- Amazon.co.jp ・本 (144ページ)
- / ISBN・EAN: 9784864104081
感想・レビュー・書評
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とても愉快でハッピーな気分にさせてくれる本。
若者が大好きなヴォネガットが、いろいろな大学の卒業式でスピーチした講演録です。あいかわらず切れ味するどく、優しくてユーモアたっぷり、とにかくカッコいい! ときどきジョークと本気の区別がつかないほどシニカルでたじろぐこともありますが。
「芸術家の社会的機能は、人々が以前にも増して人生を好きになるようにすることだ」
いいですね~これはジョークではない、本気、間違いなく本気ですな♪
「角の郵便ポストに手紙を投函するのは、青く塗られたでかいカエルに餌づけしているみたいな気分になれる」
じつにいいですね~これもたぶん本気でしょう(笑)。
「さて、おじのアレックスは今天国にいる。彼が人類について発見した不快な点の一つは、自分が幸せであることに気づかないことだ。彼自身はというと、幸せなときにそれに気づくことができるようにと全力を尽くしていた。
夏の日、わたしたちは林檎の樹の木陰でレモネードを飲んでいた。おじのアレックスは会話を中断してこう訊いた。
「これで駄目ならどうしろって?」――If this isn’t nice, what is ?」
最高です!! 私にもこんなキュートなおじがいたらいいのに。
至福感や多幸感というと、なんだか小難しい哲学風の言葉になってしまうのですが、幸せの種といえば、きっと人それぞれいっぱいあると思います。ほんとうに日常のささやかなことだったりするのですよね。
やわらかい新芽がぷにぷにして色鮮やかだったり、ピンクと白のマーブル模様の椿がチョコレートのように美味しそうだったり、金木犀のうっとりするような香りがそこらじゅうに漂って肺の中が金木犀だらけになったり、飛行機から見下ろした雲が綿菓子のようでわくわくしたり、その上をアリのようにのろのろ歩く飛行機の影がちっぽけで健気だったり(そのアリのなかに私が乗っている)、ジムで身体を鍛えたあとの水!
If this isn’t nice, what is ?
……さて冗長な話はさておき、そんな幸せの種をみつける方法を教えてくれる本です(ノウハウ本でもハウツー本でもありません)。とても読みやすいのもいい、ヴォネガットの小気味よいジョークもいい、本気モードで胸に迫る話をしてくれるのはもっといい、そして思わず泣きそうになるのも、きっとささやかな幸せの種。
そんな元気のでる本です。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ヴォネガットの講演集です。生で聞きたかった。
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冒頭から泣いた…。
カート・ヴォネガットが大学の卒業生に贈ったスピーチ集。
辛辣さもあるけれど、発しているのはとても温かな心。
ユーモラスでシニカルで、たまらなく魅力的。
手元に置いておきたい一冊。 -
カート・ヴォネガットの、卒業式での祝辞等の講演集。
円城塔の翻訳が意外にはまっている+思った以上にあたたかみのある祝辞が多くて驚く。
「これで駄目なら」はいつか言いたいセリフだ。 -
カートヴォネガットのタイタンの妖女が好きで、彼が学生にどんな言葉を語ったのか知りたくて読みました。彼らしい、皮肉のこもった例えやジョーク。でも、愛と親しみと知性が彼にはある。
いくつかの演説で繰り返し投げかけるのは、自分の世界を広げて、未来の可能性を感じ、生きる指針を与えてくれた先生はいるか(個人的意訳です)?ということ。手を上げさせて、その先生の名前と、何を教わったかを伝えるように話す。それがいかに貴重な体験なのかを教えてくれる。
それから叔父さんの話で、何でもない日に木陰でレモネードを飲みながら、これでダメならどうしろと?と言う。それは、何気ない幸せを感じ取ることの大切さを表している。普通の日々に感謝する。ガンジーの映画を見た後だから、余計にこの言葉が刺さる。そう、特別なことがなくたって、普通の毎日があることが幸せなんだ。
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繰り返しの内容が多いのは気にはなったけどどれも大切にしたくなる金言ばかり。
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#英語 タイトルは If This Isn't Nice, What Is?: Advice to the Young, The graduation speeches 日本語訳者は円城塔。
「これで駄目なら、どうしろって?」はヴォネガットの叔父のエピソードから。 なんでもない一日の愛おしさを知るものこそ、豊かな人なのだと思った。 -
展示テーマ:卒業
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ヴォネガットの大学卒業生にむけた講演集。
そこまで面白い内容ではありませんが、有名作家が卒業式に来て、これからの人生への励ましの言葉を述べてくれたら、やっぱり印象深いでしょうね。そんな場面でシニカルなことばかり言っておられないので、ヴォネガットの言葉も、基本、前向きで暖かいです。 -
アメリカの文化なりキリスト教についての知識なりがないため、ニュアンスがわからないところもありつつ、糸井重里氏の「目と心にしみる」と解説の円城塔氏の「声」の概念は読んで腑に落ちる感じがした。
読む人によって心に残るところは違うだろうが、自分は「私も生まれたばかりだ」という考え方、「これで駄目なら、どうしろって」と物事がうまくいっている時に声に出してみること、の2つ。
後者は英語のニュアンスを完全には理解できてないが、日本語でこれはこういうことだと書くのも違う気がする。
ヴォネガットの「声」によってなんとなくわかる気がしていればいいのだと思う。