人を助けるとはどういうことか――本当の「協力関係」をつくる7つの原則
- 英治出版 (2009年8月7日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
- / ISBN・EAN: 9784862760609
作品紹介・あらすじ
どうしたらあの人の役に立てるだろう?あたりまえすぎて見過ごされていた「協力関係」の原理・原則を読み解く。
感想・レビュー・書評
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支援者の役割には3種類あり、支援者は、その時々の状況に応じて、それらの役割を選択しないといけない。
1) 専門家の役割; 必要に応じて専門的な情報やスキルを提供する
2) 医師の役割; 患者の状態を診断し、診断結果に応じた処方箋をつくる
3) プロセス・コンサルタント; プロセスに着目し、プロセスに働きかけることにより、クライアントが問題を解決していくことを支援する
専門家の役割がうまく機能するのは、クライアントの側が、どのような支援が必要なのかが分かっている場合。
医師の役割がうまくいくのは、クライアント、すなわち患者が診断結果に信頼を置いている場合。
そのような場合ではなく、例えば、クライアントが、何かがうまくいっていないと感じているが、それが何か分からないし、どのように問題をクリアにしていけば良いのかも分からないようなケースに、プロセス・コンサルタントが活躍する余地がある。
少し分かりにくいが、プロセス・コンサルタントというものについての私の理解は以下の通り。
■組織や職場で起きていることのうち、見えるのは氷山の一角であり、それを起こしているもの、起きていることの原因になっていることが水面下の見えない部分にある
■水面下にも多くのものがある。例えば、構成員一人一人の考え方や、構成員の間の関係性や、無意識のうちに従っている組織の規範や組織文化。これらを総称してプロセスと呼ぶ
■水面上に出ているものは、水面下にあるものの結果であり、水面上にあるものにいくら働きかけても問題の解決にはならない。問題は水面下に、すなわち、プロセスの中にあるので、プロセスに働きかけない限り問題の解決には至らない
■逆に言えば、水面下に働きかける人をプロセス・コンサルタントと呼ぶ
これでも分かりにくいけれども、今のところの理解はこういったところ詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
1.自分の行っていることがしっかりと人の役に立っているのかを科学的視点から分析したくなったので読みました。
2.本書は組織心理学の祖として活躍している著者が「人を助けること」についてどのような考えなのかを述べています。
人を助ける=支援というキーワードを紐解きながら、日常でのシーンを事例にして役に立っているケースと経っていないケースを比較しています。
役に立っている状態には必ず7つの原則が守られており、それを保つために4つの問いかけの順番を守っています。本書ではその原理原則とともになぜ役に立たない支援が出てしまうのかも述べています。
3.日常を振り返ると「問いかけの数」が少ないことに気づきました。ほんの少しの質問で分かった気になる。事前調査であらかた理解した気になるということが往々にしてありました。調べることは当たり前ですが、当事者に直接話を聞いて検証するという行為をしっかり踏んでいかないといけないのだと感じました。
大切なのは自分が何を話すかではなく「何を問うか」だと思いました。 -
なぜ人は人を助けたくなるのか、という心理的要因を探ってみたいと思い手にとった。
しかし、人が人を助けることは所与のこととして前提視されており、その原理についてはあまり触れられていなかった印象。
また、本書では「支援」を3つのパターンに類型化しているが、それぞれの境界が曖昧で、支援の中身がやや強引に定義されているとも感じた。
とはいえ、支援者による支援の形態として、被支援者が求めている「答え」をそのまま提供するのではなく、被支援者が自ら答えを導き出して進んでいくことを後押しする「プロセス・コンサルテーション」という考え方には深く共感した。 -
人を助ける・支援するというのは、兎角、 上下の関係に陥ってしまいやすい。
支援する対象を理解するという手順を欠いた場合、専門性や良心さらには人間関係そ のものを無碍にしてしまう可能性があると いうことがよく分かる一冊。
そうならないために、正しく寄り添うため の質問「どうしてほしいですか?」が素直 に聞けることの重要性を理解できた。 -
人を助ける、という行為は介入が伴うため、「助ける」行為を行う手前の意思表示の時点で影響を与えてしまう。
それが能動的に「教える」「助ける」姿勢になるとなおさらだ。
支援を受ける側も与える側も準備が必要であり、またクライアント(支援される側)によりそった「プロセスコンサルテーション」が有効な場面が少なからずある。
受け手がどう感じるか、というのは大切にしているつもりではいても、油断すると一方的な押し付けになりうる。この点は気をつけなければ、と感じた。 -
訳がすこし読みづらく感じたが、とても面白かった。
「支援」というものを、人を支援する側だけでなく、人に支援される側からも分析してあった。
今まで自分が受けた支援、した支援を思い返し、もっと違うやり方もあったんだなぁ、もっとこうしたらお互い気持ちいい関係のままだったのかなぁと学ぶことがとても大きかった
絶対に何度も読み返したい本。 -
印象に残った言葉
「われわれは会話をしていて、何を言うべきか、どう言うべきか、あるいはいつ言うべきか、という点で常に間違いを犯している。そうした過ちに失望するのではなく、そのおかげで学ぶ機会が得られたし、だから歓迎すべきだと認識しなければならない。」
自分の発言の過ちに後悔したり、落ち込んだりしても仕方がない。
問題なのはそれを次にどう生かすかだと思った。 -
Session7「プロセス・コンサルタントとしての人材開発部門のあり方」課題図書
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面白かった。
医者やソーシャルワーカーなど正にヘルプする人向けだが、会社のスタッフ部門がライン部門に対するアプローチや人を支援する場面全般に適用できる。 -
「問いかける技術ー確かな人間関係と優れた組織をつくる」からの流れ、本著者の著作は2冊目だ。
なるほど、著者は「プロセス・コンサルテーション」を開発・実践してきた組織心理学の第一人者だ。
クライアントは一段低い位置(ワン・ダウン)にいて、支援者は一段高い位置(ワン・アップ)にいる。この力の不均衡がクライアントと支援者の双方の関係をうまくいかなくする。支援者は常にワン・ダウンすることを意識し、クラアントと対等な立場でクライアントに依存、信頼してもいいのだという安心感を与えることが望まれると。
そこで意識するといいのが「控えめな問いかけ」、クライアントに主導権をとってもらいながら能動的に解決する立場を取り戻し、自信を持たせ、そして支援者と協力できる状態にすることだ。クライアントに力の不均衡を感じさせない関係がさらに良い支援につながるということだ。