- Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
- / ISBN・EAN: 9784841506839
感想・レビュー・書評
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山頭火の句は、無常だ。永遠に止むことなく、道の上で徘徊していたものの記録。同じところに佇むことを決して許すことない命の運動の前では、詩人はひれ伏すしかない出来ない。そして山頭火にあっては、それは紛れもなく、自然の円環への没入であったのだろうと思う。
そして思い出したのは、「今魅力的だな」と思えるものに触れることが大事だということ。破格であろうが、異端であろうが、権威がなかろうが、関係ない、今、自分が魅力的だな、とかなんか気になるなというものに圧倒的に触れていよう。そういうものを探し続けよう。どこかにある、どこかで出会える。山頭火と同じように、
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分け入つても分け入つても青い山
★歩きつづける彼岸花咲きつづける
★だまつて今日の草履穿く
しぐるるや死なないでゐる
しぐるるやしぐるる山へ歩み入る
★涸れきつた川を渡る
★分け入れば水音
捨てきれない荷物のおもさまへうしろ
あの雲がおとした雨にぬれてゐる
それでよろしい落葉を掃く
まつたく雲がない笠をぬぎ
★また逢へた山茶花も咲いてゐる
★見すぼらしい影とおもふに木の葉ふる
あるひは乞ふことをやめ山を観ている
★笠も漏りだしたか
★霜夜の寝床がどこかにあらう
鉄鉢の中へも霜
★いつまで旅することの爪をきる
★ほろりとぬけた歯ではある
ふるさとは遠くして木の芽
★しづかな道となりどくだみの芽
★朝からの騒音へ長い橋かかる
★あるけば蕗のたう
★椿ひらいて墓がある
★かさりこそり音させて鳴かぬ虫が来た
★あざみあざやかなあさのあめあがり
★うつむいて石ころばかり
旅の法衣がかわくまで雑草の風
★はれたりふつたり青田になつた
★草しげるそこは死人を焼くところ
笠をぬぎしみじみとぬれ
山あれば山を観る
雨の日は雨を聴く
春夏秋冬
あしたもよろし
ゆふべもよろし
炎天かくすところなく水のながれくる
風の枯木をひろうてはあるく
★うれてはおちる実をひろふ
★人を見送りひとりでかへるぬかるみ
★水音のたえずしていばらの実
しぐるる土に撒いてゆく
椿のおちる水のながれる
枯れたすすきに日の照れば誰か来さうな
蜂がてひちよが草がなんぼでも咲いて
けさは水音も、よいたよりでもありさうな
◉閉めて一人の障子を虫が来てたたく
ひよいと穴からとかげかよ
うれしいこともかなしいことも草しげる
★食べる物はあつて酔ふ物もあつて雑草の雨
いつでも死ねる草が咲いたり実つたり
日ざかり落ちる葉のいちまい
★彼岸花さくふるさとはお墓のあるばかり
★重荷を負うてめくらである
◉何か足らないものがある落葉する
★昼寝さめてどちらを見ても山
◉道がなくなり落葉しようとしてゐる
あるけば草の実すわれば草の実
★春が来た水音の行けるところまで
★さてどちらへ行かう風がふく
★この道しかない春の雪ふる
けふはここまでの草履をぬぐ
★燕とびかふ旅から旅へ草履を穿く
山行水行:さんこうすいこう
★みごもつてよろめいてこほろぎかよ
残された二つ三つが熟柿となる雲のゆきき
★落葉ふかく水汲めば水の澄みやう
寝たり起きたり落葉する
◉ちょいと茶店があつて空瓶に活けた菊
★ひつそり咲いて散ります
照れば鳴いて曇れば鳴いて山羊がいつぴき
空へ若竹のなやみなし
◉青葉の奥へなほ径があつて墓
★くづれる家のひそかにくづれるひぐらし
死をまへに涼しい風
風景は風光とならなければならない。音が声となり、かったいがすがたとなり、にほひがかほりとなり、色が光となるやうに
或る時は澄み或る時は濁る。澄んだり濁ったりする私であるが澄んでも濁っても、私にあつては一句一句の身心脱落である
★春風の扉ひらけば南無阿弥陀仏
春の海のどこからともなく漕いでくる
★また一枚ぬぎすてる度から旅
◉行き暮れてなんとここらの水のうまさは
あるけばかつこういそげばかつこう
★こころむなしくあらなみのよせてはかへし
◉砂丘にうづくまりけふも佐渡は見えない
荒海へ脚投げだして旅のあとさき
◉酔ざめの風のかなしく吹きぬける
★こころおちつけば水の音
★からむものがない藁草の枯れてゐる
◉歩くほかない草の実つけてもどるほかない
◉立ちどまると水音のする方へ道
何を待つ日に日に落葉ふかうなる
◉涸れてくる水の澄みやう
風はなによりもさみしいとおもふすすきの穂
何事もない枯木雪ふる
◉ふたたびは踏むまい土を踏みしめて征く
★雪へ雪ふる戦ひはこれからだといふ
その一片はふるさとの土となる秋
風の中おのれを責めつつ歩く
★雨ふればふるほどに石蕗の花
死のしずけさは晴れて葉のない木
★いつとなく机に塵が冬めく
なんとなくあるいて墓と墓との間
葦の穂風の行きたい方へ行く
★鳴いてきりぎりす生きてはゐる
★壁がくづれてそこから葦草
それは死の前のてふてふの舞
春の山からころころ石ころ
水のまんなかの道がまつすぐ
◉石に腰を、墓であつたか詳細をみるコメント0件をすべて表示