- Amazon.co.jp ・本 (56ページ)
- / ISBN・EAN: 9784845636150
作品紹介・あらすじ
おめえ、なにしに生きでるば」
地図にも載っていないような山のふもとの村で、炭焼きの娘・スワは、父親と2人で暮らしていた。
太宰治の『魚服記』が、書籍の装画、ゲーム、CDジャケットなどで美麗な人や獣を描き、本シリーズでは中島敦『山月記』と新美南吉『赤とんぼ』を担当する大人気イラストレーター・ねこ助によって、鮮やかに描かれる。
名作文学と現代の美麗なイラストが融合した、珠玉のコラボレーション・シリーズ。
自分の本棚に飾っておきたい。大切なあの人にプレゼントしたい。そんな気持ちになる「乙女の本棚」シリーズの1冊。
感想・レビュー・書評
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シリーズ7冊目、またねこ助さんとのコラボ作に戻ってきました。
作者は違えど、人が人にあらざるモノへと変わっていく。
そんな世界観にねこ助さんのイラストが加わることで読者を魅了させる。
<要訳>
山の中の茶店で父と暮らす少女スワは、滝に落ちた学生の死を目撃します。ある夜、父親に暴行されたスワは滝に飛び込み、鮒になってしまいます。滝壺に吸い込まれたスワは、水中で微笑んでいました。
きっとスワはもっと×2父親に愛して欲しかったんだろうなぁ...
人気シリーズ「乙女の本棚」第20弾は太宰治×イラストレーター・ねこ助のコラボレーション!
小説としても画集としても楽しめる、魅惑の1冊。全イラスト描き下ろし。
「おめえ、なにしに生きでるば」
地図にも載っていないような山のふもとの村で、炭焼きの娘・スワは、父親と2人で暮らしていた。
太宰治の『魚服記』が、書籍の装画、ゲーム、CDジャケットなどで美麗な人や獣を描き、本シリーズでは中島敦『山月記』と新美南吉『赤とんぼ』を担当する大人気イラストレーター・ねこ助によって、鮮やかに描かれる。
名作文学と現代の美麗なイラストが融合した、珠玉のコラボレーション・シリーズ。
自分の本棚に飾っておきたい。大切なあの人にプレゼントしたい。そんな気持ちになる「乙女の本棚」シリーズの1冊。
著者について
太宰治
明治42年(1909年)青森県生まれ。小説家。1935年、「逆行」が第1回芥川賞の次席となり、翌年、第一創作集『晩年』を刊行。『斜陽』などで流行作家となるが、『人間失格』を残し玉川上水で入水自殺した。「乙女の本棚」シリーズでは本作のほかに、『葉桜と魔笛』(太宰治+紗久楽さわ)、『女生徒』(太宰治+今井キラ)がある。
ねこ助
鳥取県出身のイラストレーター。書籍の装画、ゲーム、CDジャケットなどのイラストを手がける。著書に『山月記』(中島敦+ねこ助)、『赤とんぼ』(新美南吉+ねこ助)、『Soirée ねこ助作品集 ソワレ』がある。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
乙女の本棚シリーズから、太宰治さんとねこ助さんのコラボ作品「魚服記」です。ねこ助さんの繊細でどこかさみしさを感じさせるイラストが印象的な作品です。
炭焼きの父とその娘のスワ…父が炭焼きの仕事をしているときは、スワは茶屋の店番をしていた…。また、父がふもとの町に下りるときには、ひとり炭焼き小屋で過ごすのだった…。スワは15歳、少女から女性に成長する時期…「おめえ、なにしに生きてるば」「くたばった方あ、いいんだに」なんとも切ない会話…。季節は秋から冬に向かう頃、いつものようにひとり父を待ちながら過ごすスワ…外を見ると初雪、酒臭い父から逃れるかのように小屋を出ていき…。
スワは父に、自分のことをもっとわかってほしかったんじゃないかな…それとも父から解放されたかったのか…。でも私的には、父に愛してほしかったんじゃないかと感じました。なんとも切ない最期は、しんみりと心に広がって静寂な余韻を残してくれました…。 -
