レオス・カラックス 映画を彷徨うひと

  • フィルムアート社
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  • Amazon.co.jp ・本 (463ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784845921140

感想・レビュー・書評

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  • 超充実の映画本。
    評論も多数だが、何よりもまずカラックスへのインタビューが示唆深い。



    1980年代フランス映画に彗星のように現れた、恐るべき子供(アンファン・テリブル)の軌跡を、最新作『アネット』の衝撃とともに、いま改めて再考する。

    全監督作品評論、諸テーマをめぐる論考・対談とともに、レオス・カラックス監督と関係者へのオリジナル・インタビューをこの1冊に凝縮。

    鮮烈なデビュー以来、現在に至るまでわずか6本の長編作品を手掛けただけの寡作でありながら、ゴダール以後の映画史において、最も重要な作家の一人として世界中で称賛を集めるレオス・カラックス。
    この1人の映画作家は、この半世紀近くの映画制作のなかで何を考え、それらをいかに「シネマ」へと昇華させてきたのか。そして、その思考はいま、どこへ向かおうとしているのか。
    全監督作品評論、多様なテーマによる各種論考・対談、そして監督本人を含むスタッフ・俳優へのインタビューとともに、現代映画の先端を走るレオス・カラックスの才能を改めて思考するための一冊。


    目次

    はじめに

    第1章 あるシネアストの軌跡
    ・レオス・カラックスのために  西嶋憲生

    第2章 LCによるLC
    ・Interview 監督 レオス・カラックス 「始まり」と「終わり」の探究  聞き手・構成=佐藤久理子

    第3章 協力者たち
    ・Interview 俳優 ドニ・ラヴァン レオスは僕らの限界を超えて、僕らをどこかに連れて行く  聞き手・構成・撮影=佐藤久理子
    ・Interview 撮影監督 キャロリーヌ・シャンプティエ 撮影、畏れとともに前進すること  聞き手・構成=澁谷悠
    ・Interview 録音技師 エルワン・ケルザネ 録音、現実の再構成のために  聞き手・構成=澁谷悠
    ・Interview 編集技師 ネリー・ケティエ 編集、魂を出産する技法 聞き手・構成=澁谷悠

    第4章 全監督作品
    ・星、水、血、時間、動体、地図、足跡、板、足音、窓、鏡、無時間、寸断、不断、夜 『ボーイ・ミーツ・ガール』  五所純子
    ・疾走する愛とは何か 『汚れた血』  三浦哲哉
    ・愛の映画 『ポンヌフの恋人』  濱口竜介
    ・永遠に君を愛す 『ポーラX』  宮代大嗣
    ・生と演技、現実と映画のあわいで 『ホーリー・モーターズ』  角井誠
    ・Everything Under The Sun 『アネット』  樋口泰人
    ・夢のエチュード 短・中篇作品  須藤健太郎

    第5章 映画と/の思考
    ・「撮る」ことの成熟、あるいはその理不尽な禁止について──『アネット』をめぐって  蓮實重彥
    ・レオス・カラックスと出逢いなおすための覚書  藤井仁子
    ・レオス・カラックスと「単なるイメージ」  廣瀬純
    ・歌うこと、産むこと──『アネット』における虚実の際あるいは女性の身体について  木下千花

    第6章 創造行為の秘密
    ・レオス・カラックス監督特別講義  大九明子
    ・対談 映画の箍(たが)はすでに外れている──二〇二二年にレオス・カラックスを見ること  青山真治+町山広美
    ・座談会 東京のレオス・カラックス──『メルド』の撮影現場で起きていたこと  磯見俊裕+海野敦+菊地健雄+中村哲也+野本史生+土田環[司会]

    第7章 孤高の作家を拡張する
    ・カラックスと現代映画 カラックス&USSR  赤坂太輔
    ・カラックスとアメリカ アメリカン・ドリームの両義性──レオス・カラックス作品における夢  入江哲朗
    ・カラックスと批評 批評家カラックスの肖像──スタローンとゴダールの間で  堀潤之
    ・カラックスとスペクタクル 炎のようにきらめく深淵  マルコス・ウザル[池田百花=訳]
    ・LCをめぐる二十二節  黒岩幹子+フィルムアート社=編、伊藤洋司、梅本健司、荻野洋一、葛生賢、黒岩幹子、槻舘南菜子、新田孝行、野中モモ、原田麻衣、彦江智弘、降矢聡、村尾泰郎、結城秀勇

    著者略歴

  • 『アネット』の公開にあわせて発売されたレオス・カラックス本。
    新作に至る監督本人のロングインタビューもあり、ついに彼がたどってきた映画人生の航跡の全貌が明らかになって嬉しい。これまで観てきた主要作すべてについても語ってくれている。
    さらに怪優ドニ・ラヴァンのインタビューまで。

    また、レオス・カラックスとも関わりのあった、先日早逝した青山真治監督と町山広美氏との対談も載っている。彼が何言っててもちょっとしんみりしてしまう(闘病中とも知らず『空に住む』をぼろくそに書いてごめんなさい。でもそうしないのはあなたがいちばん嫌うでしょう)。

    レオス・カラックス作品マイベストは記憶が新しいこともあり『ホーリー・モーターズ』。
    そして何と言っても、東京を舞台にしたオムニバス映画のひとつ『メルド』(なんてタイトル!)だ。
    なんと『メルド』を東京で撮影した際のスタッフらによる座談会まで掲載されていて、これはもう大笑いしながら読んだ(当事者たちは大変だったでしょうが)。

    例えば、ドニ・ラヴァンが自分の出番を待ちきれずに待機している車から出よう出ようとするのを抑えるのがたいへんだったというエピソード。どうして車外に出てはならないかというと、渋谷でのゲリラ撮影だったから。おまけにドニは興奮していて撮影中に小道具の手榴弾を歩道橋から投げ落とす始末。スタッフは何度か警察のお世話になったという(笑っちゃいけないけど笑うしかない。これこそファルス映画になるんじゃないか)。
    渋谷では撮影許可がおりず、レオス・カラックスたちはパリではちゃんと許可がおりるのにとブチ切れていたらしい(安全のためとかなんとか、理屈はいくらでもつけられるだろうけどまあ、これが日本とフランスの文化水準の違いだろうな結局)。
    そういえばホウ・シャオシェン監督も、撮影許可がおりないから山手線で隠し撮りしたとどこかで言ってたっけ。

    あと覚書。裁判のシーンが麻原彰晃の裁判を参考にしているとのこと。日本に残る(野蛮な)死刑制度の(野蛮な)絞首刑の再現は、大島渚の映画を参考にしたらしい。

    いやはや、たっぷりのボリュームで大満足。

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著者プロフィール

1964年7月13日、福岡県北九州市門司に生まれる。立教大学英米文学科卒。
1996年『Helpless』で劇場映画監督デビュー。2000年『EUREKA』がカンヌ国際映画祭で国際批評家連盟賞とエキュメニック賞をW受賞。同作の小説版が三島由紀夫賞を受賞。2011年『東京公園』でロカルノ国際映画祭金豹賞審査員特別賞受賞。2015年度まで4年間、多摩美術大学映像演劇学科教授。2016年度、京都造形芸術大学(現・京都芸術大学)映画学科の学科長を1年のみ務める。2020年公開の『空に住む』が遺作となった。2022年3月21日逝去。

「2023年 『青山真治クロニクルズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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