『医心方』事始 〔日本最古の医学全書〕

著者 :
  • 藤原書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784865781120

作品紹介・あらすじ

身体と心を総合的に見た、生の手引き!
丹波康頼が有史以来9世紀末までの世界中の医学文献を集め編纂した『医心方』(全30巻)。人間の全身のあらゆる傷病の治療法、健康法、薬学、そして呪術、占い、美容などにもわたる厖大な“いのちの智恵”に満ちた浩瀚な書でありながら歴史の中に埋もれてきた本書の文字のからくりを解き明かし、全訳精解を成し遂げた著者による『医心方』入門。

 『医心方』事始――序にかえて

第1章 医学概論篇――巻一A
第2章 薬名考――巻一B
第3章 鍼灸篇Ⅰ 孔穴主治――巻二A
第4章 鍼灸篇Ⅱ 施療――巻二B
第5章 風病篇――巻三
第6章 美容篇――巻四
第7章 耳鼻咽喉眼歯篇――巻五
第8章 五臓六腑気脈骨皮篇――巻六
第9章 性病・諸痔・寄生虫篇――巻七
第10章 脚病篇――巻八
第11章 咳嗽篇――巻九
第12章 積聚・疝瘕・水腫篇――巻十
第13章 痢病篇――巻十一
第14章 泌尿器科篇――巻十二
第15章 虚労篇――巻十三
第16章 蘇生・傷寒篇――巻十四
第17章 癰疽篇 悪性腫瘍・壊疽――巻十五
第18章 腫瘤篇――巻十六
第19章 皮膚病篇――巻十七
第20章 外傷篇――巻十八
第21章 服石篇Ⅰ――巻十九
第22章 服石篇Ⅱ 薬害治療――巻二十
第23章 婦人諸病篇――巻二十一
第24章 胎教出産篇――巻二十二
第25章 産科治療・儀礼篇――巻二十三
第26章 占相篇――巻二十四
第27章 小児篇Ⅰ――巻二十五A
第28章 小児篇Ⅱ――巻二十五B
第29章 仙道篇――巻二十六
第30章 養生篇――巻二十七
第31章 房内篇――巻二十八
第32章 中毒篇――巻二十九
第33章 食養篇――巻三十

 あとがき / 引用文献解説索引 / 人名索引 

感想・レビュー・書評

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  • ものすごいヴォリュームの『医心方』のビギナー向け紹介本的なもの。興味深い箇所が抜粋されていて、わかりやすい。索引というか、ガイドブック的に使える。実際に必要な章はオリジナルを参照する必要はあるけれども、さっくり全貌を把握するにはとても良いと思った。
    『医心方』は、宮廷医・丹羽康頼(912-995)が984年に朝廷に献上した、現存する我が国最古の医学全書。有史以来九世紀までの漢訳された医書を集めて、選集・編纂したもの。出典は医学、仙書、本草書、養生書、鍼灸、陰陽道、道教、仏教、易経、天文、占相、史書、哲学、文学、波羅門の秘宝等、二百数十文献に及び、中国書だけでなく、中国語訳されたインドの文献も多い。薬剤の原料は、朝鮮半島、日本、中国、インド、スマトラ島、オーストラリア間近の熱帯の島嶼を含むアジア全域、及ユーラシア、アフリカの動植物、鉱物などなど

