少年時代

  • めこん
2.50
  • (0)
  • (1)
  • (0)
  • (0)
  • (1)
本棚登録 : 17
感想 : 3
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784839603328

作品紹介・あらすじ

アジアで最初のノーベル文学賞作家タゴールの追想記。
ベンガル語からの完訳。
詳細な訳註・解説を加えました。タゴールの魅力をたっぷり味わうことができます。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 【映画評】 ベンガルの大地は歌う 『タゴール・ソングス』 Ministry 2020年6月・第45号 - キリスト新聞社ホームページ
    http://www.kirishin.com/2020/07/09/44017/

    書籍紹介:『タゴール「少年時代」』 | つながる!インディア
    https://onl.sc/ZcEBPFr

    少年時代
    http://www.mekong-publishing.com/books/ISBN4-8396-0332-8.htm

  • アジアで初めてノーベル文学賞を受賞した19世紀生まれのベンガル出身の詩人、タゴールが自らの幼少期を振り返った回想録。


    全体の3分の1くらいが訳者によるタゴール家の解説に割かれている。タゴールの代表作『ギタンジャリ』もまだ読んでないし、ベンガルについても何も知らないので解説を先に読んだほうがいいかも……と思いつつ、まずは順番どおり本篇から。
    案の定、地名やら植物名、料理名など馴染みのない固有名詞ばかりだが、丁寧に訳注が付されている。特に噛みスパイス(?)や素朴なお菓子の説明に唆られる。熱した糖蜜で揚げたお菓子なんて、実際食べればインドらしくヤバいくらい甘いんだろうけど、文字で読むととても美味しそうに思えてしまう。クルフィーなど私も食べたことのあるものもでてくるが、何しろここに書かれているのは100年以上前の思い出だから、きっと全然違う味だったのだろう。
    回想は時系列ではなく連想によって語られ、タゴールは自分の詩情を育んだなかでも、ごくごくさりげない日常の風景を取りだして書きとめようとしているように思える。執筆当時80歳だったと本文にあり、記憶がたやすく脳のなかで継ぎ接ぎされてしまうことを悟ってもいる。過去と現在のギャップにも静かな諦観が漂っており、「昔の時代は、王子様。(略) 今の時代は、商売人のお坊っちゃま」という段落は印象的だった。その天衣無縫の連想術と、日本語訳からも伝わるリズムに身を任せ、水鏡に映る像のように揺蕩う100年以上前の暮らしの風景を楽しんだ。
    とはいえ、イメージが掴みきれなかったところも多く、詳細な解説がとてもありがたい。植民地支配と革命の時代を描いたインド映画『RRR』を見たばかりなので、タゴール家と西洋文化との両義的な関係はとても面白かった。東インド会社と組んで財を成したと思ったら(祖父)、後継ぎはナショナリズムに傾倒して宗教家になり(父)、その息子はインド人初の英領インドの高等文官になり(兄)、末弟はアジア初のノーベル文学賞詩人というすごい家。女性解放運動への関わりも深かったという(でも1ケタ歳の嫁をもらうのは止められなかったんだね……)。
    タゴールは自分の幼少期にはすでに家が落ちぶれていたと強調しているけど、地域ではやはり目立つ家で噂のまとになっていたことがエピソードの端々から窺える。哲学者や文学者、音楽家が数多く出入りする環境で育ち、姉や兄たちの生き様に学ぶ精神は、知識人階層の空気感が伝わってくる点でギンズブルグ『ある家族の会話』にも通じるところがあった。

全3件中 1 - 3件を表示

著者プロフィール

ラビンドラナート・タゴール(ロビンドロナト・タクル、1861~1941)はインドとバングラデシュの国民詩人。近代ベンガル語の韻文・散文を確立、詩・小説・劇・評論・旅行記・書簡など、あらゆる分野に傑作を残した。両国の国歌を含む3000曲あまりの歌曲の作詞作曲者、優れた画家としても知られる。1913年、詩集『ギーターンジャリ』(英語版)によって、ヨーロッパ人以外で最初のノーベル文学賞受賞者となった。岡倉天心・横山大観等と交流があり、日本にも5度訪れている。自然の下での全人教育を目指して彼がシャンティニケトンに設立した学び舎は、現在、国立ビッショ=バロティ大学(タゴール国際大学)に発展している。

「2022年 『少年時代』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ラビンドラナート・タゴールの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×