ぼんじゅ山脈の馬禿山、そこの滝の近くで父親と小さな茶店を営む15歳のスワは、父が炭を売りにしょっちゅう村へ下りて行くので、その度に一人で店番をしている。
ことしの夏の終りごろ、スワは滝の淵に落ちて亡くなる人をその目で見た。店はほとんど閑散としており、暇な時間でスワは滝について思いをめぐらせる。父親は酒臭い息をさせて帰ってくる。
秋土用も過ぎてすっかり客足も遠のくと、二人は店をたたむ。スワは山奥できのこを採集して持ち帰り、それをまた父親に託し、じぶんは小屋にこもりくろい飯に焼いた味噌をかけてひとりで夕飯を食べる。
夢心地で見えた初雪の晩が明けると、スワはからだに疼痛を覚えていた。あのくさい呼吸を聞いた。
吹雪のなか滝壺に飛び込んだスワは、自分は大蛇になったのだと嬉しく思うのも束の間、じっさいは小さな鮒だった。鮒は口をぱくぱくさせ、尾鰭をつよく振って底深くもぐり遊んでいたが、やがて何かを考え込むかのようにじっと動かなくなった。
やがてからだをくねらせながら滝壺に向かい、そのまま吸い込まれていった。
太宰治が23歳ごろ、作家人生の初期に書いた短編(『晩年』所収)。
とても幻想的だと思ったのだけど、考察を読んでみるにどうやらスワは酔った父親に犯されたようだと分かってゾッとした。
投身し大蛇になれたと思って喜び勇んでいたはずなのに、ほんとうは鮒だったこと、そしてその結末が物悲しい。 -
地図にのっていないような山のふもとの寒村で、炭焼きの娘 スワは父親と二人で暮らしていた。
少し不思議な物語だった。
野性的に生きていたスワがある時から理知的になり、そして……。
暗い。 -
こういうのも書いてるんだな。一度で理解した気にはなれない話だなと思った。たったひとりの友だち、という言葉が印象に残った
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津軽の馬禿山(マハゲヤマ)の滝を舞台に、炭焼き小屋に棲む父娘の幽玄の物語です。 滝のそばで遊山客めあての茶店の番をする娘スワ(15才)は、孤独と憂鬱の日々が続いていました。夏の終わりのある日、植物採集に来た書生の滑落死を目撃したり、谷川で獲ったヤマベを食べ大蛇に変身した男の話を、父親(おど)から聞かされた挙句、酒臭い「おど」から逃れ、滝つぼに身を投げてしまいます。川底には大蛇を見て泳ぐフナに変身したスワの姿がありました。昭和8年の太宰治の短編+ねこ助のイラストによる<乙女の本棚シリ-ズ>の最新刊です。
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文章で書かれていない父と娘の生活を考えるとぞわりとした寒さを感じる物語です。
スワは鮒になって救われたのだろうか。 -
とても印象に残るのだけれど、当初意味や解釈がわからずに当惑した短編。
そこで作品解釈を検索してみたところ、
伝説伝承や民話に近いものであり、また柳田国男『山の人生』も影響しているとのこと…。
ちょうど先日読了していた『山の人生』!
そういう下地ならなるほど納得。解像度があがりました。
『山の人生』の冒頭「山に埋もれたる人生あること」。
山に住む人々の悲哀…山で暮らしてきた家族の心中事件。山のなかで起きた薄暗く残酷な人生模様。
さらにそのあとの山にまつわる伝承や民話をくわえて、太宰流に描くとこんな感じなのでしょうか。
美しくも陰鬱な色調にしているねこ助氏のイラストは、たしかにその世界観にピッタリです。
個人的には『山の人生』とあわせて並べたい一冊となりました。 -
「おまえ、なにしに生きでるば」強烈な一言。親子関係はどうなってるのか。他の家族はいないのか、人として生きるより、大蛇か例え鮒でもよかったのか。魚服記とはどういう意味だろう。