下り坂のニッポンの幸福論

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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784861528835

作品紹介・あらすじ

今こそ、人間本来の「生き方」を見つめ直す

思想家の内田樹氏、ドキュメンタリー映画作家の想田和弘氏による、初の対談本。分断を生み出す政治家たち、国の根幹を揺らぐ民主主義、行き過ぎた資本主義、学習意欲を低下させる教育システム、コロナによる大混乱……。数多の課題が山積し、万事休すに見える日本社会。

コロナ禍、想田氏はニューヨークから岡山県の小さな港町・牛窓に移住を決断した。本書は、瀬戸内海の美しい景色を眺めながら長時間にわたって対談を実施。日本を代表する論客2人が様々な論点を取り上げながら、低成長時代の日本人の生き方について問う。対談を通して、「下り坂のニッポン」から見える希望の一筋が見出せるはずだ。


コロナ、グローバル資本主義、都市の一極集中……
「成長しない」生き方が日本の未来を灯す
幸福に生きるための新しい視座を与える現代社会への処方箋


*ここに掲載している作品データは刊行前のものです。
刊行までに内容の修正があり、仕様の変更がある場合もございますのでご了承下さい。

感想・レビュー・書評

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  • 「激動期に輝く人文の知」内田 樹さん
    卒業生インタビュー - 東京大学文学部・大学院人文社会系研究科
    https://www.l.u-tokyo.ac.jp/interview/graduates/vol_04/

    下り坂のニッポンの幸福論|青幻舎 SEIGENSHA Art Publishing, Inc.
    https://www.seigensha.com/books/978-4-86152-883-5/

  • 仏文学者と映画作家による、自由気ままな対談集。コロナ禍と世界情勢(均衡状態)の変動、一方で日本は人口減少・高齢化・地方消滅という避けられない道を歩んでいくなかで、どう生きるべきかを論じている。自然と連動・循環した生き方、金儲けと大量消費ではなく、時間に余裕のある暮らしを求める理想は、当然ながら共感できる。

    正直、一旦共感しても、社畜サラリーマンの身としては、そこまでが限界であり、そんな理想を叶えられる人はごくわずかであると斜めに構えてしまいがち。自由きままな対談なので、あまり批判的になってもしょうがないのだが。

    気に入った言葉は以下の通り。
    「時間貧乏と時間富豪(自由に使える時間が沢山ある)」
    「コロナは人間だけ。猫をはじめ動物には全く影響が無い」
    「人間は自然を破壊することで全能感を得て満足しようとする潜在的な欲望を持つ」

    想田氏が就職活動をすぐに辞めてしまったエピソードは面白かった。同調圧力に屈さず、おかしいと思ったことを感じ取る能力が人一倍強いのだろう。
    最近自分は、意図的に仕事の質(スピード)を落とすことを考えている。やっぱり今までの自分は「ブルシット・ジョブ」だけに一生懸命取り組んできた。後輩たちがその姿を見て真似することだけは避けたいと思う。

  • 内田樹さんのふくよかさがすごすぎる。こんな大人になりたいと、いつも思う。

    読んで考えたこと、ちゃんと言語化したい…

  • ここ数年、時間貧乏な自分。
    結局このまま同じように時は過ぎていくのか。
    この下り坂の日本で、時間富豪としてこころ豊かに過ごしたいものだ。

  •  いつも利用している図書館の新着本リストで目に付いた本です。
     内田樹さんの著作は今までも何冊か読んでいます。本書は、映画作家の想田和弘さんとの対談を書き起こしたものです。
     私にとっては、少々哲学的、抽象的な議論もありましたが、なかなか興味深い気づきを与えてくれました。
     このところエンタメ的な小説を手に取ることが多かったので、やはり時折はこういったテイストの本を読むのもいいですね。

  • 一気読み。
    「撤退論」に続き、下り坂の日本でどう私たちは「降りて」暮らしてゆくか、を内田樹と想田和弘が語る。
    牛窓で暮らす想田和弘は地方の里山で暮らすことを実践しており、それが時間感覚の転換をする生き方の実例として紹介される。

