- Amazon.co.jp ・マンガ (296ページ)
- / ISBN・EAN: 9784845801657
感想・レビュー・書評
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世の中には2種類の人間がいる、この作品が大好きだという人と、この作品を知らない人とだ。こういう言われ方で賞賛を浴びているものは数あれど、マイノリティにしてこれほど傑作と絶賛されているコミックも他にないんじゃなかろうか。ギャグマンガにして日本の歴史コミックの最高作といっても過言ではないのは、作者の確固とした史観にある。本来幕末の風雲児たちを描くつもりが、幕末のドラマはすでに関ヶ原から始まっていた、という作者の主張から、関ヶ原の合戦よりスタート。その後も幕末にいたるまでの先人たちの活躍をはしょることができず、連載雑誌のほうが先に廃刊になりながらも、執筆が続けられ、現在は「幕末編」が順調に発刊されている。
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これだけは言いたい!これは傑作だ!
歴史ギャグマンガ、と銘打ってはいるが、もう古事記、平家物語、太平記あたりと並び称されるべき「歴史書」と思える。
史実とイマジネーションのバランスと言い、最新知見の取り込み具合といい、人間ドラマの重厚さと言い。
実際、子どもの学習マンガとして買いました、という声も多いが、いやこれ大人にならないとわからんでしょう。
誇り、とか(関ケ原の大谷吉継)。
屈辱、とか(関が原で敗れ徹底的に懲罰を受ける宇喜田秀家)。
策謀、とか(徳川家康)。
忍耐、とか(薩摩の治水工事)。
切なさ、とか(徳川秀忠)。
天才、とか(平賀源内)。
これでもまだ4巻。
なにしろ、「幕末をさくっと短期連載で」という編集部のリクエストに「だったら原点は関が原にあり」と、かれこれ30年以上続いている連載なのだ。
呉智英氏のマンガ論で絶賛されていたので認識はしていた。しかしあやうく読まずに人生を終えるところだった。あぶなかった。
心配なのは、多くのファンが心配しているように、もはや老境に差し掛かった著者が無事完結してくれるか、という点だ。おそらく無理だろう。これほど歴史のディテールに宿る本質を見抜くことのできる著者が、寄り道をやめて切りのいいところで終えるなんて道を選ぶとは思えない。みなもと先生のライフワーク、しかと見届けまする。
幕末編含め今の時点で全30冊くらいあって一度読んだら絶対途中ではやめられないので覚悟して買ってください。 -
江戸時代はみなもと太郎に教わった!
この漫画によって保科正之と渡辺崋山に恋をしました。 -
知る人ぞ知る、名作歴史漫画! 何故これを何で全国の公共図書館・学校に全巻揃えないのか理解に苦しむ、それくらいの名作です。
本作は、2012年7月26日現在も連載が続く歴史大河漫画。
元々幕末モノを描こうとした作者は、「幕末の因縁を辿ると関ヶ原に行き着くのだ!」と関ヶ原から描き始めます。が、これが「大いなる誤算」の始まりで、そのまんま江戸時代を丸ごと描くことに(笑)。
「いつになったら幕末を描くんだ!」と編集者にせっつかれながら、泣く泣くエピソードを飛ばし飛ばしして(その分を「外伝」として同人誌で出していらっしゃいます)、ワイド版20巻分でやっと”幕末編”へ!(「え!? 幕末!!」とか言わない!)