  •  医心方は有史以来から九世紀まで、人類が命についてどのように考え、死の恐怖とどのように戦ってきたか、その手掛かりかつ集大成としての書物である、と述べる医心方入門書。その範囲は膨大で、陰陽や天文も含まれるという。
     本著の特徴としては、やっぱり医心方を実際に参照して、自分の身体で試しているところだろう。で、実際に治しているという。本当かどうかわからないけれども、著者は医心方と一心同体化している。その執着が興味深い。
     本著の中で数度出てくるのだが、「いったいどうやってこれが怪我に効くとかがわかったのだろうか」という疑問があげられている。
     例えば、かまどの土が怪我に効くという記述はあるが、果たして、どうやったらそんな結論に行きつくのか。「よく見つけたな~」といったところだ。
     病気を治すための、何千年何万年という人類の苦しみがなせる技だろう。もしくは修験者のように、自ら過酷な状況において、いろんな薬を試すことによって発見していったのか。国の指示により各地を聞き取り取材して、それを総合して、かまどの土が効くという結論にいたったか。かまどの土がケガを治すのに有効だと分かるまでの、その「薬効」を見つけ出すまでの膨大な時間を、著者は身体で感じ取っているようなところがある。
     この著者、槇佐知子であるが、正直言って医心方よりも興味深い人物である。小説を書いたりもしながら、大学は出ておらず、独学で翻訳に取り組む。いったいこの情熱はどこから来たのだろうか。この執着とはいったいなんなのだろうか。よほどの宿命的なものがなければ取り組まないだろう。専門的な師匠について、何十年と研究すればいいのに、いきなり立ち向かったような感じがする。
     取り組んだきっかけとして、たとえば、親が病気で死んだとか…? いや、それは動機にならない。親の本棚に大量の古代医学の本があったからか。それもわからない。巨大な山脈に挑んだ彼女の正体はいったい何なのだろうか。
     あまりに唐突に挑戦された前人未到。
     これが、この本を読んで思った感想の中心である。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/678386

  • 配置場所:摂枚普通図書
    請求記号:490.9||M
    資料ID:51700231

  • ・著者は日本古典文学に造詣が深いらしいが、中国古典学の基礎知識がない。反切を知らない。
    ⅱ丹波康頼は、従五位下行針博士丹波介宿禰康頼。「行針博士」とは『黄帝内経』の講義と鍼灸の実技を典薬寮の針生に教授するものであり、……。
    ・「行針博士」などという官職名はない。あるのは「針博士」である。針博士は従七位下である。従五位下である康頼が、下位の役職を兼務していることを示すのが「行」という文字である。御成敗式目に「正五位上行左大史兼算博士……」などとある「行」字と同じ用法。
    ⅶ本文の文字は異字、動字、省画、増画文字、音通文字ほか、さまざまな絡(から)繰りが施されているうえに、文法も通常と異なり、文字の意味も現代とは違うものがある。
    ・これを著者は「難字化された漢字」ととらえているようだが、同時代的にみれば、敦煌文献に書かれている文字との共通性が十分にうかがえるように思える。『医心方』を筆写したひとは、底本を忠実に筆写したのではなかろうか。
    ⅹ『医心方』には「〓【口+攵】(こう)咀(しょ)」という医学用語がある。文字通りに解釈すれば「噛み砕く意」だが、巻九第四章の傍注は「含味也」である。薬剤を口に含んで味わうのは論外だが、その頭注では右に「麁擣之義」、左に「〓【口+攵】咀者皆細切」とある。「麁(あら)く」も「細かに」も主観である。/それが別の巻では「大豆如(バカリ)に擣(つ)クコト也」とあり、大豆くらいの大きさに砕くか刻むこととなる。ここで初めて大きさが明らかになるのだ。
    ・「こうしょ」の「こう」は、「㕮(ふ)」の異体字である。「こうしょ」なる医学用語はウェブで調べても見つからない。「㕮咀」なら、立派な医学用語だが。「含味也」は「咀」についての『説文解字』の説解である。傍注を書いた人が字書を引いて書き付けたことがわかる。『新修本草』巻一に、「凡湯酒膏藥、舊方皆云㕮咀者、謂秤畢搗之如大豆者……今皆細切之」とある。ということで「全巻を照らし合わせ」なくとも「解読」できる(ところもある)のだ。

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著者プロフィール

作家・古典医学研究科。1933年静岡県生まれ。93年より『医心方全訳精解』を筑摩書房より刊行開始。2013年30巻33冊完結。関科学技術振興財団の第10回パピルス賞受賞。 著書・『医心方にみる美容』(ポーラ文化研究所)『今昔物語と医術と呪術』(築地書館)、『日本昔話と古代医術』(東京書籍)、『くすり歳時記』『食べものは医薬』『自然に医力あり』(共に筑摩書房)、『病から古代を解く』(新泉社)、『春のわかれ』『シャエの女王』(偕成社)。

「2014年 『医心方の世界 (新装版)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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