起業は山間から‐石見銀山 群言堂 松場登美

著者 :
  • バジリコ
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784862381446

感想・レビュー・書評

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  • ファッションブランドのデザイナーであり、古民家を修復し活用したりと、地域に根差した活動をしている松葉登美氏。
    石見銀山という地について、彼女のこれまでの活動や、生活が書かれている。
    自然の中で、自然体に暮らしている様子はとても羨ましく、それが人間本来の姿であると思う。
    また、夫である大吉さんも素敵な人である。

    2007年に世界遺産に登録された石見銀山。
    日本側は、銀による経済意義を強く押し出して登録にこぎつけようとしたが、海外から評価されたのは、自然との共生とその文化的背景だったという。
    国は、産業的な部分ばかりみているようだが、素敵な里山を観光客誘致のために壊してほしくないと思う。

  • 今や世界文化遺産にも登録されている、島根県の石見銀山。
    そこで心地よいファッションや暮らしを提案しているお店「群言堂」。
    人口500人の過疎地で100人の雇用を生み出していたり、
    古家を改修してショップとして生き返らせたりしているので、
    町おこし・ソーシャルビジネスの成功例として
    メディアにも多数取り上げられている。
    その女社長、松場登美さんにインタビュー

    でも…
    こんな堅い題名にしなくてよかったのになーって思う内容。
    インタビュー形式になっていて口語がほとんどなので、
    中身はやわらかいです。

    松場登美さんの、気ままで商売人な人柄と、
    その夫、大吉さんのおおらかで采配能力のある人柄、
    このご夫婦のもとで働いている若い社員の成長の様子、
    そして石見銀山での、自然と人が共生してつつましく暮らしている様子。
    これらが文章を通してよく伝わってきます。

    自分で考える人がやっぱ強いんやなぁ
    これを読むと、ほっこりもするけど、シャキッともします。
    縁を大事に、もっと丁寧な暮らしをしたい。

  • ああ、いったい森まゆみは果てしなくどこまで行ってしまうのでしょうか。

    ついこの間は、極寒の『女三人のシベリア鉄道』へ行ったばかりだというのに、こんどは島根県の石見銀山を訪ねてしまいました。

    もちろん、彼女の本の世界に魅了されている方なら、とっくにお察しのように、本書は、例のいま流行りの勝つとか負けるとかいう御仁の、経済効率を解くというか、いかにすれば合理的に一生を過ごせるかとかお金が稼げるかといったこととは、まさに正反対の視界が映されたものです。

    しかも、森まゆみは、ビジネス本やノウハウ本に充満する、儲けるために起業するというパースペクティブとはほど遠いところから発信されたメッセージを触媒しようとしているのです。

    キーワードは、町おこし。東京の下町で地域雑誌「谷根千(谷中・根津・千駄木)」を20年間出してきた彼女の目は、眼光鋭くこの地域を照射します。その菩薩のような眼差しは、一瞬にしてこの地の真相を心温まる物語にして差し出してくれます。

    古着の切れっぱしを使って作ったパッチワークが事の発端で、そこから麻や綿を主体とした和のデザインの衣服の独自ブランド=群言堂を作り、そして㈱石見銀山生活文化研究所を設立して、なんと100人の方が働いて年商およそ10億円というから大成功された訳です。

    なんだ、結局は金儲けの成功譚か、ですって?

