断章のグリムVI赤ずきん・下 (電撃文庫 こ 6-19)
- メディアワークス (2007年12月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
- / ISBN・EAN: 9784840241168
作品紹介・あらすじ
街灯の明かりも届かない細くて暗い袋小路。暗闇の中から流れ出すのは、鼻の奥を突き、口から胸へと流れ込む生臭い湿った鉄の匂い。そして、墨に沈んだような暗い路地に浮かび上がるように、真っ白な裸の手足が無造作に転がっていた。その前にしゃがみ込んでいたのは、小柄な少女の影-。"泡禍"解決の途中で怪我を負い、意識不明の重体に陥った雪乃。彼女の重荷をなくすため、蒼衣は単身、未だに手がかりの見えぬ謎へと立ち向かう。徐々に『赤ずきん』の欠片は繋がっていくのだが、この街の狂気は想像を遥かに超えていた。失踪事件を発端とした悪夢の結末に待っているものとは-!?鬼才が贈る悪夢の幻想新奇譚、第六幕。
感想・レビュー・書評
-
「この路はオオカミの塒に」
暴走を止めるために動く。
放置していたのには理由があるかもしれないが、もっと早く動き話し合いをすべきだったろう。
「この狩はさまよいの群に」
暗闇から現れた人物とは。
過去にどのような教育をしていたのか分からないが、あそこまで怯えるのは異常ではないのか。
「この邸はとむらいの囲に」
仲間は既に入れ替わって。
守るべき存在は一人だと思い込んでいたからこそ、大きな見落としをしてしまったのだろう。
「この禍はお婆さんの客に」
声色だけで騙されたのは。
物語の登場人物に当てはめようとするには、色々な場所で多数の人間が動きすぎているのでは。
「この罪は赤ずきんの罪に」
徐々に狂っていった者は。
数年前から物語が始まっていたのであれば、気付いた人が居たとしても生きてはないだろうな。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「赤ずきん」をモティーフにした泡禍の解決編です。
雪乃に向けて断章の力を使い彼女を傷つけた勇路は逃げ出しますが、そのことを知った笑美が彼を追います。そんななかで、蒼衣は勇路と情報交換を申し出ます。蒼衣の申し出を受けた勇路は、今回の事件の「潜有者」だと考えていた斎藤愛(さいとう・まな)と颯姫をのこし、蒼衣のもとへと向かいますが、そのあいだに事件は新たな展開を迎えることになります。
今回は、事件の規模は前回以上ですが、グロさでは若干抑えられている印象を受けました。新しい登場人物たちも、それぞれが苦悩を抱え込みながら、次の展開につながっていくような締めくくりになっているので、この先も活躍を見せてほしいところです。 -
一体どこまでグロテスクにしたら気が済むんだこの作者!と思わずにはいられない。
テーマがテーマなだけに“泡禍”に関わった者は不幸になるという前提があるせいで、読む度に頼むから一人ぐらい幸福になってくれと思ってしまう。しかし、一つの話で登場人物の半分以上が死んでしまうだけにそんな期待は無駄かもしれない。
終盤の展開に関しては少々油断していただけに心に響きすぎて胸が苦しくなるほどだった。また、あの様な状況でもあくまで『普通』に拘り続ける主人公には恐怖すら感じた。今後は鋏を見るたびに何らかのトラウマが起こってしまうかもしれない予感。
もう既に6巻目な訳だがこのシリーズは最終的にどこへ向かうのだろうね。設定的には誰も幸福にはなれそうにはないのだけれども…。 -
きちんと想像させる正確な描写と筆者の想像力がすごい。
実際に光景とか痛みとか時間とか空間がわかるからね。
それを伝える表現力もすごい。
話の構成がすごいとか面白さとかもそうだけど、気持ち悪いから読みたいっていうのも若干あったりする(笑) -
気付いたら知り合いが知り合いじゃなくなってるって怖い。
あと笑美さんみたいなタイプも怖いし織作くんは今の段階では好きになれそうにないタイプ。 -
街に蔓延る不気味な影、生々しい"死"の描写。最後まで展開の予測がつかず、事件の全てが解けた時、思わずぞっとした。「赤ずきん」でそんな解釈ができるなんて、と、ただただ驚きすごいと思った。
中々に重い余韻の残るラストだった。 -
《購入済》今回の悪夢が一番悪夢らしいように感じた。日常に潜み、じわじわと狂気で侵略していく。最初から狂っていることが当たり前になっていたって、救いがなくて悲し過ぎる。鋏は嫌いだ。