- Amazon.co.jp ・本 (183ページ)
- / ISBN・EAN: 9784874984437
感想・レビュー・書評
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「坂の上の雲」は映像化すると戦争の美化をメッセージとして伝えかねないから、と司馬遼太郎が映像化を拒み続けてきた。氏の没後数年たってそれが映像化されてしまった。それがなぜなのかを知りたくて読んだ本。なのだが、内容的には思想的に戦争反対を唱えているだけのようにも見える。ちょっと批評の視点が違うんじゃないの?。「坂の上の雲」は「小説」なのだから。
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2009年11月から始まった、NHKの「坂の上の雲」の内容に対し、異議を唱える内容。
執筆陣は、中塚明(奈良女子大名誉教授)、安川寿之輔(名古屋大名誉教授)、醍醐聰(元東大大学院教授)とそうそうたるメンバーだが、内容はタイトルとは異なり忠実にNHKの「坂の上の雲」を分析したものではなく(辛うじて最終章だけは司馬遼太郎の遺志に背いてまでドラマを放映したNHKの責任を分析的に記しているが)、主に日清戦争に関する持論を展開するものであり、また、その主張も独善的な部分が多く、残念なところが多い。
本書の基本的なスタンスは、司馬遼太郎の著書「坂の上の雲」で描かれた明治期の日本を無批判に礼賛する姿勢を正すという方向性で一貫している。
今日の日本の閉塞状況から、過去の日本が輝いていた時代を振り返って日本人としての誇りを取り戻そうという意識が、我々日本人にも潜在的にあるのであろうし、だからこそ、NHKドラマ「坂農園雲」もこれだけ注目を集めることとなったのだろう。
ただし、私も、「坂の上の雲」に描かれた日本、すなわち帝国主義列強に肩を並べんとアジアに打って出た日本を無批判に礼賛する気持ちには全くなれない。
その点で、本書の執筆陣の意見に賛成なのだが、内容がやや独善的で、また、タイトルと中味がずれている点であまり高い評価はできなかった。