コロナ禍で障害のある子をもつ親たちが体験していること

  • 生活書院
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784865001433

作品紹介・あらすじ

炙りだされているのは、それ以前から私たちの社会にあった矛盾や分断。

コロナ禍で障害のある子をもつ親たちは何を体験し、何を思い、何を感じてきたのか……。
「こんな時だから仕方がない」と置き去りにされないために――。
ささやかな抗いとして、7人の親たちが語る。

感想・レビュー・書評

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  • まず、レビューが一つもないという事実が、イケナイ。

    無関心が見てとれ、まさに本で語られている、障がい者が後回しにされている証拠に思える。

    コロナ禍で知的のある人の死亡率は通常の4倍。
    優生思想が具現化している。

    無関心が一番の罪。

    ゆとりのなさが世界の罪。

    余裕など皆ないのでしょうが、機会があれば本を手に取り、知らなかった世界にたじろいで下さい。

  •  どれだけ想像したとて、想像以上の事実があるのだと、かみしめながら読んだ。

     読み進めることはとても苦しかったけれど、どこかに私の想いと重なるなにかしらが提示されないだろうかとなんとか最後まで読み終えたところだ。

     
    「命を守るために」と心が殺されていく…(p198)

    コロナ感染と感染対策の真偽うんぬんではなく、「QOL]と「人権」のキーワードに、やっと、共通の社会の課題の登場を確認した。

     
     医療に依存せざるを得ない状況におかれる家族は、医療側とその行動を決定する行政の決定従う以外の選択肢が無いことをどうすればよいのか、その打開策はあるのか、それを実行している家庭はあるのか、との思いがかけめぐるなか、次の一文に、「同じ想い」を感じ取ることができた。

    ========
    (「QOL]と「人権」)その両者の間でバランスを模索する努力を放棄するまいと、これまで医療とケアの現場で多くの人が踏ん張り続け、実践を積み重ねてきたはずだったのに…。
    ========

     多くの社会課題が、個別の不遇や、個別の困難に矮小化され、わたしたちはつながりを見出すことができず、分断されてしまう。
     個々の支援は、声を大にあげられる人のものが優先され、ちいさな声は隅においやられてしまいがちだ。
     支援を得るために、「支援が必要な根拠」を示すことに必死で、その固有性をアイデンティティに替えて、権利を主張し、獲得するに必死なおおくの人々が、社会のゆとりのなさに比例して増加している。

     それぞれに「わたしたちのほうがもっと苦しい!」とばかりにさけびはじめているようだ。

     同じ境遇の仲間探しに奔走し、その不遇を集め、支援を求めるさまをわたしは今現在刻々と目にしつつあるのだけれど、その真の孤独を、本書は癒してくれた。
    (とはいえ、その困難がおおきいこともまた示してくれたのだが。)

     人権という意識が、これほど育まれない国、日本は、それが意図的なのではないかとすら疑うほどだ。

     でも、確かにここに、「生きる権利」をあがきながら、もがきながら、つかもうとする姿がある。


    ========
     この本の書き手の多くが、東京や大阪といった大都市の住人でなく、地方に暮らす人々である点は重要だ。

     その一方で日本語以外の言語を母語にする書き手はいない。シングルで子育てをしている人もいない。文章を書く余裕すらなかった人がいることに、想像力を働かせる必要がある。

     さらにいえば、この本の書き手、語り手に重度の知的障害のある人、本人はいない。
    ========

     知らないでいることを自覚しながら、知ろうとすることが「寄り添う」姿ではないかと感じ入る。

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著者プロフィール

児玉真美(こだま・まみ):1956年生まれ。一般社団法人日本ケアラー連盟代表理事。京都大学文学部卒。カンザス大学教育学部でマスター取得。英語教員を経て著述家。最近の著書に、『増補新版 コロナ禍で障害のある子をもつ親たちが体験していること』(編著)、『殺す親 殺させられる親――重い障害のある人の親の立場で考える尊厳死・意思決定・地域移行』(以上、生活書院)、 『〈反延命〉主義の時代――安楽死・透析中止・トリアージ』(共著、現代書館) 、『見捨てられる〈いのち〉を考える――京都ALS嘱託殺人と人工呼吸器トリアージから』(共著、晶文社) 、 『私たちはふつうに老いることができない――高齢化する障害者家族』 『死の自己決定権のゆくえ――尊厳死・「無益な治療」論・臓器移植』 (以上、大月書店)など多数。

「2023年 『安楽死が合法の国で起こっていること』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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