無我の見方―「私」から自由になる生き方(サンガ新書) (サンガ新書 64)

  • サンガ
4.08
  • (5)
  • (4)
  • (2)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 60
感想 : 4
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (217ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784865640106

作品紹介・あらすじ

「本当の自分」を探し続け、「確固とした自我」を確立しようとする私たち。しかし、お釈迦様は、「自我はない」「一切は無我である」と喝破されました。もともと生命には「自分がいる」という実感があるものですが、だからと言って、「絶対に変わらない自分」があるわけではありません。様々な因縁によって瞬間瞬間に変化する「自分という流れ」があるだけです。この無我の真理を発見することで、私たちは世界の役に立つ人間に成長し、そして、執着をなくし、解脱という自由に近づくことができるのです。-現代人が「無我」を深く理解し、苦しみから抜け出すための必携の書!

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 後半のQ&Aで仏教の核心に迫っている。自我はこの体に付着しているもので、この体とは別に永遠に変化しながら転生を繰り返す自分(縁起)がいる。絶えず変化するものだから自分と言えるのか怪しいが、変化している主体は変わらない。
    法華経の鳩摩羅什訳の十如是と相通じるものがあると思う。法華経は釈迦の教えではないと長老は言われるが。

  • スマナサーラ長老の本はいつも気づかされるところが多く、とても勉強になっています。
    この本は、彼の既刊本以上に現実世界との対比が多く、立ち止まって考えさせられる部分がいろいろとありました。

    私たちが(こんな感じ)と漠然ととらえている仏教の概念と比べて、実際はもっとそぎ落とされたギリギリの感覚にあるものだとわかります。

    現代社会において、いとも簡単に、そして巧妙に、宗教は政治と結びつけられ、人々は動かされていきます。

    イラク戦争で、アメリカがイラクを攻撃すると決めた時に、大統領は「それは神の意志である」と発表しました。
    そのことで、殺戮への大義名分を生み出したということです。

    また、アメリカの大統領選挙では、候補者がキリスト教の何派であるかということをはっきりしないと、国民に信頼されないのだそう。
    同性愛排斥運動は、倫理的な面よりも政治的配慮の方を色濃く感じます。
    民主主義国家であっても、人々は宗教に支配・管理されているという事実を実感している人はあまりいません。

    これは「神」の存在を明確にしてるキリスト教などの一神教国家に、特に顕著な問題のようですが、仏教でもまた、神と同等の存在としてブッダに頼ろうとする信者たちが、仏教の本質をゆがめているとしています。

    無力な存在からすると、力のある存在に頼れば救われると思いがちですが、それは大きな勘違いで、誰かに頼ることに救いはないとのこと。
    「自我」があるからこそ、他に頼りたいという気持ちが生まれ、その弱い部分から人は宗教家に簡単に支配されやすいのだそう。

    自我や魂、神の存在を信じている限り、宗教の呪縛からは逃れられないのだと、師は説きます。
    宗教家が宗教を否定するような話をしているため、かなり混乱しながら読み進めますが、「自我という概念を捨て、無我を発見することが、『救い』となる」という結論に至りました。
    これこそが初期仏教のテーマであり、揺るがない観念を手に入れて、無心の境地に達することができる道だそうです。

    最終的なゴールには、修行を積まないと簡単には至れない大変な道のりだと思いますが、氏の言わんとすることは、「現状の宗教を語るなにかに惑わされ、盲信するな」ということ。
    思えば、人間の歴史は宗教を理由に、多くの血が流れてきました。
    それは、本当の宗教の観念とは全く違うものであると、師は説きます。
    その間違った流れを直すには、宗教を名乗るものに翻弄されないこと。

    宗教が発生したばかりの、理想に満ちた無垢な考えに立ち戻ることの必要性が語られていました。

    世捨て人として修行に励む人ではなく、社会の中に生きる人にはかなりハードルが高い話ですが、行き方や行動すべてを変えろというのではなく、考え方をもっと自由に、とらわれないようにするべきだという内容です。

    宗教に救いを求めて熱心に活動しているのに、救いが得られずに絶望している人も多いことでしょう。
    ブッダは神の存在を説かない代わりに、自分の精神を鍛錬するこtで、神のような頼る存在を必要としない、解き放たれた精神を持つように勧めているのだと、この本を読んで感じました。

    新書なので読みやすいですが、なかなか考えさせられる一冊です。

  • 「ブッダの教え 一日一話」が面白かったので、引き続きスマナサーラさんの本を読んでみました。おぼろげながら諸行無常、諸法無我の概念が分かった気がします。

    本書の中でも妄想を止めること、執着を捨てること、の重要性が書かれていましたが、それを実現するのが難しい・・・といったところでしょうか。その他、気になったキーワードを以下に。

    ・大事なのは本人の意欲、他人に何かをやらせることはできない
    ・自分というものはなくて行為だけがある
    ・品質とはコピーを作る能力のこと
    ・変わらない我・魂・自分なんてものはない
    ・妄想を止めて自分という流れを汚さないこと
    ・救いとは誰かに頼ることではなく、自我という妄想を捨てること
    ・とらわれ執着することで得るのは悩みと苦しみのみ
    ・今の心が次の心を作る

全4件中 1 - 4件を表示

著者プロフィール

アルボムッレ・スマナサーラ
Alubomulle Sumanasara

テーラワーダ仏教(上座仏教)長老。1945年4月、スリランカ生まれ。13歳で出家得度。国立ケラニヤ大学で仏教哲学の教鞭をとる。1980年に来日。駒澤大学大学院博士課程を経て、現在は(宗)日本テーラワーダ仏教協会で初期仏教の伝道と瞑想指導に従事している。朝日カルチャーセンター(東京)講師を務めるほか、NHK Eテレ「こころの時代」「スイッチインタビュー」などにも出演。著書に『サンユッタニカーヤ 女神との対話 第一巻』『スッタニパータ「犀の経典」を読む』『ダンマパダ法話全集 第八巻』『ヴィパッサナー瞑想 図解実践─自分を変える気づきの瞑想法【決定版】』(以上、サンガ新社)、『怒らないこと』(だいわ文庫)、『心は病気』(KAWADE夢新書)、『ブッダが教える心の仕組み』(誠文堂新光社)、『ブッダの教え一日一話』(PHP文庫)、『70歳から楽になる』(角川新書)、『Freedom from Anger』(米国WisdomPublications)など多数。

「2023年 『無常の見方』 で使われていた紹介文から引用しています。」

アルボムッレ・スマナサーラの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×