    それは、たまたま成功して利益が上がったというだけで、初めからお金目当てで儲けようと思う人は、人口わずか500人ほどの過疎地の集落で起業しません。

    それにしても、石見銀山から一枚のパッチワークが世界中を駆け巡っていく様子を想像するだけでワクワクしてきます。

    ぜひ一度、松場登美さんご夫妻の仕事ぶりを拝見してみたいものだと思います。

  • 予想以上に面白く読めた。森まゆみさんの相手から引き出す力によるのか、旧知の間柄から来るものなのか…。

  • 石見銀山生活文化研究所は、島根県からファッション生き方を提案し続けている。昔の町並みから、心地よいデザインと素材のヒントを得、古い家を修復し、ショップとして生き返らせる。地域の環境と景観を守ることも、大切な仕事のひとつ。

  • 石見銀山というのに気を引かれて借りてきた本。世界遺産がどうのというのには興味ないのだが、それよりも前に、大阪から子どもを連れて島根の民家へ遊びに行くようなツアーを企画していたママ…にちょっとだけかすったことがあり(私もいっしょに行ってみようかと思ったこともあるが、財布の都合でパスしたきり)、たしかそのとき石見銀山のあるところだとそのママが言っていたのが印象に残っていて。

    ツウは、「群言堂」に引かれるのかもしれないが、私はこの本を読むまで全く知らなかった。

    権力者が上からものを言う、その一言堂に対してみんなで考えてことを進めていくのが群言堂です。 (p.186)

    こうも書いてある。
    ▼鶴の一声みたいに、一人の権力者が上からものを言うのを一言堂。群言堂はみんなが意見を出しあってよい方向性を決めるという意味です。(p.68)

    「群言堂(http://www.gungendo.co.jp/)」は、石見銀山生活文化研究所という会社の、主に衣服を売ってるブランド名。もとは「ブラハウス」というブランド名だった。「ブラ」は、フィジーの挨拶の言葉で、こんにちはという意味だという。「群言堂」は上記のような意味。

    森まゆみが初めて島根を訪れたとき、「これは森さんのほうが似合うから」と、松場登美は自分が着ていた服を、ハンカチと鍵をポケットから出して、その場でくれたという。

    そうしてもらったり、のちには自分で買うようにもなった「群言堂」の服は、じつに着やすいらしい。着て洗って、着て洗って、百回くらい洗ったシャツもある、と森は書く。

    この本はふしぎな本である。
    おおよそはサブタイトルにある「石見銀山 群言堂 松場登美」の話なのだが、冒頭で森が「人と人はゆっくり知り合っていくのがいいと私は思う」と書いているように、じわじわと石見銀山や群言堂や松場登美がわかってくるかんじ。

    登美さんの話も、夫の大吉さんの話も、じわっとゆっくり身にしみる。
    間にはさまれる「群言堂の便りから」は、読んでいて、フフっと笑える。

    お金に無頓着、商売が好き、これが両立している。
    『We』も、もうちょっと商売上手にならないかんのかな。

    この本のタイトルは「きぎょうはやまあいから」と思っていたが、奥付をみるとルビが振ってあり「きぎょうはさんかんから」だった。

  • 石見銀山からファッションブランド「群言堂」を発信し、まちなみ保存に尽力する松場登美へのインタビュー。

    人口五百人の山間の町に、この群言堂があり、中村ブレイスがあることの不思議。

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著者プロフィール

1954年生まれ。中学生の時に大杉栄や伊藤野枝、林芙美子を知り、アナキズムに関心を持つ。大学卒業後、PR会社、出版社を経て、84年、地域雑誌『谷中・根津・千駄木』を創刊。聞き書きから、記憶を記録に替えてきた。
その中から『谷中スケッチブック』『不思議の町 根津』(ちくま文庫)が生まれ、その後『鷗外の坂』(芸術選奨文部大臣新人賞)、『彰義隊遺聞』(集英社文庫)、『「青鞜」の冒険』(集英社文庫、紫式部文学賞受賞)、『暗い時代の人々』『谷根千のイロハ』『聖子』(亜紀書房)、『子規の音』(新潮文庫)などを送り出している。
近著に『路上のポルトレ』(羽鳥書店)、『しごと放浪記』(集英社インターナショナル)、『京都府案内』(世界思想社)がある。数々の震災復興建築の保存にもかかわってきた。

「2023年 『聞き書き・関東大震災』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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