- Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
- / ISBN・EAN: 9784838726615
感想・レビュー・書評
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星野源、最高!
くだらないことを真剣に書く。
これはそのお手本のようなエッセー集。
いや、笑いましたよ。
おっぱいの話とか。
俳優、ミュージシャンでもあるのに、こんなに明け透けに「エロ」を語っていいのだろうか、と余計な心配をするくらい赤裸々で、そのぶん潔い。
でも、エロ話に付きもののえぐみは適切に処理され、笑いに転化しています。
星野さんの才能でしょう。
これはブログにも書きましたが、実は、テレビをほとんど視ない(視ると他のことが手に付かなくなるくらい夢中になるので)私は星野さんを最近まで知りませんでした。
本の雑誌「ダ・ヴィンチ」(10月号)で特集を組んでいて、それで知ったのです。
あの辛口書評家の豊崎由美社長が絶賛していて、「才能というのは次々と登場するのだなぁ」と感心してその時はそれでおしまい。
で、何日か後に社用車でラジオを聴いていたら、思いがけず素敵な曲に出合ったのですね。
しっとりとしたアコースティック曲で、何より歌詞が素晴らしい。
曲が終わったら、パーソナリティーが曲名を紹介するはずだと思い、車を路肩に止めてメモの用意をしました。
〝星野源『くだらないの中に』でした〟
私は「あ」と声を漏らしました。
「ダ・ヴィンチ」で特集されていた星野さんとピッタンコとつながったからです。
と、ここまで書いて、星野さんをご存知の方は失笑していることでしょう。
「は? 今ごろ?」
みたいな。
で、歌詞の何が素晴らしいって、この部分。
♪首筋の匂いがパンのよう すごいなあって讃えあったり くだらないの中に愛が 君が笑えば解決することばかり
「首筋の匂い」を「パンのよう」と表現しちゃうんですよ!
それで「讃えあ」うんですよ!
このくだらなさ、そして、そのくだらなさの中にある、持ち重りのするとってもかけがえのない物。
こんな歌詞を紡げるのはすごい。
というわけで、星野さんの新刊本であるところの本書を手に取った次第。
長くなって申し訳ありません。
で、えーと、そうそう、本当に面白いエッセー集なのです。
エロばかりではなく、「ものづくり地獄」と称する音楽制作のことや闘病生活といったシリアスな話題もありますが、どれも随所におかしみがあって何度も笑うこと必定です。
もう、実物をお見せした方がいいでしょう。
「ぽっちゃり」という題名のエッセーから一部引用します。
□□□
俺はぽっちゃりした人が好きだ。統計によると、世の男性の7割くらいはぽっちゃりが好きらしい。以前ラジオ番組に、「とある男にぽっちゃりが好きだと言われ、その基準を尋ねたら安めぐみと答えられて、女子として大変遺憾である」という怒りのメッセージが送られてきたことがある。
その通りだ。答えてしんぜよう。安めぐみさんは完全なる「痩せ」だ。あれをぽっちゃりと言ってしまったら、この世のほとんどの女子がデブになってしまう。それはそう答えた男が悪い。俺の思うぽっちゃりは、篠崎愛である。痩せではなくデブでもない、絶妙にふっくらとした体型、それがぽっちゃりだ。彼女の体型はぽっちゃり世界基準として登録してもいいだろう。しかし問題はここからで、そのメールの文末にはこう書いてあった。
「私の思うぽっちゃりの基準は森三中です」
震えた。それは、お前ちょっと甘えすぎだろう。あれをぽっちゃりと言ってしまったらこの世のほとんどの人がガリガリだ。
□□□
ね? 面白いでしょう?