そして、幕末編が現在20巻まで出ていて、ようやく次巻で桜田門外の変が起きるところまで来ています(笑)。
本作は絵柄がギャグタッチですが、漫画読みの中には、絵柄だけで読むのを拒絶する人が一定数いるそうです(例えば福本伸行作品などでも、絵による拒絶反応を示す人がいるようです)。
ですが、本作をそのような理由で舐めてかかったりパスしたりするのは、日本人に生まれてきたことの数パーセントを損していると言わざるを得ません。本作のような掛け値無しの名作を、嫌いな野菜を食べないみたいなつまらない理由で避けちゃうことは、本当に勿体ないです。ワンガリ・マータイ女史も日本語が読めたら、本作を読まない日本人にきっとこう言ってるはずです。「MOTTAINAI」と。
さて、記念すべき第1巻は関ヶ原の顛末です。今読み返すとドタバタギャグタッチ全開ですが、関ヶ原の戦いがわかりやすくまとまっています。ただ、小早川秀秋の描かれ方はさすがに気の毒なものがありますが…(笑)。ちなみに、主家・毛利家のために4時間もランチをして山上の毛利軍・長宗我部軍の道をふさぎ、下山を阻止した吉川広家が、個人的には一番お気に入りのキャラだったりします(ただ、彼のもくろみは見事に外れるんですが…)。
ご存じのように、関ヶ原の戦いは徳川方の大勝利に終わるのですが、この時、何のために参戦したかわからない藩が3つあります。それが、薩摩・長州・土佐です。
薩摩は正面の敵陣に向かって「退却」し、1600の兵が60人以下になるという壮絶な犠牲を払いつつ退却したため、地理的な要因もあって戦後も所領を一切減ぜられずに済みました。
しかし、うかうかと西軍の大将となってしまった毛利は、危うく取りつぶしになるところを防長二州に減封されることで乗り切ります。
この時から、薩長の幕府に対する恨みは連綿と300年にわたって受け継がれ、幕末に帰結するわけです。
土佐については2巻で語られますが、この後も3藩には苦難に見舞われ、散々苦渋を舐め尽くすことになります。が、それは次巻以降で。 -
全巻、大人買いしてしまいました。
これを学生時代に読んでいたら、もっと歴史が好きで授業にも興味が持てたかもしれません。
幕末から明治のお話ですが、登場人物が有名どころから埋もれている人までしっかり掘り起こされていて素敵なんです。
エネルギーの発し方も人それぞれで興味深いです。
治水工事を、嫌がらせとみせしめを兼ねて幕府から命じられた侍たちが、命がけで力仕事に明け暮れる中、地元の人々との関係を結んでゆく様は何度読んでも胸にこみ上げるものがあります。
解体新書が出来あがるまでの道のりも彼らの根気強さと情熱とひたむきさに尊敬と感謝の念が湧きあがります。
市井の人、学者、政治家、外国の人、全ての人が織りなす幕末と言う一大織物の絵に圧倒され、嬉しくなり、胸がわしづかみにされ、手を合わせたくなる漫画です。 -
幕末編より面白い
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「志」にあふれる風雲児たちの活躍を描く歴史群像漫画。
幕末を描くために、関が原の戦いから始めるという念の入れ様。
1979年の連載開始から20年以上の連載をへて、やっと幕末までたどり着いた。
遠回りのようで、幕藩体制の矛盾が維新へと収斂していく過程を知るには不可欠な作業なんだと思う。
たとえば薩摩、長州、土佐それぞれの負けっぷりを知らなければ、幕末における各藩の立ち回りが理解できない。
黒船がやってきただけで文明開化したわけではないのだ。
第二次大戦後の民主主義的改革の大部分が、実は戦前から連続したものであったのと同様に。
字が多すぎ、絵はクセがありすぎ、ギャグは古すぎとハードルは高い。
(巻末の「ギャグ注」を読むことで当時の風俗に詳しくなれるのは、それなりにお得)
あと、ある程度巻数を読まなければ凄みを実感できない。
寛政の三奇人とか大黒屋光太夫の話とか、ページを割きすぎだと思っていたが、後になってきちんとつながってくるから恐ろしい。
江戸幕府・会津藩の基礎を固めた保科正之の血脈ッ!田沼意次の経済的な先見性ッ!高野長英・渡辺崋山らの尚歯会の後世への影響力ッッ!
解体新書をめぐる前野良沢、杉田玄白、中川淳庵の人間関係とか、教科書では全く伝わらないところまで知ることができるのも魅力。
北方領土問題、沖縄問題も丁寧に掘り下げており、現代の状況を考える上でも読んで損はないと思う。
2004年、第8回手塚治虫文化賞特別賞・受賞作品。 -
コミカルで面白いのに歴史の流れもしっかりつかんでて、キャラも描き分けがすごい。ギャグだけでなく感動するとこもワクワクするとこも満載で初めて読んだ時から今も大好きです
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ギャグが古すぎてわからないなのはさておき、私はこの1巻の関ヶ原の話で、やっと後の幕末の流れがざっと理解できて目からウロコだった。
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幕末を描くために、その因縁の所以となった関ヶ原の戦いからこの壮大なスケールの物語ははじまる。ギャグテイスト溢れる絵柄と魅力的なキャラクター達。改めて読んでも本当に面白い。大傑作の、第1巻。