動物学者が死ぬほど向き合った「死」の話 ──生き物たちの終末と進化の科学

  • フィルムアート社
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  • Amazon.co.jp ・本 (353ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784845916382

作品紹介・あらすじ

死なないように進化できないのはなぜか?
笑いあり、ドラマありの、生き物たちの死と生をめぐる驚くべき冒険の旅へ、ようこそ!



私たちは古代から、飢餓、かんばつ、震災、戦争などを経て、争いのなか生き残ってきました。
しかし、ある動物は大人としてたった2時間だけ生きたり、ある動物は時間が来たら自ら命をたつ特徴をもっていたりします。一方で、何百年もの間生きる動物もいます。動物に取り付いて残酷な死に方をさせるような寄生虫もいれば、長く健康な人生を送らせるために取り付く寄生虫もいます。

人生における死が、色々な形で存在しているのです。

私たち(=直立した類人猿)はおそらく、結局は死ぬ、ということがみんなに起こるという事実を意識している宇宙の歴史の最初の動物です。
本書は、そんな私たちを含む、死をめぐる極上の物語。


・生命の定義、「自己複製」ができないラバは生きていると言えるのか?
・数世紀も休眠するブラインシュリンプ(小型の甲殻類)はいつ「死んだ」と判断できる?
・白内障の魚への義眼移植手術から考える「老化」の研究の歴史
・twitterで鳥の死骸を手に入れる話
・寄生生物は本当に「死の代理人」か?
・世界最古の動物ミンと、癌にかからないハダカデバネズミ

感想・レビュー・書評

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  • 生物とは何だろうか。それは生きているものである。
    「生きている」とは何かといえば、一般には、「自己と外界を分ける境界があること」「エネルギーや物質を代謝すること」「自己複製すること」などの特徴が挙げられる。英語圏では運動(Movement)、呼吸(Respiration)、感覚(Sensitivity)、成長(Growth)、再生・生殖(Reproduction)、排泄(Excretion)、栄養(Nutrition)の7つの現象での定義があり、頭文字を取ってMRS GREN(グレン夫人)とも称される。
    けれども、突き詰めて、一体生きているって何なのかというと、実のところ曖昧で未整理な部分も多い。
    ウイルスは生きてるの? 生殖が必須の条件だとしたら、生殖能力がない交雑種のラバは死んでるの?
    本書はそんな生命の謎に「生」と対極の「死」から迫ろうとするものだ。

    著者自身、動物学者であるが、「死」を専門とするさまざまな研究者の元を訪れ、多様な観点から死を、そして生を考えていく。
    ウワミズザクラとイモムシのせめぎ合い。
    極めて長寿の貝とフリーラジカルの制御。
    ブタの「死体農場」。
    大した毒性もないのに猛毒と誤解されているゴケグモモドキ。
    死んだ同胞を巣から運び出すハキリアリ。
    マウスにネコを恐れなくさせ、「自殺」行為へと誘うトキソプラズマ。
    個々のトピックスから、生物種によって寿命がほぼ決まっているのはなぜか、生物種同士の駆け引き、死が多様性に与える影響など、興味を惹く論点が浮かび上がってくる。
    個人的には、死なないように進化しなかったのはなぜかという問いはおもしろい視点だと思った。そう、不老不死がよいものならば、そちらに向かう生物がいてもよい。どうもそうではないのは、そこに何らかの理由があるのかもしれない。

    非常に整理されているというよりも、著者の思索という部分も多く、問いにも(問題の性質上)すっきり解決が与えられるわけでもないのだが、「死」から「生」を考えるというのはなかなかおもしろい試みだと思う。

  • 生き物に対する考え方が変わった。ただ生物が死ぬことに対して可哀そうと今まで感じていたが、生命の循環の一部、生物の集団として進化していく過程を改めて実感した。人間は考える脳を持ち、自分たちを最良の生き物と考えているフシがあるが、結局ほかの生物の進化の恩恵を受け、今があることを忘れないようにしたい。

  • ポピュラーサイエンス、っていうジャンルの本らしい。そう書いてあったから、そうなんだな。『バッタを倒しにアフリカへ』とか『鳥類学者だからって鳥が好きだと思うなよ』とかが該当するのかしら?だとすると、結構、好きであれこれ読んでる気がする。その中では、あんまり響かなかったなー。イギリスの生き物とか文化とかの事情に明るくないからかな?笑いのツボが違うからかな?でも、「死」もまた生の円環の一部なんだな、っていうのは感じられた。おんなじことアシタカも言ってるけどね。