一事が万事こんな調子で進んでいくのですが、たまに本当に真面目なことを淡々と云ってのけます。
たとえば、「マンガとアニメ」というエッセーでは、オタク少年だった自らの過去を面白おかしく振り返り、「犯罪以外で道を踏み外したと感じるおおかたのことは、踏み外したのではなく、自分が『真っすぐだと感じる道』と社会や環境が指し示す『真っすぐな道』がただ違うというだけだ。世間が『あんた曲がった考え方をしてるね』と言う時は大抵、思考が曲がっているのではなく自分の中の『真っすぐの考え』が周りの『真っすぐの考え』とズレているだけなのだ」と記します。
なるほど、と思わず膝を打ちました。
まあ、でも、硬い話は抜きにしてとにかく笑えるエッセー集です。
私は本書を北村温泉という温泉で読みましたが、サウナで裸のおっさんたちを前に不覚にも「フフッ」と声を漏らしてしまいました。
これは自分の部屋なら爆笑に等しい笑いです。
あと、この際なので世の女性たちに云いたい。
男はだいたいここに書かれているようなことを普段から考えています。
いいぞ、星野源!詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
蘇える変態
著作者:星野源
発行者:マガジンハウス
http://booklog.jp/timeline/users/collabo39698
死の淵から生還した星野源の奇想の3年間を大公開。 -
連載中も時折読んではいたが
時を経て老若男女誰もに周知されるようになった今
改めてまとめて読むとこれまた感慨深い。
まだ一部の音楽ファン、演劇ファンにしか知られていなかった頃の星野源。
そして闘病記。
[図書館・初読・2月2日読了] -
大好きな星野源さんのエッセイ。稀代の才人、音楽家、役者、文筆家と多方面で活躍される源さん。その核にある、ものづくりへの情熱と衝動、そして通底するエロ。下ネタをここまで取り入れつつ、決して下品にならない、微笑んでしまう文章。
後半は脳動脈瘤の発症、手術、再起がシリアスに、時にトホホに語られる。地獄に光るアイデアを。文化系男子の星、お帰りなさい! -
仕事で眠る時間もないほど忙殺する日々と、くも膜下出血で倒れてからの日々。
どちらも泣きたいくらい辛い(実際に泣いているし)のに、そこから、どうにかこうにか面白さを見つけて、ポジティブになろうとする星野さんの強さに驚く。
自分の好きなことを仕事にしている、という責任感、使命感みたいなものが、この人の強さを支えているのかな。
私は、好きなことと仕事を重ねてはいないけど、星野さんのような強さを持てるだろうか。
弱い人間なりに、強くありたいと思う。 -
近所の公園で読了。
大病してたとは聞いていたけど、ここまでとは。
山も谷もある。 -
日常の何気ない、すっと通り過ぎてしまうこともきちんととらえて、言葉にできる。自分がどう思ったかどう感じたかをしっかりと書ける。すごい。
日常をなんとなく生きていない。
自分の人生を作っていってる。
こんな人になりたい。
「おやすみ俺。また明日の朝、お前と会えるのが、俺はとても嬉しいぞ。」
自分の明日に希望と勇気を。 -
なんてマルチな才能の持ち主。こんな文章かけるようになりたい。こんな感性がほしい!
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壮絶な闘病生活、と言葉にするよりももっと過酷な地獄を、こんな風に昇華して文にしてしまう源さんは本当に表現者にふさわしい人だと思う。滑稽さも悲壮感も生も死も、全部が混在しているような彼の持つ独特な雰囲気が好き。たしかに死は人生最大のご褒美かもしれない、と闘病中の言葉に頷く。源さんの産み出すもの全てが好きです。
星野源のファンになったのは2度目の休養直前で、新参者が、と言われるかもしれないけれどそれでも構わない。好きなものは好きです。生きて帰ってきてくれて本当に良かった。このエッセイ集を読んで、改めてお帰りなさいと心から言います。 -
読みやすい
そんなファンではなかったけど
ドラえもんの歌など歌の歌詞がよいなあ、と
で、エッセイも読んでみようとなった
男の人の考えてることは分からないって思ってたけど
人として考えてることが広くて
変なんだけど面白い
こんなこと考えてるのか、なんだけど
優しさと面白さがあって
ぽっちゃりについての考察なんて笑いながら
なるほど、と思ってしまった