現象学の根本問題

  • 作品社
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  • Amazon.co.jp ・本 (589ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784861820687

作品紹介・あらすじ

未完の主著『存在と時間』の欠落を補う最重要の講義録。アリストテレス、カント、ヘーゲルと主要存在論を検証しつつ時間性に基づく現存在の根源的存在構造を解き明かす。

感想・レビュー・書評

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  • ハイデガー自身が、”『存在と時間』の新たな仕上げ”とコメントしたことで有名な、1927年夏学期講義の講義録。
    ぼくは大学院生のころにドイツ語で必死で読みましたが、「がんばって読んだのに、今後の研究や論文づくりに活かせるところがほとんどない。なんてこった!」と嘆いた記憶があります。
    そう、巷では、”『存在と時間』で予告はされたものの論じられなかったテンポラリテートの問題が展開されている”ということで有名なんですが、実際のところ、この本でもテンポラリテートの問題は、なんとなく提示されるだけで終わってるんですよね。大学院生のとき、まあ、ちゃんとした狙いも持たずに読んでしまったのも悪かったのですが、それにしても、肩透かし感がものすごくて、ぼくのなかでは悪書扱いされていたところがありました。
    でも、今回、翻訳ですが久々に読んでみると、ちょっと印象が変わりました。おもしろかったです。
    テンポラリテートの問題ではなく、「ハイデガーの現存在の分析論と、それまでの哲学における議論との接続」が、うまく論じられています。ハイデガーってこういうのがうまいよなあ、と感心させられる。
    『存在と時間』は、実存主義の本だと紹介されることが多いですが、それだと、悪くすれば自己啓発本と変わりません。でも、ハイデガーの標榜する基礎存在論は、それまでの西洋哲学において積み上げられてきた様々な議論を下敷きに、哲学そのものにふさわしい基礎を構築することを企図したものです。それは、『存在と時間』本編でもしっかり読み取れるのですが、この『現象学の根本問題』では、そこがより明示的に論じられています。
    とはいえ、今回読んでおもしろかったのは、院生のときのような切迫感がなくて、単なる興味だけで読めたからだと思います。あと、単純に、「昔は理解できなかったけど、今回はちょっとわかった気がする!」という、エウレカ!というのは言い過ぎですが、自分が成長したことを実感できて嬉しかったということもあります。【2021年3月28日読了】

  • 現象学の根本問題
    (和書)2013年02月11日 00:29
    マルティン・ハイデガー 作品社 2010年11月27日


    現象学とは「学としての存在論である」ということである。僕はあまり学として何かを捉えようとしたことがないがその意味合いは漸く理解できた。

    「学として実存主義である」としても同じ事だろうと思う。僕は3.11あたりからアナーキズムと実存主義に覚醒させられた感がある。だからそういうものを学として成立させようという努力の重要性は理解できる。

    今回の作品はハイデガーの実存主義のあり方に触れるには絶好の本であると思いました。読みやすく講義なので伝えようとする工夫と気遣いを感じる。今嵌っているフーコーの講義集成のように抵抗なく読み進めることができる。たいへん読みやすく有益なように感じました。

    今回は誰かに勧められたわけではなく、本屋で見つけて興味を持ち図書館で借りて読んでみた。本屋もいい本がいっぱいあるね。

  • これも図書館で何度も借りて、少しずつ読んいたものです。ところが、地元図書館ではいつの間にか消えてなくなりました。誰か持ち帰ったのでしょうか。係の方が他所の区の図書館から借り出してくれました。2週間で読めるところまで進みます。やはり借りて読むのには限界を感じて、丸善ジュンク堂渋谷店で購入しました。(2014/05/25)

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著者プロフィール

(Martin Heidegger)
1889年、ドイツ南西部、メスキルヒ生まれ。20世紀最大の哲学者の一人と呼ばれる。フライブルク大学で当初神学を専攻し、のち哲学専攻に転じ、リッカート、フッサールに学ぶ。1919年、フライブルク大学私講師となり、「事実性の解釈学」を講じる。マールブルク大学員外教授、教授を経て、1928年フライブルク大学教授。多くの優秀な弟子を育てる。1927年、普遍的存在論の書『存在と時間』を出版、爆発的反響を呼ぶ。1933年から翌年まで、ヒトラー政権のもとでフライブルク大学長。1976年、フライブルクで死去、メスキルヒに埋葬。他の主要な著書は『哲学への寄与論考』、『ニーチェ』、『道標』、『杣道』、『講演と論文』、『言語への途上』など。全集は100巻をこえる。

「2019年 『ハイデガー=レーヴィット往復書簡』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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