  • 摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB50104387

  • Part 1 これはカエルの死骸です
    1 宇宙における生と死
    2 老齢と、幸運な一部を待ち受ける運命
    3 バーチウッドの恐怖と嫌悪
    4 遊離基の謎
    5 これは死んだカササギです

    Part 2 実験用ブタたち
    6 テントの下のサーカス
    7 性と死 ─ 死神との契約
    8 ゴケグモ記者とコーヒーを
    9 自殺:シロフクロウと体内に棲む藻
    10 アカトビと娘の排泄物
    11 ホラアナサンショウウオとグアノ
    12 ホリット・グランドウィーバー
    13 暗黒物質

    Part 3 シタティテスの先端をめざす旅
    14 死んだアリの運び出し
    15 喪が終わるとき
    16 人は不死を願うか?
    17 いいえ、これはカエルの死骸です

    終わりに

  • 小説的であって、すごく読みやすかった。
    死の向き合い方は、動物学だとこんなにもあっさりしていて、まぁポジティブでもネガティブでもないのだなと。

  • 各エピソードは興味深かったけれど、正直なところ死についての結論は表面的で浅かった。文化差によるものなのだろうか…。いずれにせよ、読み手として、死に関する思考はあまり深まらなかった。

    『Death on earth: Adventures in evolution and mortality』という元のタイトルを『動物学者が死ぬほど向き合った死の話』と翻訳したのが適切でなかったのかもしれない。
    死ぬほど向き合ってコレ…⁈⁈ と思わせる一冊。

  • 体裁はエッセイ風で、専門用語などもほとんど出てこず、とても読み易い。
    生き物たちの営みを”死”という観点から改めて俯瞰する枠組みは期待を抱かせるし、イギリスでもゴケグモモドキにまつわるフェイクニュースが伝播したんだ…という話や、腐肉を喰らうコンドルの腸内環境についての説明、最近のアンチエイジングに対するアプローチなどなど、生き物ネタから派生する豆知識を色々と知ることができ、素直に「ほー」と感嘆する。
    が、シヴィアな言い方をすると得たものはそれだけ、というか、小さなトピックスを四方山話として積み重ねることに終始し、冒頭で著者がぶち上げた”生き物はなぜ死を免れる方向に進化しなかったのか”という大命題に、結局のところ答えていないことが気に掛かり、本書を通じて貫かれる背骨のようなものが見当たらなかった。
    ここは著者に責任があるところではないが、邦題に”動物学者”という言葉を入れる以上、ただの動物好きでは与り知らぬ専門的な見地からの考察をもう少し読みたかった、と切に感じる。
    「パラサイト・イヴ」の方がよっぽど興味深くミトコンドリアの働きを紹介していたような。

  • 人間誰しも1度は考えたことのある「死」というテーマ。
    それは様々な謎を我々に与えてくれるものだが、どれも正解に至るのは難しい。
    その「死」というテーマに対し、化学的・物理的、そして生物学的に捉え、多くの専門家たちとの会話の中で研究を進めていくこの本の内容はとても興味深かった。結局結論は明確には出ないが深く考えさせられた。
    色々な動物が登場し、それぞれの特徴が事細かに記されており、動物好きには人生で必ず読んで欲しい1冊と感じた。

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著者プロフィール

動物学者。ブログ、雑誌、ラジオ、テレビその他で幅広く活躍中。動物学や野生動植物の保護をテーマに多くのコラムを執筆するかたわら、BBCワイルドライフ・マガジン誌、ガーディアン紙などに定期的に寄稿し、『BBCブレックファースト』『サンデー・ブランチ』『BBC 5ライブ』といったラジオ・テレビ番組に出演している。また、子供たちを動植物に親しませる活動を主宰しており、その参加者はのべ10万人近くにのぼる。ほかの学者と同じように、バードライフ・インターナショナル、英国鳥類保護協会、ロンドン動物学協会などの団体とも関わりが深い。ただ、ほかの学者と違って、カエル専門の電話相談を3年間担当し、世間の人々の(おもにカエルにまつわる)悩みを解消してきたという異色の経歴を持つ。本書は2冊目の著作にあたる。

「2018年 『動物学者が死ぬほど向き合った「死」の話』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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