謎の独立国家ソマリランド

著者 :
  • 本の雑誌社
4.29
  • (292)
  • (217)
  • (72)
  • (13)
  • (7)
本棚登録 : 2179
感想 : 280
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (520ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784860112387

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 欧米人や日本人の感覚としては、かなり危険を伴うことが予想される東アフリカのソマリアへ、著者が現地へ飛び込み、知り得た情報、現地人とのコミュニケーション、感じたことが綴られた渾身のルポルタージュ。
    ソマリアが、北部から南部にかけて、ソマリランド・プントランド・ソマリアの3つに分断されているとは…、この本を読んで初めて知りました。
    アメリカ映画の"ブラックホークダウン"程度のフィクションや、たまに伝えられる新聞記事で聞きかじる程度でしたが、この本からソマリアに関する様々な事を学びました。
    ソマリアの歴史や現況を知るキーワードとして、"氏族"という概念がありますが、外国特有の用語や、様々な氏族の系統を、日本の歴史で登場する源氏・平氏・戦国大名・応仁の乱など有名な合戦名を駆使して比喩してくださったお陰で、かなりわかりやすく読み進めることが出来ました。
    また著者は、分断されたソマリランドがなぜ争いがない民主主義が形成されているかという問いに対し、氏族間の規律、戦争を知るが故の相互抑制力、エネルギー・工業や商業・観光資源などがなく他国からの介入がなかったことを挙げてます。しかしながら、国連などの介入なしに、独自に氏族間の調整などボトムアップで民主主義体制を築き上げた点は、素晴らしいとも。
    一読して感じるのは、アメリカや国連など第三者が介在することで生じる歪みの方が、ソマリランド内の氏族間の話し合いにより生じる歪みよりも、はるかに大きく、それを乗り越えるためのモチベーションも違うのだなと感じました。
    グローバル化と逆行するかもしれませんが、意外と他国のお節介を焼くよりも、本当に支援が必要な時のみ、仲介に入る方が良いのではないかと。
    ソマリアだけでなく、アフガニスタン、中東などの紛争の全てに双方の当事者を支えている国々がいるからです。
    歴史は語る。
    いい気付きを与えてくれた本書に感謝!

  • すごい。
    ここまで現地に突っ込んで取材でするとは。

    カート齧ってみたくなった。

  • 2017/4/18

  • 素晴らしい。どんどん読んでいきたい。

  • 「謎の独立国家ソマリランド」高野秀行◆ソマリア国内にある自称「国家」、ソマリランド。幻の国の存在を確かめるべく、著者は日本を発った。ルポですが、文章が面白いので冒険小説みたいな気持ちで読めて良かったです。道中めちゃくちゃなことが多発しますが、著者も結構めちゃくちゃ(褒めてる)。

  • ソマリランドというとそういや一時話題になってた。ソマリアとソマリランドじゃ全然違うんだとか、アグネス・チャンが行ったとかなんとか。まぁでも総じて、あそこヤベーって感じな煽りがメインで、でもなんか写真もないし、皆さん又聞きっぽいし、話半分って感じではあったけど、実際のところどうなんか、ってのはあった。まぁそんな深く考えて気にしてはなかったけど、こうやって読んでみると、とりあえずこのおっさんおもろいな、と。ソマリランドとか周辺のことが何となく分かるけど、結局のところはそれを楽しく読ませなきゃしょうがないんであって。文字で読む分には、ふーん、てとこだけど、実際に体験したら大変だったって次元じゃないな、って話もいっぱいあって、ちょいちょい面白いので、難しい文化的な話もなんとか読み切れた、かな。
    てか麻薬的なものも、日本ではやったらやばそうだけど、禁止されてない海外でやるぶんには問題ないんだよなー、ってのが考えてみりゃ不思議だ。おっさんが楽し気に嗜んでるのを読んでると、自分も一発試してみたいなー、なんて思ってるのが恐ろしい。

  • 圧倒的に面白い…
    久々に陶然たる読書体験であった。

    国際社会では長らく無政府状態とされているソマリアの中にあって、独自の政治機構を有し、もはや浮世離れしていると言えるくらい、治安の良いハイパー民主主義独立国家・ソマリランド。
    この存在を知った著者が、実際にソマリランドへと渡り、歴史・文化・風俗・土地・信仰など、あらゆる側面からその真実に迫っていくルポルタージュ。また、海賊国家プントランド・戦国南部ソマリアという、異なる軌跡を辿った旧ソマリア統一国時代の国々との比較から、なぜソマリランドだけがこのような国家を成立し得たのか、また三国に通底するソマリ社会とは一体どのようなものなのか、その謎を解き明かしていく。

    徐々に全貌が解き明かされていくプロセスが、著者の熱量を持って筆致されており、もうとにかく興奮が止まらない。
    また、著者が徐々にソマリ社会の一員と化していく様が面白可笑しく、また羨ましくもある。

    「カラシニコフ」(松本仁一著)を読んでいても感じたことだが、著者は私が理想とする旅人像というか、記者像というか。
    こんな旅がしたい。世界に対して、常に彼らのようなスタンスで向き合っていたい。読んでいて、尊敬と羨望、自分もこんな旅がしてみたいという憧憬が入り混じり、終始高揚感が止まらない、そんな一冊でした。

    文句無しでオススメです!ソマリランド、行ってみたい!!!

  • ソマリアといえば映画「ブラックホーク・ダウン」のとおり、民兵がウヨウヨして無政府状態を想像するのだが、北部のジプチ・エチオピアの国境付近にソマリランドという独立国家がある。
    大統領も議会もあり、方法は日本より進んでいるところもある。

    著者は2度にわたり、ソマリア、ソマリランドを訪れ人々の生活やソマリアが今の混乱に至った経緯を現地人の目線で取材、ソマリア人に半分以上染まってしまった状態である。

    ソマリアは氏族が支配する国だが、日本や欧米での報道では氏族がほとんど出てこないので「なぜ混乱が続くのか?」が理解しづらい。

    著者は氏族を日本の武士にあてはめ、わかりやすく解説、終始氏族と切っても切れないソマリアの実態がわかり面白い

  • 事実と主観が意識的に書き分けられているので、とても読みやすい。
    そしてエキサイティング。
    人間くさいソマリ人に笑わされた直後、シビアな現実に考えさせられたり。
    ボリュームが大きく歯ごたえがあるが、一読の価値あり。

  • 氏族、歴史に関する記述が複雑で
    日本の歴史上の氏族名をつけて分かりやすく
    工夫して書かれていたんですが
    頭に入りにくく、部分的に流し読み
    そのような箇所が多くて。

全280件中 61 - 70件を表示

著者プロフィール

1966年、東京都八王子市生まれ。ノンフィクション作家。早稲田大学探検部在籍時に書いた『幻獣ムベンベを追え』(集英社文庫)をきっかけに文筆活動を開始。「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをやり、それを面白おかしく書く」がモットー。アジア、アフリカなどの辺境地をテーマとしたノンフィクションのほか、東京を舞台にしたエッセイや小説も多数発表している。

高野秀行の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×