    正直、想田和弘は、「精神」などの映画は好きだが、週刊金曜日での瞑想の連載くらいから、大丈夫かな?と思うところがあった。(この対談を読んでもその気持ちは変わらず)
    内田樹がその懐に想田和弘をどう包み込んでいくか、それがこの対談の読みどころでもある。
    内田樹も武道家であり、神道や仏教に親和性もある人なので、方向性としては同じところを向いているなと思う。
    しかし、圧倒的に内田樹は内田樹で、そのリアリストとしての不動さで、想田和弘を圧倒している。

    最後の章は、一生懸命猫のナワバリについて話す想田和弘に対して、苦笑しながらも内田樹が優しく理解してあげているなと、思いつつ読んだ。

    といったいった二人の資質の違いはあれど、この下り坂をどう降りていくかという方向性が同じなので、対談は示唆に富むことが多かった。

    高齢化・少子化によって過疎が急激に進行しているところは事実上『居住不能』になり、公共交通機関は止まり、学校や病院は統廃合され、警察や消防のような行政機関も撤収。それをビジネスチャンスと思って生態系の保全や地域住民の健康の配慮などはなされなくなっていくだろうという未来予想。
    総務省の中位予想でさえ、2100年には日本の人口は5000万人を切るのであるから、当然過疎の問題は喫緊の課題である。
    だからこそ人口の分散を促す地方移住をし、里山を復活させようというのが、この対談で二人が主張するところのものだ。

    具体的でわかりやすく、そして、なんだか和やかで楽しく、いい対談だった。

    そして、内田樹がやっぱりすごくいいことを言うのです!

    カウンター的な国民の動きはバイオリズム的に必ず来るだろうから、その種火を守っているのだ、という発言やら、
    「忍耐力がないというのは、重要な資質」で、「無意味なことに耐えられないことは生物として健全だ」し、センサーの感度が高いという発言やら、

    「暇と退屈が創造性の源泉」だということやら。

    内田樹ってすごいなと思う。相手に届く発言をする人だなと。

    そういう意味でこの読書は楽しく、この本はよき本だった。

  • 「理想を追求」するのがリアリスト
    色々なお話は分かるものの、世界を見ても理想に近い国がないと思うと、実現は難しいのかな?と

  • 特に想田さんの仏教系の話が良かった。瞑想の効用(と言っていいのかどうか)もわかりやすかった。仏教的世界観がこれからのカギになるとか、まず自分が幸せになることが世界平和につながるとか共感を覚えた。猫の話(私は嫌いなのだが)も良かった。
    内田先生のお話はいつも読みすぎているので、特に目新しい感じではなかったが、何度も何度も繰り返し聞きたい(読みたい)。

  • 直進する時間と循環する時間。
    循環する時間の中で足る生き方できれば それは最善なのかもしれないが、 現状は そうもいかない。
    目の前にいる2匹の猫を守ることはできても全ての猫を守ることはできない。
    その2匹の猫のためにも 直進する時間の中で生きなければいけないのが今の時代。
    要はどちらか片方のみにシフトするのではなく 各自に置いて最適なバランスで直進と循環を配分していくしかないのでしょう。

    地方創生に絡む話は納得感はあったが 地方雇用とのマッチングツールは本当にないんだろうか?
    国は大企業の利権確保のためにそういった ツールがないという話は疑問を感じた。
    実際にニーズがない 魅力がない そういった 背景が 多分にあるような気がする。

    自分とは 違う価値観を知る上で 読了した達成感はあるが全体的に理想論的な印象を感じた。

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著者プロフィール

1950年東京生まれ。東京大学文学部仏文科卒業。神戸女学院大学を2011年3月に退官、同大学名誉教授。専門はフランス現代思想、武道論、教育論、映画論など。著書に、『街場の教育論』『増補版 街場の中国論』『街場の文体論』『街場の戦争論』『日本習合論』(以上、ミシマ社)、『私家版・ユダヤ文化論』『日本辺境論』など多数。現在、神戸市で武道と哲学のための学塾「凱風館」を主宰している。

「2023年 『日本宗教のクセ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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