的自由主義者なのか

7 フクヤマを国際政治へ導いたのは何か

8 歴史の終わりとは何か

9 なぜデンマークへ行くのか

10 いかにして民主主義国をつくるのか

11 社会が動く仕組みをいかに理解するのか

12 アイデンティティの政治は〝テューモス〟の問題なのか

13 社会と資本主義はいかに影響しあうのか

14 人間本性がいかに社会をかたちづくるのか

15 中国は自由民主主義の真の競争相手なのか

16 わたしたちは文明の衝突を経験しているのか

17 どうすれば民主主義を繁栄させられるのか

18 歴史の未来

むすびにかえて

謝辞

文献

索引

感想・レビュー・書評

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  • フランシス・フクヤマさんの「歴史の終わり」も含めて読んだことないのだが、ノルウェー人の著者が「オーウェルの「1984年」のディストピアは現実になるのか」などの各種テーマについて、対話形式でまとめているので、興味深く読む事ができた。
    結びの方で、ウクライナが、権威主義の拡大との戦いにおける最も重要な前線国であるとして、「希望ののろし」と記載されており、歴史的にも大きな意味をもつ動きが、現在進行系で推移していることを実感した。

  • 自由民主主義の危機を中心とする昨今の社会情勢に関する見解をインタビュー形式でまとめたもので、平易で読みやすい。また、フクヤマの思想信条の変遷についても整理されているので、「フクヤマ思想」のよい入門書にもなっている。
    「承認をめぐる闘争」が『歴史の終わり』の核にある概念とのことだが、これはプラトンやヘーゲルに依拠しているようである。他方で、合理的人間観を前提とする近代経済学や社会契約説は否定しているのが特徴的。インタビュアーは何度か「あなたは古典的自由主義者ですか?」という質問をするのだが、フクヤマは明確には答えない。リーマンショックによる格差増大により経済学的には左派に転向しているのが要因だと思われる。とはいえ、アイデンティティー政治を唱えるフクヤマは国民国家やナショナリズムに関しては概して肯定的で反グローバリズム的なところもあるので、政治学的には保守であるとも言えるだろう。
    本書は2020年末時点のインタビューなのでコロナについての話題はあるものの、ウクライナ問題への言及はない。が、フクヤマはウクライナには並々ならぬ関心をもっており、「権威主義の拡大との戦いおける最も重要な前線国である」とし「希望ののろし」と評している。その他、トランプや中国台頭への懸念といった政治的問題から、学際的研究の重要性、理論と経験的事実の関連性といった学問的アプローチ等々まで大変示唆に富む幅広いテーマを扱っており、知的好奇心が満たされる読み応えのある1冊となっている。

  • 30年前――1992年のベストセラー『歴史の終わり』で時代の寵児となった米国の政治学者に、ノルウェー人研究者が行ったロングインタビューをまとめたもの。

    この30年間、さまざまな誤読による批判にもさらされてきた『歴史の終わり』について、著者自らが誤解を解いていく書である。

    だが、それ以上に、冷戦終結から現在までの国際政治、各国の政治状況の変遷についての著者の見解が面白い。卓見に富み、学びが多い内容なのだ。

  • ご多分に漏れず、よく知らないのに知った気になってました。まずはフランシス・フクヤマ氏に対する偏見・誤解から脱出し、近しい所ら辺へ辿り着ける入門書なんだろうと思います。対話形式ですし、感覚として新書に近いです。
    私は「成長」に対し懐疑的というか、神話めいた印象を拭うことができなかったのですが、成長のない世界はゼロサムの略奪ゲームになるという指摘は発見でした。また、国民は共同幻想(この単語は使われていません)というか、物語を共有することで構築されるとか、その物語は人種や民族や宗教ではダメだとか、基本に立ち返る言説が頻出する本でした。良かった。

  • 昨今の世界情勢や閉塞感はどこから来るのか。

    自由民主主義を構成するもの
    近代国家であること、法の支配によること、制度が民主的な説明責任を果たすこと

    現在の懸念
    権威主義国家の台頭、政治の軸がアイデンティティによってきた、右派ポピュリストによる正統性主張と法制度の掘り崩し

    自由民主主義の繁栄のために
    社会の内側からの国民形成、国民理解
    =伝統や歴史を土台にしたシンボル
    自分たちの民主的な制度と諸価値の正統性をみんなが信じる
    =ナショナル・アイデンティティ
    政策についてよく考え反対者の意見にも耳を傾ける
    =選挙に行き投票する

    世界経済の自由化が凄まじいほどの格差を生み、解消へ動く右派ポピュリストによる法制度の掘り崩しと経済力を付け大国となった権威主義国家の台頭。これらの勢いに民主主義が押されている印象。
    ナショナル・アイデンティティを持ち、伝統や歴史に基づく国民形成が肝要と説くが、今のところ権威主義が自由民主主義に取って代わることはないと若干歯切れが悪く感じる。
    それほどかつてない危機感があるのだろう。
    歴史は繰り返すのか、歴史から学べないのか。

  • ●フランシスフクヤマ。ベルリンの壁崩壊後の自由民主主義の勝利が「歴史の終わり」だと宣言した人物としてよく知られている。

  • 難しいなぁ。これはフクシマさんへのインタビューなのね。著者もフクシマさんもみんな迷ってる?新しい考えは見当たらない?

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著者プロフィール

1952年、アメリカ生まれ。アメリカの政治学者。スタンフォード大学の「民主主義・開発・法の支配研究センター」を運営。ジョンズ・ホプキンズ大学やジョージ・メイソン大学でも教えた。著書『歴史の終わり』(三笠書房、1992年)は世界的なベストセラーとなった。著書に、『「大崩壊」の時代』(早川書房、2000年)、『アメリカの終わり』(講談社、2006年)、『政治の起源』(講談社、2013年)、『政治の衰退』(2018年)、『IDENTITY』(朝日新聞出版、2019年)などがある。

「2022年 『「歴史の終わり」の後で』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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