- Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
- / ISBN・EAN: 9784862659620
作品紹介・あらすじ
発禁作家になった。
「何も変な事も書いていない」
「自分が女である事を、医学、科学、唯物論、現実を守るために書いた」
多くの校閲を経て現行法遵守の元で書かれた難病、貧乏、裁判、糾弾の身辺報告。
感想・レビュー・書評
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笙野頼子の新刊だけれど聞いたことのない出版社からで、しかもこのタイトル、何があったのかと思っていたら、今度はヘイト作家認定されてしまったとのこと。詳細は本書を読めばわかるようになっていますが、簡単に言うと海外ですでに始まっている「セルフID制」に反対する意見を書いたらそれだけで差別主義者扱いされて攻撃され、メジャーどころでは書けなくなってしまったとのこと…。収録されてる作品の大半は「群像」で発表されたものだけれど、講談社からはもう本は出ないらしい。あまりのことに驚いています。
個人的には笙野さんの意見に賛成。もちろんLGBT差別する気など毛頭ないけれど、法的にLGBとTは分けて考えるべきというのは最もな話で、性的嗜好と肉体の性別は別問題。笙野さんが問題視されてるのはこのT(トランスジェンダー)の問題で、マイノリティに配慮するあまり、体じゃなくて心の性別を尊重=本人が心は女性(男性)だと自称すれば肉体の性別は関係ない=男性の肉体を持った人が女湯や女子更衣室や女子トイレ、あげく女子刑務所にまで入ってくるというとんでもない自体が起こることを危惧するのは当然のこと。これって差別とは別問題ですよね…。
これもよく議論されていますが、オリンピックの女子のほうにトランス男子がいれば当然女性は勝てない。結果的に本物の女性はどんどん自称女性のせいで迫害され消されていく…というディストピアの出現、そう、笙野さんの小説そのままの世界が現実になろうとしている。ただ、これをおおっぴらに批判すると、それをヘイトスピーチと言われてしまうそうです(怖)
とりあえずこの本が無事出版されて良かった。とはいえ、書く場所を失った作家はどんどん窮乏。エッセイの半分は、コロナと、作品発表の場がなく質屋に貴金属を売りに行く窮乏生活のエッセイとなってます。個人的には、売れるほど高価な貴金属をたくさんお持ちなあたり(ぽんとロレックスをくれるおばさんいるだけで凄い)もともと出自が裕福でちょっと羨ましいと思ってしまった。
※収録
前書き 発禁作家になった理由/女性文学は発禁文学なのか/九月の白い薔薇 ヘイトカウンター/返信を、待っていた/引きこもりてコロナ書く/難病貧乏裁判糾弾/プラチナを売る/質屋七回ワクチン二回/古酒老猫古時計老婆/ハイパーカレンダー1984 -
本当にこの作家には災難ばかり降り掛かる。でもそれが作家というものかも知れない。幸運な者は作家にはなれないのだろう。
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この著者の本を初めて手にしたからか、ちょっと理解しづらい。著者のことを検索したら『闘う作家』と。なるほど。
難しいところは置いといて、確かに男性器の付いた女性自認のヒトと同じ女湯に入れるかと言われれば、そりゃ無理だわ。と思う。机上だけで考えるのでは、アカン。具体例を出して考えればわかることなのかも。LGBTQの人たちの人権もストレートの人の人権も、同じように護れる方法が大事なんだよな。 -
発禁小説集とは…興味本位で手に取った。戦闘モードで『女消し』等について熱く語られていたが、難しいことは流し読み。愛猫と日々の生活をギリギリで過ごす様子は共感頻りなり。次回作が読みたい。
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強烈な個性を持った作家が今という時代に向き合い生きた記録として読むと面白く、読むべき小説と言えるだろう。
「質屋七回、ワクチン二回」という作品は、困窮した作者の苦しい生活を書いているのだけど、辛さだけではなくて、軽やかさとかおかしみとかのある、人間の営みが描かれている。
質屋に行くときに気を付けるべきポイント、みたいなものも勉強できる。
私は売れるようなものを持っていないので、役に立つことはないだろうが…
<書評>笙野頼子発禁小説集:北海道新聞 どうしん電子版
http...
<書評>笙野頼子発禁小説集:北海道新聞 どうしん電子版
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/701434?rct=s_books