夜學生

著者 :
  • 竹林館
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  • Amazon.co.jp ・本 (99ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784860001391

作品紹介・あらすじ

時を超え、現代の詩として甦った昭和一八年の名詩集。生きることが最も困難であった時代から混迷の現代に贈る、気高い詩精神。

感想・レビュー・書評

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  • 杉山平一詩集「夜學生」を読んだ。
    帯に書いてあった文句にひかれて読んでみたところ、
    思いのほかよかった。

    たとえば、こんな詩がある。

    「橋の上」

    橋の上にたって
    深い深い谷川を見おろす
    何かおとしてみたくなる
    小石を蹴ると
    スーッと
    小さくなって行って
    小さな波紋をえがいて
    ゴボンと音がきこえてくる
    繋がった!
    そんな気持ちで吻とする
    人間は孤独だから

    「人間と川とを結びつける小石」という発想が、
    詩人ならではの感覚だなあと感心してしまう。
    川に石を投げたり、水たまりを踏んだりする理由は、
    どこかで繋がっていたいという感情のあらわれかもしれない。

    同じく孤独をえがいた詩にはこういうものもあった。

    「孤独」

    万国の旗はまばゆくひらめいていた
    楽隊ははなやかにながれていた
    けれどもさびしいこの世の運動会であった
    もうみんなテエプを切っているのに
    びりの少年よ おまえは
    いっぱいの悲しみに戦きながら
    たったひとりで走りつづけていた

    「びりの少年」や他の詩にでてくる「工場労務者」「はたらく娘たち」に、
    焦点をあてるところが杉山平一の人柄であり、
    昭和一八年という時代性でもあるように思えた。

    この時代性をつづった心象風景は、現代社会にも通底するように感じられた。

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著者プロフィール

1914年、福島県生まれ。37年、東京帝国大学文学部卒業後、主婦之友社勤務を経て尼崎精工㈱に入社。
詩作を続け中原中也賞など受賞。66年より帝塚山学院短期大学で講義をはじめ、のちに名誉教授となる。
映画評論でも一家をなる。
大阪市民文化芸術賞、大阪芸術賞など受賞。著者は詩集『夜学生』『ミラボー橋』、評論集『映画芸術への招待』『詩への接近』、エッセイ集『映像の論理・詩の論理』『低く翔べ』『わが敗走』など多数にわたる。

「1994年 『なにわ塾第54巻 詩と映画と人生』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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